『ハイキュー‼』×SVリーグ コラボ連載(8)
ウルフドッグス名古屋 山崎彰都
(連載7:デンソー川畑遥奈は『ハイキュー‼』の名言そのままに「楽しむ為」に強さを求め続けた>>)
一見、体温が低そうで捉えどころがない。いや、捉えられたくないのか。
山崎彰都は、パリ五輪前の日本B代表に選ばれるなど、SVリーグで有数のアウトサイドヒッターである。2022-23シーズンはウルフドッグス名古屋の優勝をけん引。実力者だが、涼やかな視線で女性人気も高い。
物心がついた時には、バレーボールが傍らにあったという。8歳上の兄、4歳上の姉がバレーをしていた。彼自身、よく試合を観に行った。小学1年でバレー少年団に入るのは"既定路線"だった。
ただ、週4回の練習で、練習1回につき1回は泣いていたという。監督に怒られるのが心の底から嫌だった。
「正直、小、中、高校の途中まではバレーを楽しいと思っていなかったです」
山崎は言う。
「当時は親などに『やめる』と言っても、やめさせてくれる時代じゃなくて、『バレーで人として成長してほしい』という感じでした。
白か黒か、で片付けられない思いがあるのだろう。
「兄、姉がバレーをやる姿を見ていて......心のどこかで兄がスパイクを打つ姿に憧れがあったと思います。兄は自分よりもデカくて力強くて、『こうなりたい』って。でも、さっきも言いましたが『楽しい』という記憶はあまりないです」
彼はそう言って、くすぐったそうに笑う。簡単に「バレーが好き」とは言わない、その一途さと気難しさが彼の土台を形成しているのだ。
「逆に、小1の時の自分に聞いてみたいですね。『何が楽しくて、"やめたい"ってなんなかったの?』って(笑)。ちっちゃい頃は何を目標にやっていたのか。今は試合で勝って楽しいし、負けて得られるものも多いし、収穫はあるんですが......」
そこで、ひとつの質問を投げた。
――タイムマシンで過去に行き、小1の彰都くんに会えたら、なんと伝えますか?
「『もうちょっと、ちゃんとやれ』って言いたいです(笑)。
(それに対する小1の自分の答えは)どうですかね、バレーにそこまで興味がなかったので......。でも、日本代表でプレーすることになるって聞いたら、『すごい』って言うかな。『でも、テレビ出てないんでしょ?』とか言いそうですけど(笑)」
山崎が痺れた試合がある。一昨年に優勝した試合。いつも激闘になる宿敵・サントリーサンバーズ大阪との決勝戦は、異様な緊張感に包まれていた。そこで最後の1点を決め、会場全体が盛り上がった時は頭が真っ白になったという。
その情景こそ、バレーの引力の正体か。
最後に、これから見たい景色を聞いた。
「少なくとも、オリンピックではないですね。重圧がすごすぎて、出たいですけど、今はそれに耐えられる自信はない。代表にも選んでもらいましたが、入れるとは思っていなかったんで(苦笑)。下の子もいっぱい入ってくるでしょうし......。今の目標は近く、SVリーグでチームが勝てるプレーをしたいです」
彼らしい"噓がない"返答だ。
【山崎が語る『ハイキュー‼』の魅力】
――『ハイキュー‼』、作品の魅力とは?
「僕は月島(蛍)くんが好きです。高校までミドルブロッカーやっていたし、彼も"楽しい"と思いながらバレーをやっていたわけではなかったので、共感できました。それが、春高バレーの県予選の白鳥沢戦から、月島くんはバレーボールが好きになりだすじゃないですか? そんなに好きじゃなくても、好きになっちゃう。それがバレーなのかなって思います」
――共感や学んだことは?
「音駒と対戦したチームが、最初はエースがスパイクを決めるんですけど、だんだん上げて上げられて、次第に絶望的な表情になるんですよ。それを見た東峰さんが『吐きそう』って言うんですが、自分も同じポジションでわかるなって(苦笑)」
――印象に残った名言は?
「日向(翔陽)の『まだ負けてないよ』ですかね? 実際、そういう場面はあるんですよ。点差は開いていても、まだ追いつける、巻き返せるって。これまで何回も経験しています」
――好きなキャラクター、ベスト3は?
「1位は月島ですね。
――ベストゲームは?
「烏野vs白鳥沢です。月島がウシワカを止めたとき、鳥肌立ちました。止めた時よりも喜ぶシーンがいい。月島は兄がバレーをやっていて、試合を見に行ったけど出てなくて幻滅して、"バレーなんて"って感じだったんですが......。バレーは好きじゃないって感じを出しながら、なんだかんだやるタイプは好きですね(笑)」
(連載9:ウルフドッグス小山貴稀から見た『ハイキュー‼』は「教科書」 「雑草」がSVリーガーになるまでを振り返る>>)
【プロフィール】
山崎彰都(やまざき・あきと)
所属:ウルフドッグス名古屋
1997年10月16日生まれ、 宮城県出身。190cm・アウトサイドヒッター。兄、姉の影響で小学1年からバレーを始める。東北高、東海大学を経て、2020年にウルフドッグス名古屋に入団。2022-23シーズンの優勝に貢献した。