ペナントレースを独走し4年ぶりにパ・リーグを制したソフトバンクと、シーズン3位ながらクライマックスシリーズ(CS)で阪神、巨人を下したDeNAの日本シリーズがいよいよ始まる。2017年以来となる両チームの頂上決戦、はたして制するのはどっちのチームなのか。
【まったく隙がないソフトバンク】
── ソフトバンクとDeNAの日本シリーズが始まります。ソフトバンクはパ・リーグを独走で制し、日本ハムとのクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージでも3連勝と圧倒しました。一方のDeNAはセ・リーグ3位からCSで阪神、巨人に勝利して日本シリーズに駒を進めました。両チームのスタイルについて、どんな印象を持っていますか。
五十嵐 ソフトバンクはシーズン91勝を挙げ、2位に13.5ゲーム差をつけるなど、投打ともに圧倒的な力を見せつけました。打つほうでは山川穂高選手が加わり、より破壊力が増しました。それに周東佑京選手を筆頭に走れる選手も多く、上位下位関係なくどこからでも得点できるのが強みです。投手陣も有原航平、リバン・モイネロをはじめ枚数は揃っていますし、リリーフ陣も安定している。正直、隙がないチームです。
── DeNAはいかがですか?
五十嵐 もともと打線がウリのチームですが、巨人とのCSファイナルステージでは投手陣が頑張りました。主力に故障者が出るなか、代わりに出た選手がしっかり役割を果たし、チームとして粘り強い戦いができたと思います。
── ソフトバンクとしては、3位のDeNAが来たことで、勢いを警戒するというか、やりづらさみたいなものはあると思いますか?
五十嵐 ふつうはあると思うのですが、日本ハムとのCSファイナルステージを見て、ソフトバンクに限っては相手の勢いとか、そういうものは通用しないと感じました。
── DeNAの勢いを持ってしても、なかなか難しいと?
五十嵐 DeNAにしてみれば、とくに巨人との試合は打ち勝ったというよりは、守り勝った。それがどう出るか......でしょうね。阪神とのファーストステージはしっかり得点できていましたけど、巨人とのファイナルステージはなかなか点を奪えなかった。つまり、いつもの自分たちとは違う形で勝ったということです。
── 自分たちのスタイルで勝つことが大事だと?
五十嵐 そうですね。ただ一方で、投手陣にとってはすごく自信になったんじゃないかと思うんです。
── 肉離れで戦列を離れていた東克樹投手も復帰するかもしれません。
五十嵐 どこまで回復しているのがわかりませんが、彼が戻ってくるとチームにとってはすごく大きい。そこはプラスに捉えたいですよね。
【それぞれのキーマンは?】
── ソフトバンクとDeNAは2017年の日本シリーズでも対戦していて、その時は4勝1敗でホークスが勝利しました。今年の日本シリーズは何勝何敗でどちらが勝つと思いますか。
五十嵐 4勝1敗でソフトバンクが勝つと予想します。今シーズンのソフトバンクは投打とも戦力が充実していて、ほんとに強い。負けるイメージが湧きません。横浜スタジアムでの1、2戦で連勝すれば、4タテの可能性もある。CSでの戦いを見て、ソフトバンクの強さをあらためて感じました。
── そんなソフトバンクに、あえて不安があるとすればどこになりますか。
五十嵐 リリーフ、とくに抑えのロベルト・オスナのところですね。今季は一時期離脱するなど、状態は万全ではありません。24セーブを挙げていますが、ランナーを背負う場面も多く、いい時のピッチングにはほど遠い印象があります。DeNAとすれば、負けているにしてもできるだけ少ない点差で最終回を迎えたいところです。2点差くらいまでなら、DeNAの打線だと十分にチャンスはあります。逆にソフトバンクからすれば、できるだけ点差を開けたいところです。
── 最後にそれぞれのキーマンを挙げてください。
五十嵐 今回の日本シリーズは、4番のデキが勝負を分けると思います。お互い打線が活発なチームですから、点の取り合いになるんじゃないかと。そうなった時に、山川とタイラー・オースティンの4番がどんな働きをするかで、戦況は大きく変わる気がします。山川がCSのような働きをするとソフトバンクが一気に押し切るでしょうし、チャンスでオースティンが打てばDeNAに流れが来る。
五十嵐亮太(いがらし・りょうた)/1979年5月28日、北海道生まれ。千葉・敬愛学園から97年ドラフト2位でヤクルトに入団。プロ2年目の99年にリリーフとして頭角を現し、一軍に定着。04年はクローザーとして37セーブを挙げ、最優秀救援投手賞のタイトルを獲得。09年オフにメジャー挑戦を表明し、メッツと契約。12年はブルージェイズ、ヤンキースでプレーし、13年にソフトバンクと契約し日本球界復帰。18年オフに戦力外となるも、ヤクルトと契約。19年は45試合に登板したが、20年10月に現役引退を表明。現在は解説者として活躍している。