日本シリーズ第2戦は、ソフトバンクが6対3でDeNAを下し連勝を飾った。

 初回、ソフトバンクの4番・山川穂高がDeNA先発の大貫晋一のカーブを捉え、先制の2ラン。

3回にも牧原大成のタイムリー、甲斐拓也の犠牲フライで3点を挙げ、序盤から主導権を握った。

 DeNAは5回に森敬斗からの4連打で2点を挙げ、7回にも3連打で1点を返すが、反撃もここまで。DeNAにとっては、本拠地で連敗という苦しいスタートとなった。第2戦、勝敗の分けたポイントはどこにあったのか。解説者の西山秀二氏に聞いた。

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【山川穂高に痛恨の1球】

── シリーズ第2戦を前に、西山さんはどこに注目していましたか。

西山 ソフトバンクなら山川穂高選手、DeNAなら牧秀悟選手、宮﨑敏郎選手に安打が出るかどうか。3人とも第1戦では無安打で、2戦目も安打が出ないとなると、よく言われる"逆シリーズ男"になりかねない。キャッチャーとしては、とくに短期決戦においては打線の中心となる選手をできるだけ黙らせておきたいわけです。

── そんななか、山川選手が初回の第1打席で先制の2ラン本塁打を放ちました。あの場面、山川選手に対するDeNAバッテリーの攻めはどうでしたか。

西山 初球はツーシーム、2球目はスプリットで空振りを奪い、あっという間に追い込みました。当然、DeNAバッテリーとしてはバットに当てさせずに打ち取りたい。

見逃し三振、もしくは空振り三振を狙いにいったと思うのですが、3球目の外角ストレートがやや外れてボール。そして4球目にカーブを選択するのですが、肩口からストライクゾーンに入ってくる一番投げてはいけないボールなってしまいました。

── 完全な失投ですか?

西山 はい、失投です。キャッチャーとしては、ストライクからボールになる球を投げてきてほしかった。大貫投手もそこはわかっていたと思うのですが、勝負を焦ってしまったのかもしれないですね。カウントは1ボール2ストライクでしたから、まだバッテリー有利なカウントなわけです。見逃されても、次のボールで勝負できるわけですし、最悪、山川選手は歩かせてもいいというくらいの気持ちで、ボール球をいかに振らせるかが大事な場面でした。

── 山川選手は一本出たことで気持ちがラクになったのか、このあとの打席でもタイムリーを含む2安打を記録しました。

西山 そこが短期決戦の怖いところです。選手としては、ポテンヒットでもいいから早く1本出てほしい。1本出ることで平常心というか、焦ることなくいつもどおりの気持ちで打席に入ることができます。山川選手にしても、2戦目が始まるまでは「なんとか1本打ちたい」という気持ちになっていたと思うんです。

そのなかで、初回に先制本塁打という最高の結果が出た。もしあの打席で凡打、または四球になっていたら、違う結果になっていたかもしれません。

── DeNA先発の大貫投手のデキはどうでしたか?

西山 点を取られたくないという意識が強すぎたのか、際どいコースを狙いすぎていたように感じました。それでカウントを悪くして、ストライクゾーンで勝負しなければいけなくなる。もう少し大胆に攻めてもよかったと思うのですが、ソフトバンク打線のプレッシャーも相当あったのかもしれないですね。

── ソフトバンク先発のリバン・モイネロ投手は、7回途中3失点という内容でした。

西山 序盤はボールのキレもよかったですし、いつもどおりのピッチングができていたと思います。ただ、ピッチャー返しの打球が当たってからは、スピードが落ちたような気がしました。多少、その影響があったのかもしれないですね。とはいえ、先発としては十分な働きを見せてくれました。

【ソフトバンクはプラス材料ばかり】

── ソフトバンク打線ですが、5回以降はノーヒット。ひとりのランナーも出すことができませんでしたが、そのあたり次戦に影響が出ると思いますか。

西山 たしかにDeNAのリリーフ陣は、中川颯投手、坂本裕哉投手をはじめ、よく投げました。そこはプラスと捉えてもいいと思います。ソフトバンク打線は序盤にしっかり得点できたことで、気が緩んだわけじゃないでしょうが、単調になった部分はあったかもしれないですね。ただ、チームとしては常に主導権を握っていましたし、本拠地に戻ればまた気を引き締めて向かってくるでしょう。

── DeNAは本拠地で連敗という厳しいスタートになりましたが、ここからどんな戦いが必要になりますか。

西山 まずは先制点を取ることです。幸い、冒頭で挙げた牧選手、宮﨑選手も2戦目でヒットが出ましたし、いつもどおり打席に入れると思います。あとは2戦目を欠場したタイラー・オースティン選手が出場できるのかどうか。DH制があるので、そこに入るかもしれないですが、自打球での欠場ということでどこまで回復しているのかが気になります。あと、森選手、梶原昂希選手といった若手が堂々としたプレーぶりを見せています。劣勢を打破する時は、こうした若手の力が必要です。彼らの活躍に期待したいですね。

── 一方、ソフトバンクは最高の形でスタートしました。

西山 とにかく相手に流れを渡したくないですから、一気に決めにかかるでしょう。地元の大声援を受けてプレーできますし、DH制の戦いになれば近藤健介選手が使える。ソフトバンクにとっては、プラスしかありません。

── 4連勝も考えらますか?

西山 十分あると思います。山川選手が打ち、初戦で不安定な投球をしたロベルト・オスナ投手も2戦目はしっかり三者凡退で抑えた。正直、不安要素がないですよね。逆にDeNAは、ただでさえケガ人が多いなか、4番のオースティン選手まで出られないとなると......ちょっと厳しい。リリーフ陣はいいわけですから、まずは先制して、自分たちの戦いに持ち込みたいですよね。


西山秀二(にしやま・しゅうじ)/1967年7月7日、大阪府生まれ。上宮高から85年のドラフトで南海(現・ソフトバンク)から4位指名を受け入団。87年シーズン途中に広島にトレード。

93年に正捕手の座を掴み、94年、96年にベストナイン、ゴールデングラブ賞を受賞するなど、リーグを代表する捕手として活躍。2005年に巨人に移籍し、中学時代となる桑田真澄とバッテリーを組むも、同年限りで現役を引退。引退後は巨人、中日でコーチを歴任。現在は解説者として活躍している

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