日本シリーズ第4戦は、DeNAが5対0でソフトバンクを下し、対戦成績を2勝2敗のタイに持ち込んだ。DeNAは4番・タイラー・オースティンのホームランで先制すると、7回には宮崎敏郎のホームラン、桑原将志の二塁打などで4点を奪い勝負を決めた。

投げても先発のアンソニー・ケイが7回無失点の好投。第4戦のポイントはどこにあったのか? ヤクルト時代に3度の日本一を経験している秦真司氏に聞いた。

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【意表をつかれたホークス打線】

── DeNAが4対0で勝利し、対戦成績を2勝2敗のタイにしました。この試合の勝因を挙げるとすると、どこになりますか。

 まずは先発した左腕のケイ投手の好投に尽きます。巨人とのクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージでも好投していたのですが、レギュラーシーズンとはまったく違った投球内容で、それを引き出しているのが捕手の戸柱恭孝選手です。CSに入ってから戸柱選手がものすごく成長しているなと感じます。去年まではアウトコース中心の配球だったのですが、今年はうまくインコースを使うようになりました。この試合でも、左打者へのインコース攻めが有効でした。

── ソフトバンクはスタメンに左打者を6人並べました。左のケイ投手に対して、左打者を並べてきたということは、ソフトバンクのベンチがそれほど苦にならないだろうという判断をしたということでしょうか。

 シーズンの成績を見ると、右打者の被打率.252に対し、左打者は.261。そういうデータもあって、左打者でも苦にすることなく、攻略できるというのがあったと思うんです。

その左打者に対して、基本的な攻めは外のストレートとスライダーなのですが、要所でインコースを使う。それがソフトバンクの打者にとってはものすごく厄介なボールになっていました。打者の反応を見ると、おそらくこの攻め方はデータになかったのではないかと。

── ケイ投手は7回を投げて4安打無失点、7奪三振、1四球というすばらしい内容でした。

 DeNAベンチとしては、この試合は細かく継投でつなぐというプランがあったと思うんです。それが7回まで引っ張れたのはものすごく大きい。戸柱選手の要求に対して投げ切ったケイ投手が見事だったのですが、ソフトバンク打線にとっては意表をつかれる感じになりました。結局、ケイ投手、坂本裕哉投手、ウェンデルケン投手の3人で済んだ。今後のことも考えると、DeNAにとっては最高の1勝になりました。

── 今シーズン、DeNAは山本祐大選手がメインでマスクを被り、戸柱選手は控え捕手という立場でした。ただ山本選手がケガで離脱しても、DeNAのチーム力が落ちなかったのは、戸柱選手の存在は大きいと?

 去年までとはまったく違うリードをするようになりました。ベンチで見ることが多くなり、いろんな発見があったのではないかと思うんです。

投手の調子や打者の反応を見て、リードできるようになりました。もちろん、ベンチからの指示もあると思うのですが、捕手の感性、洞察力がないとここまでうまく引き出せません。第3戦、第4戦に関しては、戸柱選手の存在が大きいですね。

【第5戦の見どころは?】

── 一方、ソフトバンク先発の石川柊太投手はいかがでしたか。

 パワーカーブが特徴の投手ですが、右打者のインコースに食い込んでくるシュート系のボールがいい。右打者への被打率.180を見ても、このインコースへのボールが効いている気がします。この試合でも牧秀悟選手や宮﨑敏郎選手には、インコースを突きながらうまく抑えていました。ただ、4回にオースティン選手にホームランを打たれた場面は、インコース要求に対してやや外寄りに入ってしまった。オースティン選手にとっては絶好球になってしまいました。両チーム無得点で相手打者は4番、一番警戒しないといけないのはホームランなのですが、インコースに投げきれなかった。久しぶりの登板ということもあって、打者に向かっていくというよりは、自身の状態を探りながら投げている印象を受けました。それでも6回途中1失点は立派な数字だと思います。

── 石川投手の失投を仕留めたオースティン選手も見事だった?

 さすがでした。短期決戦はひとつのミス、ひとつのプレーで戦況が大きく変わります。ソフトバンクバッテリーにとっては痛恨の1球になってしまいました。あとベイスターズにとって大きいのは、桑原将志選手がラッキーボーイ的な存在になっていること。日本シリーズはこういう選手が出てきたチームが強い。前日の試合でも攻守にわたり大活躍の桑原選手ですが、この試合でも3安打2打点。7回に満塁からの2点タイムリー二塁打はほんとに大きな追加点になりました。ソフトバンクとしては、桑原選手の勢いを止めないと厳しい戦いになります。

── DeNA打線は第4戦も11安打と上向いています。

 1番の桑原選手と4番のオースティン選手が好調ですので、2番、3番がもっと機能すればさらに得点力は上がるのではないでしょうか。第4戦は牧選手が2番、筒香嘉智選手が3番に座りましたが、ともに状態はそれほどよくありません。なので、2番に経験豊富な佐野恵太選手、3番にマイク・フォード選手を入れても面白んじゃないかと思います。

佐野選手は打率こそ高くありませんが、強いスイングができていますし、状況に応じたバッティングができる。フォード選手もしっかり振れていますからね。そして牧選手を6番に置く。そのほうがソフトバンクにとっては脅威かもしれません。

── 対戦成績は2勝2敗の対になりました。勢いはDeNAにあると見てもいいでしょうか。

 たしかにDeNAに勢いはありますが、まだどっちが有利というのはないと思います。ソフトバンクは有原航平投手、リバン・モイネロ投手が控えています。一方のDeNAは、第7戦で東克樹投手を予定しているでしょうから、なんとかそこまで持ち込みたい。そういう意味で第5戦はものすごく重要な試合になります。

── 第5戦の見どころはどこになりますか。

 ソフトバンク打線が、アンドレ・ジャクソン投手から得点を奪えるかですね。

第1戦も有原投手のタイムリーで2点奪いましたが、三振もけっこう奪われましたし、打ち崩したという感じではありません。初戦の結果を踏まえてどう対策を立ててくるか。逆にDeNAは、ソフトバンク打線をどう抑えていくか。戸柱選手のリードに注目したいと思います。


秦真司(はた・しんじ)/1962年7月29日、徳島県生まれ。鳴門高から法政大を経て84年ドラフト2位でヤクルトスワローズに入団。88年に強打の捕手としてレギュラーをつかむと、野村克也監督のもと91年からは外野手に転向し、その年のオールスターに出場するなど中心選手として活躍。99年に日本ハム、2000年にロッテでプレーし、同年限りで現役引退。引退後はロッテ、中日のコーチを歴任し、08年からはBCリーグに新加入した群馬ダイヤモンドペガサスの監督に就任。12年から17年、19年とまで巨人のコーチを務め、現在は解説者として活躍している

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