ホームランは力。ホームランは正義。
10月30日、横浜DeNAベイスターズと福岡ソフトバンクホークスの日本シリーズ第4戦。前日の桑原の攻守にわたる活躍で流れを掴んだベイスターズは、この日も終始試合の流れを離さなかった。
そこで出たのが、効果的な2発のホームランだ。
【負傷の4番が見せた執念の一発】
まずは4回。この日も足を痛めながら4番DHで出場したタイラー・オースティンがライトへ先制の一発。ベイスターズは過去の3度のシリーズも含めて、先取点を取れば一度も負けていないというジンクスが勇気を与える値千金のホームラン。
試合前には三浦大輔監督から「(痛めている足が)ダメだったら代えるぞ」と言われながら、オースティンは志願の出場。2回にはサードへの走塁の際に、痛めた足を気にするような素振りもあって肝を冷やしたが、このホームランではゆっくりとダイヤモンドを一周。チームにも個人的にも最高の結果となった。
「ぶっちゃけ、めちゃくちゃ痛いです」「もっと早く治るはずなのに、なんで治らないんだろうなあ......」と試合後に本音を覗かせたが、シーズン中から出場すればケガも負傷も顧みぬ全力プレーでチームを鼓舞してきたオースティン。「本当は全打席歩いて帰れるようにしたいんだけどね......」とこぼすほど身体は相当きついはずだが、勝利への断固とした決意を見せる。
「足の状態は正直よくないですが、チームのため、ファンのために持てる力をすべて出しきるつもりでやっています。
シリーズでは第2戦こそ欠場したものの、通算打率は.556と出れば結果を残すオースティンの存在がいるといないとでは打線の厚みがまるで違う。
【冬眠状態から少しずつよくなっていた】
「ビッグ5」なんて言われたオースティンに佐野恵太、牧秀悟、筒香嘉智。そして、もうひとり、ベイスターズ打線に絶対に欠かせないのが、シリーズここまで1安打。ポストシーズンに入ってから明らかにその活動が冬眠状態となっていた宮﨑敏郎の復活だ。
田代富雄コーチが言う。
「状態はよくなかったよね。問題はタイミングの取り方よ。とくに宮﨑の場合は独特のフォームだからね。一度狂うと戻すのはただでさえ難しいうえに、原因がフォームのズレによる場合もあるから、短期決戦で修正するのはすごく難しい。俺も気になるところをちょこっと言ったんだけど、それが役に立ったかどうかは本人に聞いてくれ(笑)。あいつはね、これまでも自分で解決するんだよ。今回も第2戦でヒットが出てから少しずつよくなってはいたんだけどね」
待望の一発が出たのは、1対0のまま好投を続ける先発のアンソニー・ケイが6回のピンチを抑えた直後だった。
宮﨑復活への大きな前進となるこの一発の予兆はあった。前の試合ではフォアボールを2つ選べていたこと。そして、試合前の打撃練習ではいつもより多くフルスイングで引っ張りを繰り返し、次々とレフトスタンド、時に中段へ放り込むほどすばらしい打球を放っていた。
再び田代コーチ。
「打撃練習を見ても、いい兆候が出てきた。振れてはいるんだよ。徐々に状態はよくなっているなかで、ホームランが出たからね。今回の不振も本人なりに必死に格闘して糸口を見つけてきたんだろう。これからやってくれると思うよ」
試合後、報道陣の前を足早に通りすぎようとする宮﨑だったが、少ない言葉のなかにも、なんとかしようともがいていたことが伺えた。
「(これまでの状態は)もう見てのとおりです。
【第5戦が大勝負】
福岡に来てから、東克樹、ケイとふたりの先発が抜群の投球をしてくれた。クライマックスシリーズからは阪神2戦目で10得点した以外は、投手陣がここまでフル回転で踏ん張って勝ちをつないできたベイスターズだが、やはり、打ち勝つ野球でチームに勢いをもたらしてきたのが最大の強み。そのなかでポイントゲッターとなる宮﨑の復活ほど待ち遠しいものはない。
日本シリーズで2連敗とあとがない状態から星を五分に戻し、敵地で始まったクライマックスシリーズから合言葉にしてきた「横浜へ帰る」ことをこのシリーズでも確定させたベイスターズ。
第4戦、2本の大きすぎるホームランで完全に勢いが戻った。第5戦をどちらが取れるか、日本一を成し遂げるための大勝負だ。もうひとつ勝って、横浜へ帰ろう。