福田正博 フットボール原論

■北中米W杯に臨むサッカー日本代表の26人が発表された。その顔ぶれや各ポジションの人数から、福田正博氏がそれぞれの起用法を展望する。

【W杯で最大の成果を出せる26人】

 北中米W杯に挑む日本代表26選手が決まった。その顔ぶれを見て、大きな驚きはなかったというのが正直な感想だ。

サッカー日本代表のワールドカップに臨む26人 福田正博が各ポ...の画像はこちら >>
 森保一監督は代表を率いて8年。東京五輪を含めれば10年もの間、誰よりも日本の選手たちをつぶさに見てきた。プレーの特徴だけではない。性格、ピッチ外での集団行動での振る舞い、選手同士の化学反応、あらゆるデータを積み上げてきた。その総合的な判断の結果が、今回の26人になった。

 ただ、どの大会でもメンバー選考は波紋を呼ぶものだ。今回は守田英正が選ばれなかったことが大きな話題になっている。

 過去の森保監督への批判的な発言が尾を引いているのでは、という憶測もある。だが、それは断じてないと思っている。

 代表チームは、うまい選手を26人並べる場所ではない。南野、三笘という攻撃の核となる選手を呼べない状況で、W杯の舞台で最大の成果を出せる26人は誰か。

その答えに守田の名前は残らなかっただけのことだ。

 その守田が選外になったボランチには、鎌田大地佐野海舟、田中碧、そして遠藤航がメンバー入りした。4人で回せるのかという意見がある。まして遠藤は、今年2月に負傷した左足首の手術からの復帰が間に合うのか。その点も守田が選外になった議論が熱を帯びる要因になっているのだろう。

 ただ、代表には一流の医療スタッフがいる。監督をはじめチームに関わるスタッフは、選手の状態をよく把握している。その情報が外に漏れないから憶測が生まれるのだが、彼らが遠藤はプレーできると判断した点をしっかり見るべきだろう。

 ボランチは4人のほかに、DFの板倉滉、瀬古歩夢もプレーできる。鈴木淳之介も、もともとはボランチが本職だった。彼のマンマークの強さを踏まえれば、守備力が求められる局面では鈴木を起用する手もあるだろう。

 このなかで核となるのが佐野と鎌田だ。

佐野はいまや遠藤のように相手からボールを刈り取れるし、奪ったあとの前線へのプレー関与も大きい。鎌田大地は守備力が高まったことで、彼の持ち味がさらに輝くようになった。視野が広く、ゲームのテンポやリズムに変化をつけられる戦術眼は、日本代表に不可欠なものだ。

 遠藤と田中はセカンドチョイスだろう。ただ、単に交代要員なわけではなく、グループステージでターンオーバーをする場合には彼らもスタメン起用されるはずだ。決勝トーナメントでは選手個々のコンディションを考慮しながら、その時点でのベストの組み合わせを起用していくのではないかと見ている。

【層が厚くなったDF陣を多めに選考】

 DF陣は厚みのある選考となった。谷口彰悟、渡辺剛、伊藤洋輝、冨安健洋、板倉滉、瀬古歩夢、鈴木淳之介、菅原由勢、長友佑都が名を連ねた。

 DFラインはこの1年でクオリティーがすごく上がり、選手層も厚くなった。冨安や板倉の故障があったため、主力が欠けたらチーム力もガタ落ちというケースは十分にありえた。しかし、他の選手たちが巡ってきた出番をしっかりモノにして成長した。だからこそ森保監督は三笘や南野を招集できないとなった時に、まず「いい守備」のところを意識して、DFの顔ぶれを厚くしたのだと思う。

 そのDFで大きなトピックは、冨安の復帰だ。

遠藤と同じく、代表チームのメディカル担当などがコンディションに関して「大丈夫」と判断したわけだ。現状では90分間をフルに戦い抜くのはまだ難しいかもしれないが、一時は現役引退もあるのではないかと心配される状態だったことを思うと、この復活には胸が熱くなる。前回大会同様に試合終盤のクローザー的な役割を担うのではないか。冨安が控えているという安心感は、チームにとっては大きなものになるはずだ。

 もうひとつは、5大会連続のW杯となる長友だ。彼はピッチ外でのチームへの貢献度がクローズアップされがちだが、大前提として選手としてやれるという点を忘れてはいけない。もちろん、90分間を誰よりも走りつづけて、試合後もケロッとしていた全盛期に比べれば衰えはある。だが、いまでも短い時間なら、左でも右でも計算が立つ。しかも、ピッチでは誰よりもチームを鼓舞できる。指揮する側からしたら頼りになる存在なのだ。

 3バック真ん中には谷口を置くだろう。谷口は統率する力がずば抜けているだけに、DFラインが安定するはずだ。

右CBには板倉と渡辺がいて、DF陣で唯一左利きの伊藤を左CBで起用すると見ている。瀬古は右でも左でもボランチでも使えるユーティリティーさでチームに貢献できる。

 鈴木淳、菅原、長友はウイングバックに守備の比重を大きくする場合や、試合展開で4バックにする場合にサイドバックをつとめることも想定される。いずれにしろ、与えられた役割をまっとうする職人が揃った印象が強い。

【攻撃陣は20歳の後藤にも期待】

 南野と三笘という攻撃の中心をふたりも欠くことになった攻撃陣は、意外性の少ない選考となった印象だ。予想していた町野修斗が選から漏れたが、大方は想定どおりのメンバーだった。

 上田綺世、堂安律久保建英、中村敬斗、伊東純也、前田大然、小川航基という実績ある選手たちがいて、鈴木唯人、後藤啓介、塩貝健人がメンバー入りを手にした。

 FWは上田綺世が軸で間違いないが、20歳の後藤にも期待している。

 後藤は191cmという高さから空中戦が強いと思われがちだが、彼の武器はスピードと、足元の優れたボール扱いだ。日本代表での実績はまだないに等しいが、今季はシント=トロイデンで11ゴール。ベルギーリーグで6番目に多いゴール数を挙げた、伸び盛りのストライカーだ。

 途中交代で出場するタイプではないだけに、グループステージでスタメン出場の機会を与えてもおもしろいだろう。

これからの日本代表を背負うスケールの大きさが魅力なだけに、このW杯でさらなる飛躍のキッカケをつかんで大きく羽ばたいてくれるのを願っている。

 日本代表は、5月31日にアイスランドとの壮行試合を戦い、6月15日にW杯グループステージ初戦のオランダ戦、21日にチュニジア戦、26日(いずれも日本時間)にスウェーデン戦に臨む。日本代表に選出された26選手が思いきり戦えるように、しっかり応援してほしいと思う。

>>後編「グループステージをシミュレーション」につづく

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