福田正博 フットボール原論

■6月15日に初戦を迎える日本代表のW杯。グループステージの戦い方やカギになるポジションはどこになるか? 福田正博氏に聞いた。

>>前編「日本代表26人の起用法を考察」

【初戦はベストメンバー、ベスト布陣で】

 日本代表のW杯グループステージは6月15日(日本時間、以下同)から始まる。初戦のオランダ戦から中5日の6月21日に第2戦のチュニジア戦、そこから中4日の6月26日に第3戦のスウェーデン戦に臨む。

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 試合間隔が中5日、中4日とあるため、ターンオーバーを使わないのではという見方があるが、森保一監督はターンオーバーを敷くのではないかと予想している。

 理由は選手の士気にある。「チーム一丸となって全員で戦う」を掲げているにもかかわらず、固定したメンバーだけで戦えば、試合に出られない選手たちの士気の低下や監督への求心力が落ちるのが否めないからだ。

 大会期間1カ月ほどの短期決戦において、チームの士気は重要だ。全員が同じ方向を見て戦うことで、困難を突破できる可能性は増える。その点は森保監督も重視している。選手の実力差が大きければ固定メンバーで戦うのも仕方ないが、いまの日本代表は誰が出ても遜色なく実力が拮抗している。ならばグループステージは各選手の役割を決めたほうがいい。選手の士気は高まり、コンディションも合わせやすくなる。

 その場合、まずオランダ戦は現状のベストメンバーで挑むべきだろう。

 オランダはW杯の優勝経験こそないが、準優勝3回、3位1回、4位1回。

前回大会はベスト8だったが、優勝したアルゼンチンにPK戦での敗退だった。FIFAランクは7位(日本は18位、2026年4月時点)。

 そんな優勝を狙う強豪だけに、W杯の初戦にコンディションのピークを持ってこない傾向がある。そこに日本がつけいる隙がある。だからこそ現状のファーストチョイスのチームをぶつけて勝点3、それが叶わなくても勝点1を狙いに行くべきだ。

 過去の傾向だとオランダは4-3-3のフォーメーションで戦っている。単純な選手の配置だけで言えば、3-4-2-1の日本とのかみ合わせはよくない。では、日本が4バックにするかと言えばそうではないだろう。

 相手を知り、リスペクトすることは大切だが、自分たちが築いてきた形にも自信を持つべきだ。なぜならオランダ戦はW杯という大会への「入り」だからだ。上位まで勝ち抜くのが目標ならば、大会を通じてメインとなる自分たちの布陣や戦い方を、初戦でしっかりと出したほうがいいと思う。

【すべての選手が一度はピッチに立ってほしい】

 チュニジア戦は、日本が決勝トーナメントに進出するには、絶対に勝点3が必要となる試合だ。今大会はレギュレーションが変更になり、得失点次第ではあるものの、勝点3を手にできれば決勝トーナメント進出の可能性が高い。

初戦に敗戦しても、チュニジア戦で勝点3を手にできれば息を吹き返せる。

 チュニジアは簡単な相手ではない。守備は堅く、カウンターも鋭い。初戦から中5日の試合間隔があるため、全選手をターンオーバーで起用しなくても済むものの、一定数は入れ替えるのではないか。先発する選手にとっては責任感を得られ、コンディショニングも合わせやすく、集中力も研ぎ澄ますことができるはずだ。

 スウェーデンは、攻撃陣のタレントであればオランダを凌ぐものがある。強くて、高くて、速い。プレーオフを勝ち上がったチームだと見くびっていると、痛い目に遭う相手だ。日本もヨーロッパでプレーしている選手ばかりなので高を括ることはないと思うが、気を引き締めておく必要がある。

 その手強いスウェーデンが相手の3戦目は、勝ち点に余裕があれば決勝トーナメントを見据えてすべての選手が一度はピッチに立つ状況になるのが理想だ。

 日本が決勝トーナメントを勝ち上がるために、最も重要になるのがコンディショニング。過去のW杯の日本は選手層に厚みがなかったため、主力選手におんぶに抱っこだった。

その結果、大会が進むなかで疲労が溜まり、コンディションが整わずに決勝トーナメントではベストパフォーマンスを出せずに散った。

 森保監督はベスト16で敗れた2018年ロシアW杯にコーチとして帯同し、前回大会でも悔しさを味わっている。それだけに目の前の1勝は大事にしつつも、選手起用を工夫しながらの采配をしてくれると期待している。

【ラッキーボーイの出現を待ち望む】

 日本がベスト8以上の成績を残すためには、左シャドーのポジションがポイントだ。

 W杯予選を通じて不動だった南野拓実がケガで長期離脱となり、その穴を埋めるパフォーマンスを3月のイングランド戦で見せた三笘薫も故障。日本にとって大打撃なのは間違いないが、対戦相手や対峙する選手の特徴に応じて、起用選手を変えればいいだけだ。

 前田大然なら、前線からのチェイスやスペースに出たボールへのスピードでは三笘以上のプレーがある。他の選手も同様だ。鈴木唯人には鈴木唯人の、中村敬斗には中村敬斗の、伊東純也には伊東純也の、それぞれの持ち味がある。左シャドーで起用される選手には、しっかりと自分の持ち味を発揮してもらいたい。

 最後にひとつ、シンデレラボーイやラッキーボーイ的な活躍をする選手を待ち望んでいる。過去のW杯で躍進した国にはそうした選手がいたが、日本にも出現したら、まだW杯で見たことのない景色にたどり着く確率が高まるはずだ。

 そうした存在になれる選手として21歳の塩貝健人に注目している。塩貝は瞬間的なスプリント力とアグレッシブさを武器にするストライカーだ。今季はシーズン途中にオランダのNECからドイツのヴォルフスブルクに移籍し、試合途中からピッチに送り出されて活躍してきた。オフ・ザ・ボールの動きに優れているから、ゴールに絡む動きができるのだが、なにより塩貝からは「ゴールを決める」という強い意志が感じられるのだ。

 ゴールを決めるために何が必要か、どんな動きをして、どこにポジションを取るべきか。そこをしっかり考えているのだろう。だからこそ、途中からピッチに立っても自分の仕事を理解し、アグレッシブにゴールを決めるために動ける。彼の推進力やゴール前での嗅覚がチームに勢いをもたらし、日本を未踏の地に導いてくれることを期待している。

 いずれにしろ日本代表26人全員がコンディションを合わせ、与えられた役割をまっとうできれば、ベスト8以上の成績を出せる。そう強く信じている。

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