男子バレーボールのネーションズリーグ1次リーグ第1週が6月10日に開幕。日本は初戦、ウクライナと対戦する――。

 昨年9月、フィリピンのマニラで世界バレーボール選手権が開催された。日本は優勝候補の一角に挙げられていたにもかかわらず、グループリーグ敗退に終わった。カナダ、トルコにストレートで敗れ、「日本だけでなく世界も進化している現実」を目の前に突きつけられた。

「(世界バレーは)2試合(トルコ戦、カナダ戦)を戦って、何が足りなかったのかを考えて、やっぱりエネルギーのところかなって......」

 髙橋藍(24歳)はそう言って、グループリーグ最後のリビア戦にどう臨んだのかを説明していた。失意も大きかったはずだが、それを飲み込むようなエネルギーを体中から発散させながら敗退を振り返った。

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「(2025年は)自分にとって代表シーズン5年目で、"考えながらやりすぎていた"と思いました。"自分が決めないと""うまくやらないと""チームをうまく回さないと"と、いろいろと役割を考えすぎてしまって、それが(悪い方向に)自分のプレーに出ていました。福澤(達哉氏、元日本代表の解説者)さんに、『藍は本能でやるところからうまさが生まれるんだから』と言われて、さすが自分のことを知ってもらっているなって(笑)。それで気が楽になって、"自分の感覚に従ってやっていない、考えすぎちゃっている"と反省した」

 彼はそう言って、さらに言葉を継いだ。

「これまで僕は自分の感覚を頼りにやってきました。それで感覚をフルに出す感じに戻して、それが自分のパフォーマンスの出し方だと思ったんです。おかげで拮抗した場面でも、"最後の1点を取れる、大事なところで取れる"につながっていたと思います。

それこそ自分自身の戦い方だと、(リビア戦は)あらためて感じられました」

 髙橋はその経験を糧に、2025-26シーズンのSVリーグに挑んだ。彼は何を得て、どんな成長を遂げたのか。今年6月からの新たな代表シーズンに向けて、前途洋々だ。

【SVリーグで見せた成長】

 SVリーグ2年目の髙橋は、総得点数リーグ7位、アタック決定率2位、サーブ効果率3位、サーブレシーブ成功率4位など、目覚ましい出来だった。サーブひとつとってもショートサーブで崩すだけでなく、スパイクサーブでエースも狙えるようになっていた。レシーブはもともとリベロ顔負け。アタックの多彩さも精度が増し、敵が戦慄する"怖い"選手になった。

 SVリーグの1年目も上位の数字を叩き出していただけに、それを塗り替えたことは特筆に値する。それは簡単なことではない。持ち前の胆力と辛抱強いトレーニングの賜物だ。

 髙橋は肉体改造によって、わずかな脂肪も削ぎ落としながら、筋量を倍増させた。負けることに比べたら、自己管理など苦でもなかったという。結果、スピードとパワーで敵を凌駕した。

身体的なアドバンテージも生まれたことによって、必然的に創造的なプレーにも磨きがかかった。得意とするバックアタックは圧倒的な決定力を誇り、サントリーサンバーズ大阪のレギュラーシーズン1位の原動力になっている。

「最後の1点を取りきるのが、エースの役割だと思っています」

 髙橋はシーズン中、はっきりと語っている。エースという負荷を背負い、その重みを力に変換できるのが彼の強みだろう。それも苦しい顔で引き受けるのではなく、何のためらいもなく明るくやり遂げられる。そのパーソナリティは特別で、撓(しな)る竹のように、流れる水のように、柔らかく、定まらずに勝負と向き合えるのだ。

 1年目に続いて、髙橋はベストアウトサイドヒッター、ベストレシーブ賞を連続受賞した。ベスト6に入った唯一の日本人選手だった(ベストリベロは山本智大)。攻守ともに獅子奮迅で、オールラウンドプレーヤーの面目躍如だ。

 もっとも、今シーズンはチャンピオンシップではファイナルを連覇することはできなかった。あと一歩まで、大阪ブルテオンを追いつめた。そこで栄光をこぼし落とした口惜しさは本人にしかわからないだろう。

ファイナル1日目はセットカウント3-1で勝利したが、2日目は1セット目を奪うも逆転で落とした。そして3日目は0-3と完敗だった。

【チャンピオンシップの敗戦も糧に】

「負けてしまって......それが僕としてもすべてです。結果がすべて」

 試合後の会見で髙橋は珍しく訥々と語った。

「最後のところで、勝つことができませんでした。それは悔しくて......ただ、自分自身のバレー人生、これまでも負けることで成長することができました。勝つために何が必要なのか。敗者だからこそ、学べるポイントが必ずあります。自分としてひとつ言えるのは、"この悔しさを受け止めて次の勝負に向かう"ということですね」

 髙橋は言葉を紡ぎながら、次第に語調に確信を漲らせた。そこに暗さや粘り気はない。敗北をも吸収し、それを燃料にする準備を始めていた。

 たとえば中学時代、髙橋は身長が伸びずにリベロをやっていたが、そこで鍛えたレシーブ感覚を今に生かしている。

高校時代も1、2年と春高は京都府予選で敗れ、全国大会に勝ち進めなかったが、3年で壁を突き破ると全国制覇を実現した。彼にとって、逆境=起爆装置なのだ。

「負けず嫌いに関しては、生まれつきなのかって思います。僕は何に対しても負けるのが嫌なんです。できないところを家族にすら見せたくない。できないことは人前でやらず、陰でやってできるようになってから人前で見せるほどで。すごくプライドが高いし、負けず嫌いで、弱い部分を人に見せたくない」

 髙橋は気高く言う。彼はこの1年を通じ、敗北から再起することで、逞しい成長を見せた。SVリーグファイナルは無念に終わったが、勝負は続く。新たな代表戦だけでなく、先日発表されたポーランドリーグの強豪ルブリンへの移籍も、勝負の流転だ。

「勝負の面白さがなければ、ここまでバレーボールをやっていません。勝ち負けがあるからこそ、悔しさもうれしさもあって"楽しんでやる"につながる。

勝つ瞬間のために頑張っているので」

 髙橋にとって、敗北はいつだって勝利の"引き立て役"だ。

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