篠塚和典が語る若手野手たちの課題と対策 前編
今季の巨人は、岡本和真(トロント・ブルージェイズ)が抜け、山﨑伊織が故障で出遅れるなかでシーズンをスタートしたが、31勝25敗2分でリーグ3位(6月8日時点、以下同)と好位置につけている。
"ヤング・ジャイアンツ"とも言える若手の奮闘もあるが、長らく巨人の主力として活躍し、引退後は巨人の打撃コーチを歴任した篠塚和典氏から見ると、課題も多いという。
【多くの若手に感じる「強く振ればいい」という意識】
――まず、ここまでのチームの出来をどう見ていますか?
篠塚和典(以下:篠塚) 依然として阪神との選手層の差は感じますが、戦力が揃わない状態でスタートしながら、よくやっていると思います。
――レギュラーが確立されていないポジションが多く、シーズン序盤から浦田俊輔(2年目/23歳)、佐々木俊輔(3年目/26歳)、平山功太(3年目/22歳)、8年目ではありますが増田陸(25歳)など、若手野手の積極的な起用が見られます。
篠塚 ただ、チャンスを与えるのはいいのですが、打てなくなるとすぐに代えてしまいますよね。5月26日から指揮を執る橋上秀樹監督代行が、そのあたりをどうマネージメントしていくのか。シーズンを通してひとりの選手を一人前にすることですら大変ですし、名前が挙がった若手全員をひとり立ちさせることは至難の業です。
チームとしては勝たなければいけないのもわかりますが、今は世代交代の時期です。若手のなかでふたりくらいは、我慢して使い続けなければ伸びません。このままシーズンが終わるまで、選手をとっかえひっかえ使っていたら、来年もまた同じことを繰り返すリスクがあります。「この選手を育てる」と決めたら、長い目で見て"学ばせる"ことも必要です。
――浦田選手は、ルーキーイヤーだった昨年よりも打球が強くなった印象です。
篠塚 浦田はリーグトップタイの15盗塁を記録している俊足ですから、塁にさえ出れば相手にプレッシャーを与えられる。だから、塁に出るバッティングをもっと追求すべきです。
どの選手も、体はそんなに大きくないじゃないですか。それなのに、一様に「強く振ればいい」という、引っ張り中心の工夫のないバッティングをしています。変化球がきても、真っすぐを打ちにいく時と同じような淡白で強いスイングをしていては、確率が悪くなります。
【3年目の平山への期待と課題】
――やはり、練習から意識して取り組まなければいけない?
篠塚 試合前にどういう練習をしているのか。そこが大事だと思います。ぐっと呼び込んでインパクトだけパチンと打ったり、逆に少し早く始動して泳ぎながら打ってみたり......私も練習を見る機会がありますが、そういう工夫が見られません。いつも「同じタイミングで同じスイングをする」という感じですし、「きれいに打ちたい」という意識が強すぎるんでしょうね。
自分自身がどういうタイプで、どういうバッターを目指すべきかを見極めることも必要です。例えば、増田はたまに長打を打つこともありますが、長距離バッターというタイプではありません。佐々木、平山も、基本的には外野の間を抜いていく打球を意識するほうがいいと思います。
特に平山は22歳と若く、走・攻・守で光るものがあり、さまざまな伸びしろを感じます。今後レギュラーを掴むために、安定した成績を残すことが第一歩です。
――平山選手のバッティングは、バットのヘッドをピッチャー側へ向ける形など、特徴的ですね。
篠塚 後頭部の後ろのほうにバットのヘッドがあれば、ピッチャー側に向けても構いません。彼は今年4月に支配下登録されたばかりで、実質1年目ですよね。一軍でいろいろなピッチャーと対戦しながら、相手や状況によって何をしなきゃいけないか、ということを考えるシーズンです。
試合を重ねながら、いい部分と悪い部分を洗い出すことの繰り返しだと思うんです。シーズンを通じて体験したものを、来シーズン以降にどう生かしていくかが非常に大事です。
――現時点での平山選手の課題は?
篠塚 先ほども言いましたが、どんなボールでも同じようにスイングしていて、真っすぐでも変化球でも空振りの仕方が同じです。追い込まれたカウントでは、外のボールをミートすることに重点を置いてみるとか、考えなければいけないことがあるはずです。変化球への対応としては、体を少しずつ緩めていったうえでの"タイミングが合っている空振りやファウル"はいいのですが、そういった場面があまり見られません。
プロの選手であれば、ティーバッティングで自分が決めた方向へ打つことはできると思いますが、フリーバッティングでも同じようにできるのかどうか。ピッチャーに真っすぐを投げてもらう時に、たまには抜いたボールを投げてもらうことも必要ですし、それにアジャストしていけば自信もついてくるでしょう。バッティングに対する意識の持ち方と、練習の仕方が重要ですね。
【伸び悩んでいる有望選手たち】
――現在ファームにいる、浅野翔吾選手(4年目/21歳)はいかがですか?
篠塚 彼も長打を打とうという意識が強すぎますね。あの小さい体(172cm)で、バットを目一杯長く持って打っているようではダメ。もちろん、それで打てていればいいですけどね。もう4年目ですし、状況に応じてバットを少し短く持ち、ミート中心のバッティングを意識していくとか......何かを変えていかなければレギュラーはおろか、一軍に定着することすらできません。
今は速いボールを投げるピッチャーが多いですから、バットを少し短く持ったほうが当たる確率は高くなります。昨年、泉口はそれで成功しました。浅野に限らず、平山にしても自身の特長や相手に応じたバッティングができるかどうかですね。
――今季に飛躍が期待される中山礼都選手(6年目/24歳)はいかがですか?
篠塚 昨年の後半、徐々にバッティングがよくなっていたので期待していました。ですが、やはり強く振ろうという意識が先行して、確実にミートして野手の間にボールを飛ばす打撃が今年はできていません。強振し、野手のいるところに打球が飛ぶ、ということを繰り返していたら結果は出ません。
彼はキャンプ、オープン戦を通じて、昨年のいい感覚を定着させるべきでした。WBC日本代表に合流したことはいいのですが、オフの間に自分の特性を忘れたのか、もしくは「これでいいんだ」と思いこんだものが間違っていたのか......ちょっとした気の緩みもあったのかもしれません。
ちなみに、バッティングの意識という点で少しセンスを感じるのは、ルーキー(ドラフト5位)の小濱佑斗(24歳)です。まだ打席数は少ないですし、技術の向上も必要ですが、いろいろなボールに対しての体の使い方や、状況に応じた意識はいいものを持っているな、という印象です。
【外国人選手たちの印象は?】
――若手の成長には、打線の軸となる選手の活躍も重要だと思います。その点で、新外国人のボビー・ダルベック選手はどう見ていますか? ここまで9本塁打、チームトップの28打点を挙げています。
篠塚 インサイドが弱いですよね。狙い球が少し外側になっているバッティングに見えます。少し甘めのインサイドに来たボールを、回転しながらガーンと最初から振っていく感じがないんです。時には、初球のインサイドを思いっきりミートしていくとか、工夫と変化を見せないと同じパターンでやられてしまいます。
岡本の代わりは難しいですし、4番を任せるとなると期待値は大きいですが、指導法次第でもっとやれると思います。ただ、数字を見れば、ここまでは及第点の働きと言っていいのではないでしょうか。
2年目のトレイ・キャベッジは、追い込まれてからボール球を見極められず、すべて振ってしまって三振するケースが目立ちます(リーグトップの77三振)。日本の野球をもっと勉強していけばさらに成長できる選手だと思いますし、期待しています。
外国人選手の活躍も欠かせませんが、中長期で考えれば、やはり若手の台頭は必須です。ようやく支配下登録され、6月4日に東京ドームでプロ初安打を記録したフリアン・ティマ(来日6年目/21歳)、今季はまだ3試合しか出ていないドラ1の石塚裕惺(2年目/20歳)、ファームで結果を出している三塚琉生(4年目/21歳)、荒巻悠(2年目/23歳)らもチャンスに備え、鍛錬していってもらいたいです。シーズンを通じ、ここまで挙げた選手のなかで誰が出てくるのか。期待とともに注目しています。
(後編:安打製造機・篠塚が伝えたい「打撃論」 打席での立ち位置ひとつでも"凡打の内容"が変わる?>>)
【プロフィール】
■篠塚和典(しのづか・かずのり)
1957年7月16日生まれ、東京都出身、千葉県銚子市育ち。1975年のドラフト1位で巨人に入団し、3番などさまざまな打順で活躍。1984年、87年に首位打者を獲得するなど、主力選手としてチームの6度のリーグ優勝、3度の日本一に貢献した。1994年を最後に現役を引退して以降は、巨人で1995年~2003年、2006年~2010年と1軍打撃コーチ、1軍守備・走塁コーチ、総合コーチを歴任。2009年WBCでは打撃コーチとして、日本代表の2連覇に貢献した。










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