篠塚和典が語る若手野手たちの課題と対策 後編

(前編:巨人の若手野手は「工夫が足りない」  篠塚和典が指摘するバッティングの課題>>)

 篠塚和典氏が語る、巨人の若手野手のバッティング。前編では各選手の課題を分析したが、後編では、芸術的な流し打ちなどで首位打者を2度獲得(1984年、1987年)した"安打製造機"の「打撃論」に迫った。

【プロ野球】安打製造機・篠塚和典が伝えたい「打撃論」 打席で...の画像はこちら >>

【重視すべきは"凡打の内容"】

――引き続き、若手野手のバッティングについて伺えたらと思います。

篠塚和典(以下:篠塚) 巨人のすべての若手野手に言えることですが、ずば抜けている部分がありませんし、自分の特長を活かす打撃技術がありません。それと、一時期は打っても徐々に低迷していってしまう。打てる時、打てない時の感覚の差が激しすぎます。「なぜ、そうなってしまうのか」をもっと考えた打撃をすべきです。

 首脳陣は、「この選手を一人前にする」と思うのであれば、石塚裕惺(2年目/20歳)でも、平山功太(3年目/22歳)でも、浦田俊輔(2年目/23歳)でも、"凡打の内容"を重視すべきです。ヒットが出ている時はどの選手もいい感じで打っているわけで、重要なのは"どういう凡打だったのか"なんです。

――たとえ結果が出なくても、凡打の内容が評価できれば使い続けていくべきですか?

篠塚 そうですね。どれくらい我慢して起用するかは、「10試合、15試合は使い続けよう」とか、各チームの首脳陣が定める目安があるとは思います。でも、今は3試合くらい使って、1試合くらい悪かったら使わなくなることが多いじゃないですか。勝たなければいけないと思えば、調子のいい選手を使いたい気持ちはわかるんですけどね。

――選手たちは、各打席でどうアピールしていくでしょうか。

篠塚 ひとつの例ですが、バッターボックスのなかで、少しピッチャー寄りに立ってみてもいいと思います。

今はほとんどのバッターがキャッチャー寄りに立っていますし、それと逆の動きを見せることで、首脳陣に「何か考えてやっているな」と思わせることができるんです。同じ位置に立ち、同じ構えで、同じバットの握りで単純に強く振っていても、「また......」という見方をされかねません。
 
 私が打撃コーチをしていた時、自分なりに工夫して取り組んでいることがわかる選手に対しては、試合で失敗しても何も言いませんでした。逆にそういうものが見られない選手に対しては、アドバイスをしていましたね。

【打席の立ち位置による駆け引き】

――バッターボックス内の立ち位置は、相手も気になるものでしょうか。

篠塚 そう思います。カウントが追い込まれた時に少し動くだけで、相手のキャッチャーに「えっ?」と思わせることができます。立つ位置を変えることで相手バッテリーがどういう配球をしてくるのか。それを考えながら打席に入ると、楽しいじゃないですか。

 後ろに下がったら、キャッチャーは「インサイドが嫌なのかな?」と思うかもしれない。そうなるとインサイドに投げさせる確率は低くなり、外角の確率が上がります。打者はそれを見越して外を狙ってもいい。逆にホームベースに近づくと、キャッチャーは「外を狙っている」と判断してインサイドに投げさせたりするので、最初からインサイドを狙うとか。

そういったことをバッターボックスのなかでやってみたらどうかな、と思うんです。

――現状では、そういった動きをしている巨人の若手はあまりいないでしょうか?

篠塚 ほとんどいません。また、インサイドにくるボールに手が出ないバッターが多い印象です。みんな、真ん中より少し外寄りのボールを狙っているような感じがします。インサイドのボールを「ストライク」と判定された時、インサイドのボールがまったく頭になかったかのように、腰を引くような動きを見せたりしますしね。

 長嶋茂雄さんは見逃し三振には厳しかったので、我々は見逃しをしないためにはどうしたらいいかと意識してきました。インサイドを打つことは、バッティングの基本のひとつです。

 インサイドはバッターにとって一番きついところなので、相手バッテリーも少しボール気味のインサイドを攻めたりしますよね。だから、インサイドをある程度打てるようになれば、当然打てる幅が広がります。インサイドを簡単に見逃して三振する場面を見ると、「なんでそこを打たないの?」と思います。アウトローに決められてしまうと、手も足も出ないこともあるでしょうが、自分の体に近いインローなどであれば、振る準備をしておかなければいけません。

【データの活かし方と、練習での意識】

――現代の野球では、打球速度や角度、スイングの軌道など、バッティングに関するさまざまなことが数値化されています。

それも有効に使うべきですか?

篠塚 自分の打撃を客観的に可視化できることはいいことですし、データを使うのは悪くありません。問題は、それに頼りすぎること。ヘッドスピードを計測した時に、遅かった選手が「もっとヘッドスピードを上げなければいけない」と考えて、もっと強振するようになってしまったりします。

 あとは、「ボールの角度がこれくらいだから、あと2度上げたほうがいい」などと指摘された場合、どのような感覚で2度上げるのでしょうか。ヘッドスピードの上げ方もそうですが、データ班やチーム全体で、適切なアドバイスができればいいのですが......。

 どうすればヘッドが走って、ポンっとバットが出るのか。大事なのは、体が回転してもヘッドは後ろに残したままにして、上半身と下半身の"ねじれ"を作ること。引き伸ばされた体幹の筋肉が縮もうとする力(反射)によって、ヘッドが走るようになります。そういったことも併せて教えるべきです。

――先ほど(前編で)、巨人の若手野手たちが、どんなボールでも同じように全力で振っているという指摘がありました。どういったことを意識すれば改善につながるでしょうか?

篠塚 そうですね。遅いボールで泳がされた時も同じように振っています。

私は泳がされた時、長打ではなく内野の頭を越えるくらいの打球を打てばいいと割りきっていました。やはり遅いボールに対しては、打つほうも力を抜かなければ確率が上がりません。真っすぐを打つ時と同じような強いスイングをしていたら、確率が悪くなるだけです。

 ただ、そうするための体の使い方は急にできるようになるわけではありません。幼少期、アマチュア時代から意識してやってきたかどうかです。今からそれを覚えるとしたら、手遅れとまでは言いませんが、なかなか難しいと思いますし、相当な努力が必要です。

 文字どおりのフリーバッティングをするだけで、「なんとなく」で練習し、どんなボールでも同じように振っていたら、バッティングはいつまでたっても上達しません。バッティングは細かく考え、練習から実戦を意識していかなければいけませんし、バッターボックスのなかでもいろいろな工夫が必要なんです。

【プロフィール】

■篠塚和典(しのづか・かずのり)

1957年7月16日生まれ、東京都出身、千葉県銚子市育ち。1975年のドラフト1位で巨人に入団し、3番などさまざまな打順で活躍。1984年、87年に首位打者を獲得するなど、主力選手としてチームの6度のリーグ優勝、3度の日本一に貢献した。1994年を最後に現役を引退して以降は、巨人で1995年~2003年、2006年~2010年と1軍打撃コーチ、1軍守備・走塁コーチ、総合コーチを歴任。

2009年WBCでは打撃コーチとして、日本代表の2連覇に貢献した。

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