この記事をまとめると
■乗用車ではダウンサイズが進むいまでもトラックは大排気量エンジンを積んでいる■いまだ9リッター、11リッター、13リッターなどが当たり前だ
■じつは乗用車よりも早くトラックのエンジンはダウンサイジングされていた
乗用車よりも前からダウンサイジングが進んでいる
いまや乗用車、とくにドイツ車ではエンジン(排気量)のダウンサイジングは当たり前だ。VWゴルフのエントリーモデルは、999ccのターボにマイルドハイブリッド備えているし、パワフルなGTIモデルでも、またトルクフルなTDI(ディーゼル)でも、ラインアップするのは2リッターの4気筒まで。VWの乗用車は、いまや上限が2リッター/4気筒なのだ。
メルセデス・ベンツもGクラスやSクラスこそV8の4リッターを搭載しているが、バカデカくて7人乗りのVクラスでも2リッターディーゼル。性能的には4リッターガソリン並みとはいえ、大柄な車体に小さなエンジンが当たり前だ。
一方、国産の大型トラックは13リッターとか11リッター、9リッターなど、乗用車のそれとは一桁違う世界。乗用車ユーザーにとっては、バカでかいエンジンに感じることだろう。
しかし、トラックのエンジンは乗用車よりもかなり前からダウンサイジングが進んでいる。1980年代には大排気量のV8エンジンと併売する形で直列6気筒ターボが登場。とはいえ、この頃は6気筒と8気筒であまり排気量が変わらず、13リッターくらいが普通だった。その後、排ガス規制が厳しくなるとともにV8もターボで高効率化しながら排気量もアップして、最終的には20リッターなんて(おもにバス用)バケモノエンジンにまで成長(スケールアップ)したのだ。
その後、2005年には排ガスや燃費規制の問題もあって、V8エンジンは姿を消すことになり、直6エンジンも13リッターから7.5リッターまで、目的に応じて搭載するエンジンを選ぶようになった。メーカーごとに大抵は2種類の排気量を用意し、いくつも特性を変えた仕様を用意しているのだ。
ディーゼルとガソリンでは燃焼の仕組みが異なる
こうした傾向は大型トラックだけではなく、中型トラックでもいえることで、小型トラックではガソリンエンジンに置き換わったケースもある。
どうあれ、「13リッターや11リッターほどもあるならダウンサイジングとはいえないのでは?」とそう思う方もいるだろう。
ディーゼルの場合、負荷に合わせて燃料を噴射するので、軽負荷のときにはシリンダー容積に対して少ししか燃料を燃やさないで、残った空気を熱膨張させて熱エネルギーを有効に使うことができる。
その点、吸い込んだ空気の酸素を燃焼し切らなくてはいけないガソリンエンジンは、吸入空気を絞り込んで燃料を減らすため、吸気抵抗は増えるし熱損失も下げられない。
ターボの過給とEGR(排気ガス再循環)により、実際の排気ガスの量もさまざまに変化するので、エンジンの容積としての排気量はあまり意味をもたないともいえるのが最近のディーゼルエンジンなのだ。昔のディーゼルエンジンと排気量が変わっていないように見えるが、じつは中身や機能はまったく別物なのである。
トラックのディーゼルエンジンは、厳しい排ガス規制と燃費規制に対応しながら、ここぞというときには強力なパワーを発揮して、たくさんの荷物を運び日本の物流を支えているのである。