馬力は効率・トルクは力の強さを示す

馬力は効率を表す単位である。そのはじまりは英国のジェームズ・ワットが蒸気機関を発明した際、その能力を示すため当時の動力の主体であった馬1頭がどれだけの荷物を運べるかを基準に決められた。これに対しトルクは回転力である。

つまり力の強さそのものを表す。



ディーゼルエンジンは、ガソリンエンジンに比べ圧縮比が高いとされてきた。それは使った燃料に対して出せる力の効率が高いことを示す。したがってディーゼルエンジンはトルクが大きい。しかも低い回転から大きなトルクを出せるのも特徴だ。



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一方、高い圧縮比で燃料を燃やした際の燃焼圧力も大きいため、ガソリンエンジンに比べ丈夫に作られている。

頑丈だということは、重いとか部品が大きくなることに通じる。



大きくて重いものは、いったん勢いがつくと止まりにくい。それを慣性が大きいという。レシプロエンジンはピストンが上下動を繰り返すので、折り返し点では一瞬停止し、そして逆方向へ動き出す。その際、速度(回転)が速くなればなるほど重さで止まりにくくなるので、おのずとピストンの上下する速度は遅めになる。つまり回転数を上げられないということだ。



エンジン回転計(タコメーター)を見ても、ガソリンエンジンに比べディーゼルエンジンのほうがレッドゾーンのはじまる回転が低いはずだ。



ディーゼルの馬力が小さいのは回転数を高くできないため

ここで話は冒頭に戻って、馬力とは効率を表すとした。つまり、ある決められた時間内にどれだけこなせるかだ。したがって1分間に何回転できるかが、エンジンの馬力に関わる。回転数をあまり高くできないディーゼルエンジンは、結果的に馬力は小さくなるというわけだ。



荷物を運んだり、大勢の人を乗せたりするトラック/バス、あるいは船舶などでディーゼルエンジンが愛用されてきたのは、速く走るためではなく重い物を運ぶためだ。



【素朴なギモン】なぜディーゼル車は同じ排気量でもガソリン車より馬力が小さい?



それに対しガソリンエンジンは、トルクではディーゼルより小さいかもしれないが、軽く作れる分、高回転まで回すことができる。つまり大きな馬力を出せる。しかし低回転ではトルクが小さいので、瞬発力はディーゼルに劣る。



軽くアクセルペダルを踏み込んでも、発進でディーゼルエンジンが力強く走り出せるのはトルクが大きいからで、馬力ではない。ガソリンエンジンも、高回転まであらかじめ高めておいて発進すれば瞬発力を高められるが、普通に発進するなら飛び出すような瞬発力が出ないのはトルクが小さいためだ。



【素朴なギモン】なぜディーゼル車は同じ排気量でもガソリン車より馬力が小さい?



では、昨今のディーゼルターボエンジン乗用車はなぜ速く走れるのか。

それは、圧縮比を下げて軽く作り、以前に比べ高回転まで回せるようにしたこと。それからターボチャージャーで過給して吸入空気量を増やしてトルクを補い、ガソリンエンジンより低い回転での馬力を上げて、ガソリンエンジンに近づけるようにしたからだ。