セルシアスは重量級のモデルに適したオールシーズンタイヤ
首都圏を基軸に生活していると、年間に数回の積雪に悩まされる。また旅行先などで季節外れの突発的な雪に積もるのでは? とドキドキする。そんな予想外の降雪に右往左往するのではなく、ドシッと構えてカーライフを過ごしたいと思っている方は、このタイヤに注目して損はないだろう。
トーヨータイヤが2019年8月に日本導入を開始したオールシーズンタイヤ、セルシアスがそれだ。今回は北海道のテストコースでの降雪環境を走ることが出来たのでリポートしていこう。
まず先にお伝えしておくが、オールシーズンタイヤが適しているのは、冒頭に書いたとおり年間数回の積雪や降雪環境の走行を強いられて苦労している人だ。間違って欲しくないが、スタッドレスタイヤの代わりにオールシーズンはいかが? という選択ではなく、あくまでサマータイヤで冬期に困るケースがある方はこのタイヤも良いのでは? ということ。
しかしながら市場調査をしてみると、思いのほかこのような苦労を経験している人が多く、オールシーズンタイヤへの反響が大きいのが現状。だからこそ、いま徐々にこの市場は成長しており、トーヨータイヤ以外にもオールシーズンタイヤを提供するメーカーはある。
具体的には、まずベースとしては、サマータイヤではゴムが硬化してグリップレベルが急激に下がる極低温時でも発熱を促しグリップするようにシリカを高分散させた専用コンパウンドを使用。しかも耐久性まで考慮し、ナノレベルでシリカや天然ゴムなどをつなぎ止める“アクティブポリマー”を使用している。
そのうえで路面に接地するトレッド面の外側は、ドライ性能とウェット性能を重視して、ブロックの倒れ込みを抑制するための補強を入れたり、周方向にブロックを連結させるなどのつくりを施している。
対して内側は、スノー重視の作りで、ブロックの倒れ込みを防ぐなどは当然としながら、降雪路面で大事なひっかき効果とも言えるエッジ効果を求めてジグザグ形状のブロックを採用するなど、完全に作り分けている。
ハンドルからの手応えが鮮明であることが強み!
ちなみに昨年8月に発売したタイヤだが、市場要求に迫られて急遽作ったタイヤではない。じつは欧州や北米では2015年から発売していたタイヤで、好評だったことと、冒頭で示した日本での市場要求が高まったため、導入することを決めたのだ。
その乗り味は、圧雪路であればスタッドレスのように走っても、裏切られないほどのグリップ感がある。それは雪にザクザクとブロックが刺さるブロック剛性があるからで、結果としてハンドルからそのグリップ感がズシッと伝わってくるため、安心して走れるのがいい。もちろん過信は禁物ではあるが、オールシーズンってどうなんだ……と疑って走ると、こんなにグリップするのかと驚かされるはずだ。
ちなみに、スタッドレスタイヤと比べると、やはりセルシアスはブロックやタイヤのケース剛性が高いので、圧雪路でもブロックが刺さり辛いほど圧が掛かった路面、言うなればこのままだといずれアイス路面になるという路面だと、圧倒的にスタッドレスのグリップが勝る。アイス路面に近づくほどにグリップレベルが急激に下がる感覚がある。だからこそ、毎年スタッドレスタイヤを必要に迫られて履いている方にはオススメしないというわけだ。
しかし、その硬さのおかげで、コントロール性はズバ抜けてよく、スタッドレスタイヤにありがちなフニャッとした感じや、軍手をして運転しているようなあやふやなステアリングの手応えではないので、若干乗り味としては硬めに感じたものの、とても気持ち良く運転できたのが特徴だ。ちなみにこのハンドルからの手応えの正確さや鮮明さこそ、他のオールシーズンタイヤと比べたときのセルシアスの武器。やはりSUVを想定してつくり込まれているだけあり、タイヤ剛性が高い分ハンドルからの手応えが鮮明になっているということだ。
ロードノイズも調べたかったが、アスファルト路面がなかったため今回は断念。しかし、スタッドレスタイヤ特有の「ゴー」という音は、ブロックがよれて戻る時、正確には細かいサイプがよれて口を開け、閉じるときの音であるが、それはパターンを見る限り少ないはず。
冒頭に述べたケースを感じていながら、そろそろサマータイヤへの替え頃だと言う方は注目して損はしないはずだ。