CX-30とMX-30はプラットフォームを共用

今、勢いあるマツダのクルマのなかで、新しく、注目すべき2台がクロスオーバーSUVのCX-30とMX-30だ。CX-30は2019年10月、MX-30はまずマイルドハイブリッドモデルが2020年10月に登場している(MX-30 EVモデルは遅れて2021年1月発売)。



その両車は、プラットフォームを共用し、全長4395×全幅1795mm、ホイールベース2665mmは同一。

全高のみMX-30のほうが10mm高い1550mmになるだけ。最低地上高はCX-30が175mm、MX-30は180mmと、5mmしか違わない。ただし、車重はMX-30のほうが観音開きドアまわりの補強などで、約60kg重くなっている。



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また、CX-30はスカイアクティブ-G 2.0のガソリン車と新時代ガソリンエンジンのスカイアクティブ-X、さらにクリーンディーゼルのスカイアクティブ-Dの3種類のパワーユニットを用意しているのに対して、MX-30はモノグレードのマイルドハイブリッドと、マツダ量産車初のピュアEVの電動車のみをラインナップしているという大きな違いがある。そもそもMX-30は欧州でピュアEVのみを売っている、EV前提のクルマでもあるのだ。



ここではパワーユニット比較はさておいて(イーブンに比較できないため)両車のデザイン、パッケージ、乗り味、どんな使い方、ユーザーに向いているかを検証したい。



同サイズのSUVを揃えるから悩み倍増! マツダCX-30とMX-30の違いと買いは?



まずはデザインだ。両車はマツダの魂動デザインのひとつの到達点と言える美しさを持っている。クロスオーバーモデルにして、全高1550mm以下の低全高を生かしたスタイリッシュなエクステリアデザインは、大きな魅力と言っていい。が、MX-30がRX-8以来の観音開きドアを採用したのは、観音開きドアありきのデザインではないと考える。つまり、MX-30よりさらに傾斜したCピラー、ルーフエンドとリヤドアからの乗降性を両立させるためには、フツーのリヤヒンジ式ドアでは成立しないのだ。もし、MX-30のリヤドアがヒンジ式ドアなら、大きく頭を下げての乗降になるはずだからだ。

MX-30のよりアグレッシプなエクステリアデザインを成立させるためには、観音開きドアが不可欠だったということではないか。



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室内の居住性も気になるところだが、前席はエコマテリアルの有り無しぐらいで、大きな違いはない。が、さすがに後席の居住性は異なる。CX-30であれば一般的なこのクラスのクロスオーバーモデル同様の乗降性、広さ、居住感覚が得られる。一方、MX-30はフロントドアを開けてからでないとリヤドアが開けられず(乗車時、降車時)、居住空間もCX-30よりやや狭くなる。



具体的には、身長172cmの筆者のドラポジ背後でCX-30は頭上に120mm、膝まわりに120mm。

MX-30は頭上に100mm、膝まわりに120mmと、ルーフライン形状によって頭上方向に関して不利になるのだ。さらにMX-30のリヤサイドウインドウは小さいだけでなく、開閉不可。やや閉鎖感ある居住感覚ということになる。後席エアコン吹き出し口があるのもCX-30のほうである。ゆえにMX-30はCX-30と比較すれば、ロングドライブ、長時間の着座には向いていないということだ。



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ラゲッジスペースもルーフライン、Cピラーの傾き加減が影響し、より広く使えるのはCX-30のほうだ。

具体的には、フロア幅の1000mmこそ両車同等だが、奥行、高さ方向はCX-30が上まわる。容量で示せば、MX-30が400リットル、CX-30が430リットルとなる。



マツダらしい走りに期待するならCX-30!

では、走行性能、というか、乗り味の違いはどうか。一般的なリヤドア、約60kg軽いCX-30は、さすがに今のマツダらしいやや硬めのしっかり感と心地よさを両立した、マツダ最新の走行性能、乗り心地に満足できるはずである。



一方、MX-30のマイルドハイブリッドモデルは走りに大きな特徴を持たない。ハイブリッドと言ってもモーター出力は6.9馬力、5.0kg-mと微小(マイルドのゆえん)のため、効果はスタート時の一瞬のアシスト、アイドリングストップからの復帰時の振動低減、変速時のスムースさとわずかな燃費向上ぐらい。

始動時からエンジンがかかるし、ストロングハイブリッドのようなハイブリッド感、モーター走行機能はない。CX-30のスカイアクティブGとドライブフィールはほぼ変わらず、車重が重いぶん、加速力もやや穏やかになるということでもある(とくにAWD)。



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MX-30の乗り心地は、18インチタイヤを履いていてもマイルド。段差越えなどでのショック、突き上げ感もよく抑えられている。CX-30から乗り換えて重心が微妙に高く感じてしまうのは、フリースタイルドアまわりの補強により、高い位置の重量が増しているからと推測できるが、それでも絶対的な安定感はCX-30同等に確保されているから、心配はいらない。より乗り心地が上質でしっとりしていて、重心感の低さあるMX-30を望むなら、重量物が車体下にあるAWDを選ぶといいだろう(上質な乗り心地、重心ベストバランスは床下にバッテリーを配置するピュアEVだが)。



いずれにしても、MX-30のマイルドハイブリッドモデルの走りは、”クロスオーバーモデルでもけっこうスポーティーに走れる”という従来のマツダらしさが薄められた、言ってみれば万人向けのテイストという印象になるだろう。



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というわけで、両車の選択はある意味、わかりやすい。どちらでもデザイン性に満足できることは必至だが、マツダらしい走りを期待し、ファミリーユースで後席を頻繁に使うならCX-30。カップルズカーとしてスタイリッシュなクロスオーバーモデルに乗りたいならMX-30もいい……ということだ。



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ちなみに後席にコートやバッグを置きやすいのは、観音開きドアのMX-30のほうだ。CX-30のヒンジ式ドアだと、リヤドア後端まで歩かなければならないのに対し、観音開きドアならBピラーもなく、フロントドアを開けた立ち位置から最小限の動きで後席に荷物を置けることになる。普段から、ラゲッジスペースに入れるまでもない手荷物をたくさん携えて1~2名でクルマに乗る人なら、MX-30は好都合!? かもしれない。



もちろん、マイルドハイブリッド、急速充電で実質180km程度のシティコミューター的一充電航続距離ではあるものの、ピュアEVが選べるのもMX-30の新しさ、価値ではある。個人的に一番好きなのは、もっとも今のマツダらしい走りを味わえる(MX-30 EVモデルを別にすれば)、CX-30のスカイアクティブ-Dモデルなんですけどね。