ダイナミックなスタイルからすると拍子抜けするエンジンも!
スポーツカーはパワーが命! そんなイメージがあるかもしれない。直線番長なだけでは真のスポーツ走行はできないという指摘もあろうが、実際問題としてパフォーマンスを得るためには、ある程度のパワーは必要だ。とはいえ、なかにはアグレッシブな見た目に反して扱いやすいエンジンを積んでいるスーパーカーもあったりする。
1)光岡オロチ
そうしたモデルのことを、ある種のリスペクトも込めて「ファッション・スーパーカー」などと呼んだりすることもあるが、その代表格といえるのが、光岡自動車が開発したオリジナルシャシーに、ダイナミックなボディを載せた「オロチ」だろう(2006年10月発表)。
どのモデルにも似ていないスタイリングのミッドシップ・スーパーカーだが、そのエンジンはトヨタから供給を受けた3.3リッター V6の「3MZ-FE」エンジンで、トランスミッションは同じくトヨタ車で採用されている5速AT。要は横置きユニットをそのままミッドシップに積むという構成だ。

そのV6エンジンの最高出力は233馬力。公道を走るぶんには、けっしてパワーが足りないというほどの数値ではないが、このダイナミックなスタイルからすると拍子抜けするレベルといえるのではないだろうか。
2)デロリアンDMC-12
同じく、量産メーカーからV6エンジンの供給を受けて生まれた世界的ファッション・スーパーカーといえるのが1981年に誕生した「デロリアンDMC-12」だ。

映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の劇中車としてタイムマシンに改造されたことで世界中にファンの多いデロリアンは、ステンレス製のガルウイングボディで、見ての通りミッドシップにエンジンを積んでいる。
ただし、そのエンジンはルノー・プジョー・ボルボが共同開発した2.8リッターV6 SOHCで、あくまで実用ユニットといった背景を持つ。最高出力は130~150馬力といったところで、トランスミッションも5速MTか3速ATだったりするのだ。とてもじゃないが、時空移動をできるほどのエネルギーを持っているとは思えない。

映画の影響があったとはいえ、デロリアンDMC-12は8000台以上の総生産台数を誇り、この当時のスーパーカーとしては、かなりの大量生産されたモデル。実用的なパワートレインを採用したことが、こうした人気につながったのかもしれない。
このように映画やコミックの劇中車として人気を集めたモデルのなかには、エーッと思うほどローパワーなスポーツカーもいたりする。最近でいえば、コミック「頭文字D」でヒーローとなったAE86スプリンタートレノはノーマルでは130馬力程度の出力だったりする。
パワーが控えめなスペシャルなエンジンを搭載したモデルも!
3)ロータス・ヨーロッパ
さて、1970年代に日本にスーパーカーブームを巻き起こしたコミックといえば「サーキットの狼」で決まりだろう。そのなかで初期に主人公が愛車としていたのがロータス・ヨーロッパだ。モデル後期に登場したヨーロッパ・スペシャルはフォードの1.6リッターエンジンにロータスのツインカムヘッドを組み合わせた、まさにスペシャルなエンジンを積んでいたが、その最高出力は126馬力に過ぎなかったりする。

さらに初期のヨーロッパが積んでいたエンジンはルノー製の1.5リッター 4気筒OHVで、その最高出力は82馬力でしかなかった。600kg台の超軽量ボディでロータスのシャシーということもあって稀代のコーナリングマシンであることは否定しないまでも、スーパーカーブームのど真んなかにいたロータス・ヨーロッパのエンジンがOHVでカタログ値でも80馬力少々という事実には驚いてしまうのではないだろうか。
4)ホンダCR-Z
最後に、ぐっと時代を現在に近づけて、2015年まで生産されていたホンダCR-Zを紹介しよう。ご存じのように、CR-Zは1.5リッターエンジンと薄型モーターを組み合わせたハイブリッドスポーツカー。トランスミッションにCVTのほか6速MTも用意したことで、ハイブリッドカーでも古典的なスポーツドライビングが楽しめると話題になった。

エンジンは可変バルタイ機構「i-VTEC」を採用したもので、そこに発進トルクに有利なモーターを組み合わせている。余裕の低速トルクとストレスなく高回転まで吹け上がるというスポーツカーに要求される、相反するキャラクターを両立していたのも特徴だ。

とくに後期型では出力特性に優れたリチウムイオン電池を採用。PLUS SPORTボタンを押すことでモーターアシストを瞬時に最大にするという制御も組み込まれ、電動アシストスポーツというCR-Zのオリジナリティを強調したのも記憶に残っていることだろう。
ただし、パワーユニットの最高出力スペックを並べると、エンジンが120馬力で、モーターが20馬力。