高速道路を走るバスはごく一部

新東名高速道路では指定最高速度120km/hのエリアが拡大している。その一方で、相変わらず大型貨物車であるトラックやトレーラーは80km/hの最高速度規制があり、速度リミッターも装備されている。そのため速度差に起因するさまざまな問題が指摘されることもある。



しかし、高速道路を走っていると同じ大型車両であってもバスは悠々と100km/h巡行しているのを見かけるだろう。前述した新東名であればバスは120km/hで走行するのは合法だ。



なぜ、大型トラックは法定速度が最高でも80km/hと規定されていて、リミッターが義務化されているのだろうか。一方で、なぜバスにはリミッターが不要とされているのだろうか。



トラックは80km/h! バスは最高120km/h! 同じ大...の画像はこちら >>



まず車両の分類でいうとバスは乗用車で、なおかつ高速道路を走っている数は少ない。こう書くと高速道路を利用する路線バスや観光バスがあるじゃないかと指摘したくなるだろうが、バス全体でいえば市街地を走る路線バスが多いのは事実だ。



もし、すべてのバスに速度リミッターを義務化すると、ほとんど高速道路を走る機会がないようなバスにまで後付けする必要が出てくる。道路運送車両法での分類ではバスのなかで細かな分類はなく、バス全体にリミッターを義務化することは現実的ではない。よって、バスは80km/h制限の対象から外れたという見方ができる。



バスの事故はトラックより少ない

もうひとつ、そもそも大型トラックにスピードリミッターが義務化された背景には、高速道路での追突事故が多いという統計的な事実がある。まず、高速道路での衝突事故というのはほとんどが追突事故である(逆走でもしない限り正面衝突はあり得ないので当然だ)。



なにしろ、トラックにスピードリミッターが義務化された以降のデータで見ても、トラックが起こした追突事故件数はバスのそれに比べて8倍程度となっているのだ。

逆にいうとバスは追突事故リスクが少ないためにリミッターが義務化にならなかったといえる。



トラックは80km/h! バスは最高120km/h! 同じ大型車なのに最高速度規制が違うワケ



また、重量面でもバスはトラックよりも有利だ。たしかに空荷の状態であれば大型トラックのほうが軽かったりもするが、大型バスはフル乗車でも15t前後なのに対して、大型トラックは最大積載時に車両総重量は25tになる。この差が制動距離に影響するのは言うまでもなく、そうした部分でもトラックのほうが追突リスクは大きく、そもそもの衝突被害を軽減するための速度というファクターを抑えておくというのは重要だ。



なお、バスには速度リミッターが義務化にはなっていないが、すでに継続生産モデルにも義務化されているAEBS(衝突被害軽減ブレーキ)に加えて、ドライバーモニタリングシステムなどを利用した各種の警報など安全対策は進んでいる。たとえばドライバー異常時対応システムのなかには、乗客が緊急停止ボタンを押すことで非常ブレーキをかけて、緊急停止させるシステムが実装されたりしている。



ちなみに、ドライバー異常時対応システムを搭載したバスは市街地を走っている路線バスにも搭載されている。こうした機能があるということは、クルマ好きであれば覚えておいて、ドライバーが意識喪失するような状態になったときには安全にクルマを止めるように行動したい。