この記事をまとめると
■FCVは水素を燃料に燃料電池スタックで発電し、その電気でモーターを駆動させるEV



■現在はトヨタMIRAIとヒョンデNEXOの2モデルが発売されているだけ



■燃料電池車がこれからどのように普及していくのかの明確な道筋はまだ見えていない



FCVは水素で発電してモーターを駆動させるEVの一種

「究極のエコカー」、そんなフレーズで一時、世の中の注目を一気に集めたのが燃料電池車だ。英語では、フューエル・セル・ヴィークル(FCV)と呼ばれる。いまさらながら、「燃料電池とはなにか」について一般的にはあまり知られていないと思う。

この燃料と電池というふたつの言葉から、技術的、そして具体的なイメージを持つのが難しいからではないだろうか。



実際には、水素を燃料電池に通すことで発電し、それを使ってモーター駆動させて走る仕組みだ。つまり、燃料電池車とは、水素を使い自車発電する電気自動車なのだ。ホンダは以前、クラリティを市場導入した際、FCVを「燃料電池電気自動車」と称していたこともある。



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燃料電池車について将来の量産化を目指して大きく進み始めたのは、いまから20年ほど前の2000年だ。アメリカのカリフォルニア州で、カリフォルニア・フューエル・セル・パートナーシップ(CaFCP)という試みが同州環境局を中心に始まった。



トヨタ、ホンダ、ダイムラー(メルセデス・ベンツ)、GM、フォード、ヒョンデ(当時はヒュンダイ)などが参加して、車両開発や水素インフラの研究などを共同で行うという自動車産業史の中で極めて稀なプロジェクトだ。



筆者は2000年代からカリフォルニア州でCaFCPを定常的に取材してきた。現在もCaFCPは存続しているが、2010年代以降は、自動車メーカー各社が燃料電池車の量産化、または燃料電池車の開発プログラムの休止を決めたことで、事実上、各社の共同プロジェクトという形式ではなくなった印象がある。



そうしたなかで、燃料電池車で大きな節目となったのが、2014年のトヨタ「MIRAI」の発売開始だ。



「究極のエコカー」は市販されているのに普及せず! 国の本気度が見えない「水素燃料電池車」の行方



これを受けて、国は2015年を「水素元年」と位置付け、それまで普及を進めてきた家庭用のエネファームに加えて、燃料電池車の普及促進を進めた。車両としては、「MIRAI」に次いでホンダ「クラリティ・フューエルセル」が登場したが、一方で日産は事実上、燃料電池車の関連事業を休止してしまった。



「究極のエコカー」は市販されているのに普及せず! 国の本気度が見えない「水素燃料電池車」の行方



さらに、ホンダもクラリティの商品改良を進めたが、現時点(2022年3月)ではモデルラインアップから燃料電池車は消えている状況だ。



究極のエコカー普及の道筋はいまだ見えてこない

そして、2022年、久しぶりに新規の燃料電池車として日本市場に登場するのが、ヒョンデ「NEXO(ネッソ)」だ。これにより、一般ユーザーが購入できる新車の燃料電池車は2代目「MIRAI」と「NEXO」の2モデルとなっている。



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では、なぜ燃料電池車は普及しないのか?



長年に渡り、燃料電池車に関する取材をしてきた者としていえるのは、国全体としての普及方法が中途半端だからだと思う。実際、2021年には国の有識者会議で、普及に対する目標設定とその実績に対する効果の測定が不十分であり、普及戦略を根本的に見直す必要があるとの提言がなされている。



国が2021年8月に公開したデータでは、日本での燃料電池車の保有台数は約6000台。

一方で、水素ステーション数は2021年8月8日時点で、全国に154カ所あり、そのほか12カ所で整備中だとした。



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いま、世の中は欧州での『グリーンディール政策』が基軸となり、グローバルで急激なBEVシフトが起ころうとしている。これに関連するかたちで、日本でも『2050年カーボンニュートラルを伴うグリーン成長戦略』が公表され、BEVや燃料電池車のさらなる普及に積極的な姿勢を示すとしている。



はたして究極のエコカー、燃料電池車はこれからどのように普及していくのか? 明確な道筋は、まだ見えてこない。