村上ファンド残党「エフィッシモ」MBO錬金術の不気味

       

 東証2部上場の新立川航空機と、同じく2部上場で不動産賃貸業が主力の立飛企業が、経営陣によるマネジメント・バイアウト(MBO=経営陣買収)を実施、旧石川島飛行機を前身とする両社が株式の非公開化後に合併することになった。
 これ自体は経済専門紙が小さく取り上げた程度の地味なニュースである。しかし、にわかに市場関係者が熱い視線を送っている。
 「あの村上ファンドの残党がMBOの仕掛け人である以上、御大の村上世彰さんの復活シナリオが現実味を増すのではないか」

 村上世彰氏が率いた「村上ファンド」は企業に真っ向勝負を挑む「もの言う投資家」として知られたが、本人は5年前、ライブドア堀江貴文社長(当時)とタッグを組んだニッポン放送株買い占め事件で証券取引法違反(インサイダー取引)に問われ、今年の6月に最高裁で懲役2年執行猶予3年の有罪が確定したばかりである。むろん、村上氏本人が今回の合併の件に関与しているという話ではないだろう。ただ仕掛け人と目されているシンガポールの投資ファンド、エフィッシモ・キャピタル・マネジメントを率いる高坂卓志氏は、飛ぶ鳥を落とす勢いだった村上ファンドで運用責任者を務めたツワモノなのだ。
 そのため同ファンドは「村上ファンドの残党」の異名があり、これまでにも狙った獲物を次々と仕留めるなど巧みなマネー錬金術を見せつけてきた。今回の件でいえば、新立川航空機株の21.68%、立飛企業株の16.24%を保有する断トツの大株主で、この両社とルーツを同じにする東証1部上場企業IHIの保有する株数を上回っている。
 「学研HDでは持ち株会社化に反対を唱え、これをテコに保有株を会社にそっくり買い取らせて見事に売り抜いたし、ダイワボウ情報システムでは親会社ダイワボウともども揺さぶりをかけ、堪りかねたダイワボウがTOB(株式公開買付)で完全子会社化を図ったドサクサに乗じて売り抜き、100億円近くを儲けている。そんな武勇伝を持つツワモノの“村上残党”から、あの手この手で揺さぶられれば、新立川、立飛双方が悲鳴を上げたのも無理はありません」(市場関係者)

 とはいえ、そこは何よりも世間体とプライドを重んじる上場会社である。両社社長を共同代表とする公開買付会社を設立し、新立川は1株5200円、立飛が1株6300円でTOBを行う総額800億円超のMBOを実施することで、対外的に“ファンドの圧力”をカムフラージュする奇策に打って出た。証券専門紙記者が苦笑する。
 「エフィッシモは昨年秋、立飛の新立川に対する株式持ち合いが会社法に定めた25%を超えており、立飛の株主総会での新立川の議決権が停止していた疑いがあるとして“親密すぎる株式”の持ち合い関係を槍玉に挙げ、会社側に非を認めさせた。こうなると、もう村上残党ペース。バカ高いTOB価格も彼らの要求に屈したからで、この発表を機に空前の株安下にもかかわらず両社株は連日のストップ高を演じている。昔から株の買い占めで最も難しいのがどう売り抜けるかの出口作戦ですが、このケースでは会社側が出口作戦を用意してくれたことでエフィッシモにはトータル300億円近い現ナマが転がり込む。正確な買値はわかりませんが、結構な利ざやを稼ぐはずで、これでは笑いが止まらないでしょう」

 そうなると、ホクソ笑むのはエフィッシモだけではなくなる構図だ。新立川株9.62%、立飛株10.09%を保有している、本来ならば“本家”のメンツを死守すべく村上残党と対峙すべき立場であるIHIだが、同社は早々にTOBへの応募を表明した。これに伴い当初200億円と予想していた来年3月期の当期利益を280億円に引き上げたのだ。同社の簿価からは「140億円」の売却益が出ても不思議ではないだけに、市場には「エフィッシモが揺さぶったお陰でIHIは結構なアブク銭にありつく。まさに他人のフンドシ」との冷ややかな声が燻っている。
 それにしても、なぜエフィッシモは数ある上場企業群の中から新立川、立飛を標的に選んで早くから買い出動し、今回の出口戦略に辿りついたのか。旧陸軍向け航空機の製造を行っていた両社は終戦後に連合軍から返還された広大な土地を東京・立川周辺に抱えている。その膨大な含み益に着目して先行投資したこと自体、「御大、村上さん仕込みの投資手法」と大手証券マンは指摘する。
 「多少の例外はあるにせよ、村上さんは銀座のデパート『松屋』など含み資産が大きく、将来の再開発メリットが大きい銘柄に集中投資した。その流れを汲むエフィッシモが、大化けの可能性をこの2社に嗅ぎ取ったということでしょう」

 新立川航空機はその社名とは裏腹に不動産賃貸業が主力で、立飛企業の主要業務と重複する。しかも根が同じで本社もお隣り同士。MBO成立後に非上場会社として合併すること自体に違和感が生じないのもムベなるかな…。
 「エフィッシモが大株主に名を連ねるセゾン情報システムズや日産車体、ナイガイ、テーオーシーなどに『次の標的』との観測が浮上していますが、それよりも不気味なのは村上さんの存在です。執行猶予中とあって対外的には全く鳴りを潜めていますが、完璧に足を洗ったとは思えず、暗に復活のタイミングを窺っているフシがある。標的企業は戦々恐々ですが、彼の復活を願うファンが市場には少なくありません」(情報筋)

 エフィッシモの設立は村上氏がインサイダー事件で“渦中の人”だった最中の'06年6月のこと。冷却期間を狙ったかのようなシンガポールへの疎開作戦だっただけに、残党の武勇伝を機に、その周辺が賑やかになりそうだ。

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2011年9月25日の社会記事

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