森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 アベノミクスの終焉

 財務省が、今年度の税収見積もりを下方修正する方針を決めた。その結果、今年度の税収が7年ぶりに前年度実績(56兆2854億円)を下回ることが確実となった。税収減の最大の原因は、企業業績の低迷から、法人税が振るわないと見込まれるためだ。

 安倍政権が発足した'12年度に43兆円だった税収は、その後、44兆、47兆、54兆、56兆円と、順調に拡大してきた。税収は、毎年のように当初見積もりを上回り、それを原資に補正予算を組んで景気を刺激したことも、経済の好循環を生む原因になった。
 税収が増えた大きな原因は、消費税率の引き上げだが、法人税も税率を大幅に下げたにもかかわらず、'12年度の10兆円から昨年度の12兆円まで、毎年順調に増えてきた。企業収益が大幅に増加していたからだ。

 ところが、その企業収益が減少に転じた。その理由は、二つある。
 一つは、円高の進行だ。'16年年初の為替は、1ドル=120円だった。それが一時期100円割れ寸前まで行った。その結果、輸出関連企業の業績が大幅に悪化してしまったのだ。
 円高の進行の原因は、日銀が追加の量的金融緩和を一度も打てなかったことにある。日銀が400兆円を超える国債を保有するにいたったことにより、買える国債のタマがなくなってしまったのだ。
 国債をどんどん買って、資金供給を増やすというアベノミクスの根幹が限界を迎えたということだ。現時点では、米国の利上げを織り込んでかなり円安に振れているが、トランプ大統領が正式に就任すれば、日本の金融緩和を強くけん制してくるので、再び円高トレンドに戻るだろう。当然、製造業の収益は伸びないことになる。

 企業収益が減少に転じた二つ目の理由は、消費不振だ。10月の「家計調査」によると、物価変動を調整した実質家計消費が、8カ月連続で前年同月を下回った。うるう年調整をすると、事実上14カ月連続のマイナスとなる。
 アベノミクスで経済のパイは大きくなったが、それは企業収益の拡大に回され、労働者には、ほとんど回らなかった。しかも、そこに消費税の引き上げを重ねたのだから、消費が失速するという当然の事が起きたのだ。
 消費税の引き上げ前、多くのエコノミストは、消費不振は3カ月で終わると言っていた。駆け込み需要で買い込んだ日用品や食料品は3カ月で食いつぶすからだ。ところが、'14年4月の消費税率引き上げ後、実質消費は13カ月連続のマイナスとなってしまった。そして、数カ月のプラスを挟んで、また、さらに14カ月連続のマイナスとなっているのだ。

 振り返れば、'97年に消費税率を3%から5%に引き上げた後、日本経済は'15年デフレに突入した。やはり、消費税率の引き上げは、日本経済に壊滅的な悪影響を与えることが、今回、改めて分かったのだ。
 すでに景気後退のリスクが高まっている以上、再びデフレに戻ることを警戒しなければならない。しかし、アベノミクスの根幹である金融緩和が封じられてしまうのだから、やるべきことは、たった一つしかない。それは、消費税率の引き下げだろう。

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