トランプ「対北二刀流」の正体

トランプ「対北二刀流」の正体
(提供:週刊実話)

 米司法省は5月9日、北朝鮮の「朝鮮松茸貿易会社」が所有する大型貨物船ワイズ・オネストを差し押さえていると発表した。

 同船が、国連の制裁決議に違反して石炭を輸出。75万ドル以上の代金を、北朝鮮の使用を禁じている米国内の金融システムを通じて受け取ったことが主な理由だ。

 米国が北朝鮮の貨物船を差し押さえたのは初めて。ベトナム・ハノイでのトランプ大統領と金正恩北朝鮮労働党委員長の2回目の首脳会談が決裂したことを受けた米国の“軽いジャブ”のように見えるが、北朝鮮にとっては一大事だという。

 「北朝鮮で2番目に大きいワイズ・オネストは、実質、朝鮮人民軍傘下の船で、外貨獲得に重要な役割を果たしていたからです。正恩氏の外交手腕に懐疑的な朝鮮人民軍の不満が爆発し、クーデターの引き金にもなりかねない事態なのです」(国際ジャーナリスト)

 それだけではない。この差し押さえは、正恩氏にとって「一族の恥」にもなるというのだ。

 「北朝鮮は、1963年に米国の情報工作船を拿捕。乗組員を釈放する条件として、米国からの謝罪を引き出した。その上で、押収した船を平壌の大同江に浮かべて博物館にし、米国がいかに姑息な国で北朝鮮がいかに偉大な国であるかを宣伝してきたのです。それが、今回は立場が逆になった。正恩氏のメンツは丸つぶれです」(同)

 一方で、米国の捜査当局は、今年2月にスペイン・マドリードの北朝鮮大使館を襲撃し、金正恩政権打倒を訴える団体『自由朝鮮』のリーダーであるエイドリアン・ホン・チャン氏を、4月29日に指名手配している。

 トランプ氏は、貨物船差し押さえで北朝鮮を追い詰めながら、敵対する組織のリーダーを指名手配して救いの手を差し伸べるという“二刀流外交”を展開しているのだ。これは、何を意味するのか。
 米国在住の日本人ジャーナリストが解説する。

 「北朝鮮の暗殺部隊が、ホン氏以下数名の『自由朝鮮』幹部の命を執拗に狙っているからです。今回の指名手配は“保護”の意味合いが強い。さらに、『自由朝鮮』の活動を米国がバックアップしているのではないかという疑惑を否定し、北朝鮮との対話続行を求めているという2つのメッセージが込められているのです」

 トランプ政権は『完全な非核化』と『全面的制裁解除』を一括合意する“ビッグディール(大きな取引)”を目指しており、あくまでも「ボールは北朝鮮側にある」とのスタンスを崩していない。

 「貨物船の差し押さえもホン氏の国際指名手配も、北朝鮮にボールを投げ返させるための戦略です。現在のトランプ政権の最大の目標は、来年の大統領選でのトランプ氏再選。北朝鮮問題がどちらに転んでも傷つかないように“二刀流外交”をしているわけです」(同)

 そんな中、5月4日の国営朝鮮中央通信が、正恩氏立ち会いのもと、同日に弾道ミサイルを試射したと報道した。

 発射されたのは、(1)ソウルを火の海にできる240ミリ多連装ロケット、(2)中国のAR―3型とほぼ同型の300ミリ多連装ロケット、(3)ロシア製の「イスカンデル(短距離弾道ミサイル)」とほぼ同型の3種類のミサイルだった。
「このうち(2)と(3)はいずれも新型兵器で、中国が’18年末から運用を開始した『北斗衛星測位システム』と、ロシアが’11年から運用している『グロナス衛星測位システム』を使って、命中精度を高めていることが注目されています」(軍事ライター)
 (3)に関しては、北朝鮮のミサイル試射活動を禁止した「国連安保理決議1695」に明らかに違反しているが、これまでのところ米国政府は対抗措置を発動していない。
「今回の新兵器は、米本土はもちろん、アラスカやハワイ、グアムなど、米国領を射程内にしていません。在韓米軍も、短距離弾道ミサイル攻撃の危険性は織り込み済みですから、米軍にとっても米国民にとっても取り立てて騒ぐほどのことではないのです」(同)

 ただ、このことは、トランプ政権の「北朝鮮のミサイルに対する考え方」を浮き彫りにした。

 「トランプ政権が問題視しているのは、米本土が直接攻撃を受ける『核弾頭搭載大陸間弾道ミサイル(ICBM)だけ』と明言したようなもの。裏を返せば、日韓を射程にするミサイルなら“問題はない”と表明した」(同)

 そのかわり、というわけでもないだろうが、米国は“本物”の威力を見せつけた。5月1日と9日に、「ミニットマンⅢ型(ICBM)」や、戦略原子力潜水艦が搭載する「トライデントⅡ(SLBM)」(いずれも弾頭は装着していない)を試射したのである。

 これが、両国の“おもちゃの見せ合い”で済まなくなる恐れもある。
「米朝関係以上に深刻な米国とイランの対立です。イランと蜜月関係にある北朝鮮は、『労働新聞』で、やたらとイランとの連携に言及している。北朝鮮の極端な外貨不足も考えれば、“北朝鮮の核技術がイランに渡る”という最悪のシナリオも警戒すべきです」(前出・国際ジャーナリスト)

 国際社会は、緊張感を持って北朝鮮を監視し続けなければならない。

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