森永卓郎の「経済“千夜一夜"物語」 ★手討ちにされた泉佐野市

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(提供:週刊実話)

 過去に高額な返礼品を提供したことを理由にふるさと納税の制度から除外することは地方自治法に違反しているとして、大阪府泉佐野市が国に対して除外決定の取り消しを求めた裁判で、大阪高裁は泉佐野市の請求を棄却する判決を言い渡した。私は、この判決は司法の自殺行為だと考えている。

 泉佐野市が2018年度に獲得したふるさと納税の税収は497億円と、ふるさと納税全体の1割近くに達し圧倒的トップだった。地元産にこだわらない豊富な品揃えの返礼品と返礼率の高さで人気を集めたからだ。

 そうしたやり方は制度の趣旨に反するので中止せよ、という総務省の行政指導に、泉佐野市が従わなかったため、政府は地方税法を改正し、昨年6月以降は、(1)返礼品の調達額を寄付の3割以下にすること、(2)地元産品を提供すること、という条件を明示し、このルールを守る自治体のみをふるさと納税制度の対象とすることにした。泉佐野市も、新制度の下では、ルールに従う方針を表明していた。

 ところが、総務省は泉佐野市を新制度の対象として認めなかった。過去の行状を理由に制度から外す「後出しじゃんけん」のようなやり方は違法だ、と泉佐野市は訴えたが、大阪高裁はそれを認めなかったのだ。

 そもそも税制というのは、抜け穴探しとそれを塞ごうとする当局のイタチごっこの世界だ。例えば、ビールでは1994年にサントリーが『ホップス』をヒットさせ、発泡酒ブームを巻き起こした。財務省は、2003年に発泡酒の税率を引き上げて対抗した。そこでビールメーカーは、第三のビールを開発して、増税回避に動いた。それに対して、財務省は’23年に第三のビールのカテゴリーを廃止して、発泡酒に統合する方針だ。

 さらに’14年には、サッポロが発売した『極ZERO』に対して国税当局が、第三のビールに当たらないとして、酒税の追徴処分に出た。これに対してサッポロは、追徴分を一旦納税したうえで、東京高裁で処分不当を訴えて係争中だ。構図としては、泉佐野市と非常によく似ている。

 ただ、決定的な違いは、財務省は、発泡酒ブームを作り出したサントリーや税逃れをしたと指摘しているサッポロから、酒造免許を取り上げるようなことはしていない。それどころか、税制の抜け穴を防ぐための増税変更などの制度改正は、ビールメーカーが必要な対策を取れるように、十分な期間をおいて実施している。

 対して総務省は、泉佐野市に法律違反がなかったにもかかわらず、ふるさと納税による税収獲得の道を無期限で閉ざしている。言うことを聞かない泉佐野市は無礼だから、制度の対象から外してしまおうということだ。これは、江戸時代の武士に認められていた「無礼な行動をした者は斬り殺して構わない」という「斬り捨て御免」の制度と同じである。ところが、大阪高裁は「総務大臣には広い裁量がある」として、総務省の行動を認めてしまったのだ。

 私自身も、泉佐野市はやりすぎたと思っている。ただ、それは総務省の作ったルールに穴があったから。その穴を突いた自治体を制度の対象から外し、全面降伏しない限り仲間外れにするというのは、「法治国家」の否定だ。

 泉佐野市は、最高裁に上告した。最高裁が法治国家を認めるか注目だ。

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2020年2月20日の社会記事

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