〈企業・経済深層レポート〉宿泊業界の再編サバイバル

 新型コロナウイルスの影響に苦しむ宿泊業界で、事業や施設を売却するケースが急増している。

 新型コロナ禍によるホテルの倒産や売却は、本州の最北に位置する青森も例外ではなかった。青森市の中心街で70年以上も青森国際ホテルを運営してきた老舗の「国際ホテル」が、5月25日に約16億円の負債を抱えて青森地裁に破産手続きの申請をしたのだ。地元の観光業関係者が明かす。

「同社の建物、土地は同じ青森市の城ケ倉観光が買収し、ホテルやレストランとして活用する方向と聞いている」

 地元の民間信用調査会社によれば、国際ホテルは戦後間もない1948(昭和23)年に開業。一般的なビジネスホテルと比較すれば、総客室数は67室と少ないが、そのぶんは宴会やレストラン、結婚式場の運営でカバーしてきた。

「しかし、最近は少子化によるブライダル市場の縮小で集客が伸び悩み、’13年3月期に約9億円あった売上高は、今年3月期は約7億円まで落ち込んでいた。そこにコロナ騒動でホテルは全館休業に入り、売り上げが激減、今回の破産手続きとなったようだ」(同)

 一方で土地、建物を買収した城ケ倉観光は’66年創業、県内にホテルやレストランを数軒持ち、ほかにも病院や福祉施設向けの給食事業を手がけるなど、幅広く事業展開する青森屈指の観光関連企業だ。地元の商工関係者が言う。

「国際ホテルから相談を受けて、アフターコロナを見据えた事業展開と地元貢献の両面から買収を決めたようです」

 この青森の例のように、コロナ禍で経営に行き詰まるホテルや宿泊業者は全国各地で急増している。東京商工リサーチの調べによると、6月2日現在、新型コロナ関連の経営破たんは全国で205件。このうち業種別では、最多が宿泊業で39件にのぼっている。宿泊業界の厳しさがうかがえる。

 中でも大型倒産は、「清潔でおしゃれ」をコンセプトに新たなカプセルホテル運営を目指していたファーストキャビン(東京)と、ホテルなど27施設を展開していたWBFホテル&リゾーツ(大阪)だ。

 4月に破産申請したファーストキャビンの負債は約37億円。民事再生法を地裁に申請したWBFホテル&リゾーツの負債は約160億円と、新型コロナ関連では、現状では最大規模の倒産だ。

 ホテル業界関係者がこう分析する。

「倒産は全国的にどの都道府県でも起きつつある。倒産の要因は、まず多額の資金を銀行からの借入金に頼ってきたことが大きい。そこにコロナだ。特に売り上げに大きく貢献していたインバウンド(訪日外国人観光客)は、この4月、前年同月比99・9%減(観光局調査)と激減した。加えて国内客も緊急事態宣言でガタ落ち。借金で体力を消耗していた企業に、コロナがトドメを刺したパターンが増えている」

 一方で、早くもコロナ終息後の先を見据え、同業者や異業種がホテルなどを買収する強気の展開も活発化している。

 例えば、国内屈指の星野リゾートだ。経営コンサルタントが明かす。

「星野リゾートと国内投資銀行のリサ・パートナーズがタイアップして、夏頃を目途に100億円規模の旅館ホテルファンドを設立するという。コロナで苦しむホテルや旅館などに資金や運営のノウハウを提供し、国内業界を支えていこうという試みだ」

 国や金融機関がフォローしきれない部分をカバーし、日本の宿泊業を保護しながら利益を上げようという攻めの姿勢だ。

 さらには学校法人が、コロナ禍で廃業したホテルを取得し、学校設置計画を進める例もある。医療系の東都大学を埼玉などで運営する青淵学園(埼玉県)は、新たに4年制の看護学部の開設を計画しており、キャンパスにふさわしい場所や建物を探していたという。学校関係者が明かす。

「その矢先に、ホテル沼津キャッスル(静岡県)の清算売却話に遭遇したようだ。同ホテルは’83年創業で総客室数は87室、そのほかに結婚式場、大会議場などを備えた中核ホテルとして、沼津市の振興にも寄与してきた。しかし、新型コロナの影響で利用客の中心だったインバウンドが激減、事業継続が困難視されていた。そこに注目した東都大学が建物などを検証したところ、大学に使えると判断してM&A(合併・買収)で取得に至ったようだ」

 宿泊業を襲う一連のコロナ禍について、不動産シンクタンク関係者が解説する。

「正直、宿泊業界はどこまで弱体化が続くのか読みきれません。コロナ終息まで程遠いにもかかわらず、国は夏に国内旅行補助制度を始めるというが、いったい何を考えているのでしょうか。ただ、今後も倒産が増え続ける可能性が高く、水面下で撤退する側と買い叩く側との激しい攻防が続くでしょう」

 そして、さらなる指摘を続ける。

「一時はコロナで身動きがとれなかった中国企業が、再び活動を開始している。不況にあえぐ国内ホテルの買収を活発化させているとも聞く」

 外資も入り乱れての宿泊業界の売買サバイバル合戦は、いっそう激しさを増しそうな気配だ。

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2020年6月17日の社会記事

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