常務横領事件でやぶ蛇 疼きだすドン・キホーテ安田会長の古傷(2)

       

 とはいえ、市場関係者からは安田会長への同情めいた声は聞こえてこない。なぜか。地場証券の役員が苦笑する。
 「彼自身、慶応ボーイのイメージとは裏腹に裸一貫で今日の富を築いた叩き上げの人物です。裏を返せば毀誉褒貶(きよほうへん)に富んだ人生を歩いてきたということ。ましてバブル時代には株式投資でガッポリ儲けたツワモノとあって意外と敵が多い。今回の横領事件にしても『あの御仁のことだ、この程度の被害額で済んだことに内心ホッとしているのじゃないか』と突き放す向きさえいるほどです」

 それもムベなるかな。安田会長は昭和48年に慶応大学法学部を卒業したとはいえ、在学中は荷の積み降ろしなどのアルバイトに明け暮れ、一時はプロボクサーを目指すなどの“伝説”を持つ。卒業後に就職した不動産会社も倒産。昭和53年には雑貨店「泥棒市場」を東京・杉並区で起業し、深夜営業が受けて成功した。
 昭和55年にドン・キホーテの前身となる「ジャスト」を設立、これを機にサクセス・ストーリーを歩んだといえば話は早いが、この間には埼玉県の浦和、大宮、更には東京・世田谷の店舗が連続放火に遭った。むろん、ドンキはレッキとした被害者である。ところが、ドンキでは以前から深夜営業を巡る近隣住民とのトラブルが絶えなかったこともあって、今回同様、市場からは同情めいた声はほとんど聞かれなかった。実際、今でもヤフーの掲示板には深夜営業を続けるドンキの駐車場周辺に若者がたむろし、近隣の住民が困っているとの悲痛な声が燻っている。
 しかし、世間から冷やかな視線を浴びようとも、安田会長は日本の流通業界を代表する実力経営者にのし上がった事実は揺るがない。何せ、米経済誌「フォーブス」は昨年1月、『日本の富豪40人』と題する特集を組んだ。その中で安田会長は37位にランクされている。

 順位だけに目を奪われてはいけない。驚くべきは、同誌がはじき出した資産額だ。邦貨換算で625億3500万円である。保有するドンキ株の時価や自宅の資産価値などから算出したのだろうが、46%まで買い漁ったオリジン東秀株をイオンに売却して得た巨額の利ざやなど過去の華々しいマネー錬金術をどこまでカウントしたか、となるといささか怪しくなってくる。長崎屋を始め、グループ会社だけで優に10指を超え、これらの企業群に対するオーナー会長としての出資比率を勘案すれば資産額はフォーブスの算出額を大きく上回っている公算が強い。
 「当然ながら稲村前常務は、安田会長の錬金テクニックを熟知している。しかも刑事告発の対象となる横領額にしても、会長の膨大な個人資産と比べれば微々たるもの。これで彼が腹をくくり、安田会長の秘密をばらそうものならどうなるか。安田会長がそこまで織り込んで彼を野に放ったのか、これはこれで見ものです」(流通業界関係者)

 果たして稲村前常務の横領事件だけで一件落着となるかどうか、関係者は早くも不気味な“次”を見据えている。

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2011年1月26日の社会記事

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