『日銀総裁人事』と題されたその“爆弾メール”は、ギョッとするような表現で始まっていた。
《僕の性格は異常であります。大阪維新の会出身の国会議員や中田(宏衆院議員)さん、山田(宏衆院議員)さん、東国原(英夫衆院議員)さんにお聞き下さい》
いきなり冒頭で自身を“性格異常者”と語る異様な内容。発信者は、日本維新の会共同代表の橋下徹大阪市長だ。2月末、日銀の新体制の政府案に賛同した維新の国会議員団を批判したところ、「橋下は口を出すな!」と一蹴されてブチ切れ、国会議員全員にメールを送りつけたのである。
《これから口は出しませんが、以後、維新の会には関わりません。皆さんで自由にやって下さい》
《口を出すなというなら、どうぞお好きにやって下さい。明日以後、そのように発信していきます》
維新を見捨てる覚悟を、橋下氏は冷たく書き連ねた。脅し文句とも取れる言葉を次々と並べられ、橋下人気にあやかる国会議員団に残された道はただ一つ。幹事長である松井一郎大阪府知事を間に入れ、橋下氏に“全面謝罪”するしかなかったのだ。
「橋下氏はメールを送りつける前に、あらかじめ松井氏に仲裁役を頼んでいました。つまり、シナリオありきで騒動を拡大させたということ。維新は自民党と公明党の連立政権に埋没気味でしたから、マスコミに取り上げられて目立つための話題作りだったのです」(維新幹部)
今回の騒動は、橋下氏が国会議員団からの反発を逆手に取って仕掛けた“出来レース”だったというわけだ。思えば、桜宮高校体罰事件の報道が、ちょうど一段落していたころに合致する。“お騒がせの天才”橋下氏の方が、何枚も上手だったのだろう。
ところが、橋下氏は表向き平静を装って和解をアナウンスする一方、周囲には“後遺症”の懸念を語っていたという。それは、橋下氏に「口を出すな!」と吠えたという人物の素性が響いているようだ。
「ズバリ、橋下氏を排除する発言をしたのは、維新の国会議員団で総務会長を務める藤井孝男衆院議員と、片山虎之助参院議員団会長です。橋下氏にすり寄り、何とか政治家生命をつないでいる旧太陽の党(=旧たちあがれ日本)のメンバーで、橋下氏が利用価値を認めているのは石原慎太郎共同代表だけ。金魚のフンのようについて来た古株の2人にバカにされ、橋下氏は我慢できなかったのです。ただ、橋下氏が自身のプライド以上に気にしているのは、石原氏が周辺議員をコントロールできなくなっていること。側近に対し『石原さんがグリップを利かせて旧太陽の増長を抑えなければ、維新は遅かれ早かれバラバラになる』と不安を漏らしたようです」(全国紙政治部記者)
旧太陽の面々は、昨年12月の衆院選直後あたりまでは、橋下氏に忠誠心を見せていた。こんな象徴的なエピソードもある。
「橋下氏は、衆院選が告示されてからもツイッターに何度も書き込み、公職選挙法に抵触する可能性が浮上しました。『党の考え方を表明しているだけ』と開き直りながら、街頭では『もしかしたら逮捕されるかも』とも語っていた。橋下氏にナメられた捜査当局は、立件しようと協議を始めていました。ここで動いたのが片山氏。大阪地検や大阪府警の幹部に接触して『橋下は候補者じゃないし、投票を呼びかけてもいない。今回だけ大目にみてやってほしい』と頼み込んで回ったようです。その甲斐があってか、橋下氏は“おとがめ”ナシで済みました」(在阪の全国紙社会部記者)
そんな片山氏が、手のひらを返すように反旗を翻しただけに、橋下氏が受けた衝撃は大きかったようだ。
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