アニマル&ホークによるザ・ロード・ウォリアーズが結成されたのは1983年。日本では第1回IWGP大会の決勝戦が行われた年のことであった。
“暴走戦士”の人気はたちどころに全米マット界を席巻し、それは当然のごとく日本にも波及する。
1985年の全日本プロレス初来日時、その圧倒的な勝ちっぷりにファンは度肝を抜かれ、時を待たずに熱狂に包まれた。
アメリカンフットボールのプロテクターに長い鋲をあしらったコスチュームを身にまとい、ブラック・サバスの『アイアンマン』にのせて花道を駆け抜け、ロープの下から滑り込むようにしてリングイン。そのまま試合に突入すると一気に相手を蹴散らして、コーナーポストからの合体ラリアット『ダブルインパクト』でフィニッシュ! トータルで3分かからぬことも多く、その試合時間は“分単位”でなく“秒単位”で伝えられた。
この衝撃は、以後のプロレス界に多大な影響を及ぼすことになる。一つは“ハイスパート・レスリング”の流行だ。
ハイスパートという言葉自体は昔からあって、主にフィニッシュ直前、技をたたみ掛けることを意味するものであったが、ウォリアーズはこれを試合の最初から最後まで貫いた。
日本でハイスパートというとまず長州力の名が挙がるが、維新軍を率いてその色を濃くさせていったのは'84年以降のことであり、歴史的にもその元祖はウォリアーズにあったといえよう。
顔面ペイントも、元祖とされる“東洋の神秘”ザ・グレート・カブキの場合は不気味さを表す覆面代わりであったが、ウォリアーズのそれは“ファッションアイコン”となり、今なおこれを真似るレスラーは後を絶たない。
そして最大の影響があの肉体…つまり、ステロイド使用による肉体改造である。ウォリアーズ以降はボディービルダーもかくやというような過剰なまでの筋肉を誇るレスラーが頻出することになった。
これは反面、その後のプロレス界にステロイド禍を招くことにもなった。当人たちもこれを免れることはできず、ホークは2003年、ステロイドの影響とみられる心臓発作のため早世している。
ウォリアーズ人気にあやかろうと大量のコピーレスラーが生まれたが、当然のごとくコピーレスラーがオリジナルを凌駕することはなかった。唯一、成功例といえそうなのが元WWF王者のアルティメット・ウォリアーだが、これも全盛といえる時期はわずか4年ほどにすぎなかった。
「ウォリアーズのギミックには構造的欠陥があるのだから、コピー選手が成功しないのも当然でしょう」と話すのは当時を知る全日関係者だ。
「秒殺で圧勝する姿がファンの関心を集めるのだから、プロモーターとしては彼らを負けさせるわけにいかない。だから“勝った負けた”のストーリーを作ることもできないし、かといって馬場さんや鶴田さんを見せ場なしに負けさせるわけにもいかないわけで…」
そのため、タッグ専門のチームであるにもかかわらず、最強タッグリーグ戦に参戦することもなかった。出場するとなれば、他の看板選手を叩きつぶす形で秒殺を重ねるしかないわけで、以後のシリーズを考えればそんなことができるハズもない。
「短時間の試合がウリになっていたから、それだとやっぱりメーンの試合を任せるのは怖いんですよね」(同・関係者)
それでもタッグマッチであれば相手側に“負け役”を配することもできる。あるいは場外乱闘を絡めて試合にアヤをつけ、反則やリングアウトという結末を用意することもできよう。
だが、シングル戦となれば毎試合そういうわけにもいかないわけで、プロモーターからすると実に使い勝手が悪いレスラーでもあった。
それでいて彼らが長く人気を保ち続けられたのは、やはりオリジナルの強みであり、また徹底して作り上げたギミックの優秀さがあってのことだろう。
その意味でも正しく“空前絶後”という言葉がふさわしいレジェンドといえるのである。
〈ザ・ロード・ウォリアーズ〉
ホーク・ウォリアー&アニマル・ウォリアーと、マネジャーのポール・エラリングにより1983年結成。初来日は'85年の全日本。以後、新日やZERO1にも出場した。ホークは'03年、心臓発作により死去。
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