本好きリビドー(64)

◎快楽の1冊
『子守唄』
カーリン・イェルハルドセン/木村由利子訳 創元推理文庫 1100円(本体価格)

 いつの間にか北欧のミステリーがよく邦訳出版されるようになった。かなり過去にさかのぼってみると、ミステリーの始祖エドガー・アラン・ポーはアメリカの作家であった。シャーロック・ホームズを生み出したコナン・ドイルはイギリスの人だ。これら2人の偉大な人物を引き継いでミステリーは主に英米で発展を遂げ、当然、日本に翻訳紹介されるときもこれらの国の作家が中心になっていたのだ。アガサ・クリスティー、エラリー・クイーンの名前は、ほとんどの日本人が知っているだろう。
 ところがここ数年の間に北欧産のミステリーも活発に訳され、多くの人に愛されるようになった。考えてみれば日本でもポーやドイルに触発されて数え切れない推理作家が誕生したのだから、この広い世界で各国が優れた書き手を生み出すのは当然なのだ。それがなかなか紹介されてこなかったのは英米中心の慣習に多くの人がとらわれ過ぎていたからかもしれない。
 本書『子守唄』の作者カーリン・イェルハルドセンはスウェーデン生まれである。〈コニー・ショーベリ警視〉シリーズの1作目『お菓子の家』は既に訳されていて、本書はシリーズ3作目である。母親と2人の子供が無残に殺された事件をショーベリと部下たちが解決しようとする。警察チームの物語である。しかし、今やジャンルとして定着した日本人作家の警察小説とは感触が違う。北欧ならではのカラーがあるのだろうか。
 ここで思い出すのがデンマーク出身の女性映画監督スサンネ・ビアだ。アカデミー外国語映画賞を得ているこの才人の作品はとにかく人間感情の繊細なところに迫っていく。先頃、新作『真夜中のゆりかご』が上映された。そう、ショーベリ・チームの刑事たちも実に繊細で優しい。これは北欧特有の作風なのか。読者も優しくなれるだろう。
(中辻理夫/文芸評論家)

【昇天の1冊】
 ジャンルは心理学に属するのだろうが、決して難解な本ではない。それどころか、ニュース等を騒がす性犯罪の加害者・被害者双方の赤裸々な声を聞くことができる著書、それが『性依存症のリアル』(金剛出版/1200円+税)である。
 編著者の榎本稔氏は、うつ病、アルコール・薬物依存や摂食障害など、“心の病気”に関する著作も多い精神科医。その榎本氏をはじめ数名の専門家が、当時者たちを綿密にヒアリングして1冊にまとめあげ、さまざまな事例を紹介している他、座談会形式の章もあり、読みやすい。
 取り上げている依存症は、痴漢・露出・ストーカー・小児性愛者・盗撮・下着泥棒など。こういった人たちが、一体どういった心境で犯罪等に走るのか、内面を解説した著書は多くない。
 また風俗通いマニアといった、男にとって決して無縁ではない題材や、セックス依存症を自称する女性たちも登場。背景にどんな問題が潜んでいるのか、心理面を明らかにしていくなど、いずれも興味深い。
 怖いのは、そうした性依存の心理が、犯罪に手を染めるほど重症ではなくとも、多かれ少なかれ、誰の心にもあること。
 アダルトビデオでは、今も痴漢やレイプ等を題材とした作品が少なくない。それらの映像に刺激され、次第に依存していくこともあるだろう。
 被害に遭った人たちの体験談を通じ、運悪く性犯罪に遭遇した後のメンタルケアにも言及している、硬派な社会派レポートという面もある1冊。
(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)

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