話題の1冊 著者インタビュー 椎名誠 『奇食珍食 糞便録』 集英社新書 760円(本体価格)

 −−本書には世界中の「奇食・珍食」と「糞便」事情が書かれています。なぜこれらをテーマに?

 椎名 世間はずいぶん長いことグルメ時代で、うまい物の話であふれかえっています。活字もテレビもそんなことを嬉々として語る人ばかりだけど、それと同じくらい大事なことを忘れていないだろうか? といつも思っていました。人間は平均1日に1人200~300グラムくらいの排便をするそうです。それを世界人口で計算すると、実に数百万トンになるそうで、これは大変なことではないでしょうか。この大問題をなんでみんなもっと書いたり、話したりしないのだろうか。1年間ではどのくらいか、地球1万年ではどのくらいになるかを考えると、頭が茫然としてきます。これが本書を書いた大きな動機ですね。

 −−一番インパクトが強かったトイレはどのような所がありましたか?

 椎名 日本が世界に誇れる物の一つに水とトイレ事情があります。今世紀、世界は水戦争の時代に入っていくと言われますが、日本は国土の中に2万5000本の川があるので、まず水には困りません。また、それと関連してトイレは多分、世界で一番きれいだろうと思います。よその国、例えばちょっと隣の中国へ行くと、いまだに全国土が俗にいう“ニーハオトイレ”だらけなんです。要するに仕切りもドアもない丸出しのトイレですね。中国には何度も行っているから慣れてはいるんですが、1988年に行った『日中共同楼蘭探検隊』の折に入ったオアシスのトイレは、丸出しのまま数十人の行列の前でやらねばなりませんでした。トイレが一つしかないから仕方なかったとはいえ、あれが世界最悪最凶の体験だったと思いますね。

 −−海外に行ったらぜひ食しておいたほうがいい絶品料理を教えてください。

 椎名 この本で書いたのは奇食珍食であって、ゲテモノ料理ではないんです。けれども世界の辺境の国々へ行くと、ヘビやトカゲ、アルマジロ、ワニ、サルなどをごく普通に食べているのを見かけます。それはそのエリアにそういう獲物しかいないからなんですね。ヘビを食っているなどというと、日本人は大騒ぎをするけれど、アジアの市場には必ず生きたヘビが5~6種類は売られていますよ。ある市場でコブラを唐揚げにしてフランスパンに挟んだ“コブラサンド”が売っていたんですが、食べてみるとシャキシャキして結構うまかったですね。もし、また訪れることがあったら、積極的に食べちゃうでしょうね(笑)。
(聞き手:程原ケン)

椎名誠(しいな まこと)
1944年東京都生まれ。作家。写真家、映画監督としても活躍。著作に『風景は記憶の順にできていく』(集英社新書)、『アイスランド 絶景と幸福の国へ』(日経ナショナルジオグラフィック社)など多数。

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