第48回衆院選が10日に公示された。街には候補者のポスターが貼られ、選挙カーが走り回っている。
そうした中、日本維新の党からの公認を受け、千葉1区から出馬した元フジビテレビアナウンサーの長谷川豊氏がウェブの一部で話題となっている。おそらく多くの読者は周知のことだろうと思うが、国会議員を決める需要な選挙を前に、改めて振り返っておきたい。
何より記憶に残っているのは、2016年9月19日付に掲載された「自業自得の人工透析患者なんて、全員実費負担にさせよ!無理だと泣くならそのまま殺せ!今のシステムは日本を亡ぼすだけだ!!」というタイトルのブログ記事と、その後の騒動だろう(該当記事はその後、「医者の言うことを何年も無視し続けて自業自得で人工透析になった患者の費用まで全額国負担でなければいけないのか?今のシステムは日本を亡ぼすだけだ!!」に改題されている)。
公開後、すぐさま批判が殺到した本記事だが、その後も長谷川氏は「余りの低レベルな言葉狩りに戸惑っています」、「繰り返す!日本の保険システムと年金システムは官僚から取り上げ民間に落とせ!」といった投稿を繰り返す。同月25日には「全腎協が私の抗議文を送ったそうだ。
当然、批判の声はなりやまい。結果的に長谷川氏は担当していた全ての番組を降板することになる。
また、降板前に出演していた東京MX『バラいろダンディ』の番組冒頭では、以下のような発言をしている。
「先日、私が自身の個人的なブログ内で書きました人工透析患者の方に関する記事にまつわりまして、大変多くの方々に多大なるご迷惑をおかけしております。大変申し訳ございませんでした。特に今現在、人工透析の治療を受けてらっしゃる患者の方々、そしてその方々を支えてらっしゃるご家族の皆様方、関係者の方々を深く傷つける表現をしてしまったことに関しては、全面的に私のミスです。本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです。心よりおわび申し上げます」
しかしこれは「深く傷つける表現をしてしまったこと」への過失を認めているのであって、ブログ記事の主旨に対する謝罪ではない。
その後、長谷川氏は騒動が収まった頃に、本件について言及するツイッターユーザーに対して「透析患者を殺せとは言っていない。
さらに今年2月におこなれた日本維新の会での出馬を発表した会見でも
「今冷静になって、しっかりとゆっくり休んで、改めて見たら、本当に自分が書いたのだろうかと疑いたくなるような驚くような過激な言葉と、余りにも一方的な文言が並び続けていました。言わんとすることは、客観的に見て全然わからないとまでは言わないんですけれども、幾ら何でも片方の温度感が強過ぎて、多くの方に偏見を与えかねない内容でした」(長谷川豊氏立候補会見(全文1)レギュラー8本なめんなよ、書いてないかも)
と述べている通り、長谷川氏は偏見を与えかねない「表現」を使ったこと、患者や関係者を傷つけかねない「表現」を使ったことに謝罪をしているのであり、誤った主張をしたわけではないと認識したままなのだろう。「自業自得で人工透析になった患者」への社会的対応を厳しくするべきとの持論は変わっていない(私がブログに「殺せ」と書いた理由 長谷川豊さんに聞く ※有料会員のみ閲覧可能)。ちなみに、引用した上述の記事のタイトルにもなっている「レギュラー8本なめんなよ」という記述は、「私のコラムの一部が歪曲して拡散されてますけど……」という題のコラムに確かに記載されていた。現在削除済みだが、検索をすれば簡単に見つけることが出来る。
これだけでも長谷川氏に議員としての資質があるのだろうかと疑問になるが、他にも長谷川氏は過去にこんな発言を繰り返している。
「…当然ですが、40や50を過ぎれば、様々な「能力」がどんどん劣化していきます。これは防ぎようのないことです。生物なのですから。判断力、思考力、記憶力。全部かなりの速度で劣化していきます。
「8割がたの女ってのは、私はほとんど「ハエ」と変わらんと思っています。などと言うと怒られるので、「一部の男性に群がる習性が強い」とでも言っておきましょう。
…(中略)…
いや、名誉のために言っときますが、2割くらいはちゃんとした女性もいるのであしからず(長谷川の個人的データ、参照)。
で、そのメスを何とか気を引いて、自分の種を植えたい連中がオスです。これをオスの「播種本能(はしゅほんのう)」といいます。1つでも多くの苗床に、自分の種を植えたいっていう本能ですね。
…(中略)…
それが男の本能です。女性陣にはその本能はないんです。なので気持ちが分からないだけ。僕らが生まれたばっかりの赤ちゃんを見てサルにしか見えないのと同じ。女性陣、可愛く見えるでしょ?あれが「母性本能(ぼせいほんのう)」です。逆に「播種本能」がなければ、ただの不健康なオスですから。ちゃんとそのシステムを理解して性欲処理を助けておかないと、風俗くらい行きます。そういうもんなんです。まぁ、女性陣から見れば、オス共も、「サル」にしか見えないでしょうが…」(マツコ総理・ミッツ防衛大臣にすれば、戦争は起きないという理論的解説(2015年9月14日掲載))
「究極なこと言いますと、オスとかメスだから話がこじれて戦争とかやっちゃうってのが真実なところなので、LGBT軍団が総理大臣になれば、戦争って起きないんですけどね。極論だけれど。マツコ総理。ミッツマングローブ防衛大臣、どう? 半永久的に戦争起きないけど」(同上)
長谷川豊は、自身のブログに駅頭で配布している3つ折りチラシをアップしている。そこに記載されている「5つの約束」にひとつは、
1 叩き直すべきは偏向するメディア まずはマスコミ改革を!
フジテレビで14年間、フリーになって3年半。偏向しているメディアの中で偏った情報操作が行われている現場を目の当たりにしてきました。多様な意見はあっていいのですが、日本はあまりにも視聴率・部数目的のニュースが多すぎます。しかもテレビの電波料は常識では考えられない安さ。マスコミは既得権益と化してしまっています。「周波数オークション法案」を提出しているのは日本維新の会だけです。
だった。
長谷川氏は「「長谷川氏は『ブログジャンキー』だったのではないか」と言う中嶋よしふみさんの指摘があまりに的を射ていて驚いた」という記事で、「僕は、個人的なブログである『本気論・本音論』というブログに、あまりに多くのPVが来ることに、とても気持ちよくなっていたのだと思います。中嶋さんの指摘する「ブログジャンキー」だったのだと思うのです。本来、あんなに尖った表現をする必要はありません。尖った表現の方が確かにPVは伸びるのですが、そもそも、そんなに戦う必要自体がありませんでした。でも、どんどん反応が大きくなって、とても気持ちよくなっていたのでしょう。僕の表現や言葉はどんどんエスカレートしていっていました」と書いている。あいかわらず過激な言葉を撒き散らしている長谷川氏は、このとき何を学んだのだろうか。
60歳以上は判断力がなく、8割の女性を「ハエ」だと考える長谷川氏を日本維新の会は公認し、その上、南関東ブロックで比例代表1位指名をしている。小選挙区で落選をしても、比例代表で復活する可能性があるということだ。希望の党の結成、民進党の合流、そして立憲民主党の立党などによって、奇しくも今回の選挙の争点のひとつに「多様性」が加えられたように思う。どの候補者が当選するか。有権者の態度が問われている。