みなさんは「SNEP」(スネップ)という言葉を聞いたことがあるだろうか。おそらく初めて聞く人もいるだろう。

「SNEP」(スネップ)とは、「Solitary Non-Employed Persons」の頭文字をとったもので、「孤立無業者」を意味する。この言葉の生みの親である東京大学社会学科研究所の玄田有史氏によるとSNEPの定義は以下である。

・ 20歳以上59歳以下である
・ 学生でない
・ 未婚である
・ 仕事をしていない
・ 普段ずっと一人か、一緒にいる人が家族以外にいない

仕事をしていないことから一見するとニートのように思えるが、ニートは15歳から34歳までの若年無業者である。一方、SNEPは若年者だけでなく中高年も含む。いわば、ニートの進化系と言ってもいいのかもしれない。玄田氏によると、2011年時点で、日本には約162万人のSNEPがいるとされている。

玄田氏は、論文「孤立無業者(SNEP)の現状と課題」の中で、「スネップは、男性、中高年、中学卒(高校中退を含む)ほどなりやすい」と述べている。

SNEPには男性が多いということだが、9月24日に放送されたNHK総合テレビ「あさイチ」によると、最近は女性のSNEPも増加しているという。

離婚や介護、転職をきっかけに女性のSNEPが増加

女性の場合、これまでも「家事手伝い」と称し、社会で働いていない女性は存在していた。SNEPという言葉が生まれたことにより、家事手伝いの女性がマイナスな位置づけをされているようにも思える。

さて、女性がSNEPに陥る原因であるが、離婚や介護、転職などをきっかけに孤立をし、引き起こされることが多いそうだ。

玄田氏は、女性SNEPの就業希望・就活希望に関して次のように述べている。

「その他の個人属性の影響としては、女性、高年齢者、高校中退を含む中学卒ほど就業希望と求職活動の両方に対して消極的になっている」(「孤立無業者(SNEP)の現状と課題」)

女性SNEPは、なかなかSNEPから抜け出せないのだ。では、なぜ、SNEPの女性は就業・求職共に消極的なのか。

「理由として、女性は男性に比べて一般的に良質な就業機会が制限されるため、仕事に就くことを断念する傾向が生まれやすいという解釈を行っている」(玄田有史「孤立無業(SNEP)について−世代問題研究機構」)

先進国にも関わらず、女性が働きにくい国とされている日本。産休・育休がきちんととれて復帰もできる会社や、短時間勤務制度のある会社は限られてくる。そのようなことを考えると、「どうせすぐ辞めなければならない」という思いが先行してしまうのかもしれない。

対策はアウトリーチと子どもの頃からの予防

SNEPから抜け出すには、就業が第一である。

しかし、就業する意欲が少ない女性SNEPは、一緒にいる家族が後押しをしてあげる必要がある。ときとして、家族以外の第三者に頼る必要もあるだろう。

玄田氏はSNEPの対策として、2013年5月31日の衆議院厚生労働委員会において、支援提供者が自らSNEPの元に足を運んでサポートを行う「アウトリーチ」の必要性や、SNEP防止のために子どもの頃からいろいろな人間に会って体験をさせることが重要だと述べている。

「ひきこもり」というと、一日中インターネットをやっているというイメージを抱く方も多いだろう。しかし、玄田氏の調査によると、「スネップは実際の交流が欠けているのみならず、電子メールや情報検索などインターネットの利用も少ない」(「孤立無業者(SNEP)の現状と課題」)という。

利用が少ないのは、メールを送る相手がいない、ネットで検索したいものすらないからである。

人と交流できる環境づくりがSNEP解決対策のひとつ

SNEPという言葉が与えられると、あの人の未来はSNEP予備軍なのではないだろうかと思える人が、筆者の知人に数名思い浮かぶ。

1人は中学時代の同級生で、途中で不登校になってしまった子。もともと体が弱く、学校を休みがちだったのが原因で勉強が遅れ、教師が気にかけてやっているところを見た他の生徒が『ひいきされている』と陰口をたたくこともあり、学校に来なくなってしまった。その後、高校生活もうまくいかずに退学し、アラサーである今現在も家にひきこもっている。

もう1人は、大学時代の先輩だ。人とコミュニケーションをとるのが苦手な性格で、就職活動がうまくいかず、内定が出ないまま大学を卒業した。

その後、数年間は働かず家で過ごしていたようだ。しかし、結婚を機に家庭に入って専業主婦となり、旦那さんの友人とも交流する機会が増え、孤立することはなくなったようである。

上記2名は34歳以下であるため、正式なSNEPではなくニートに近いが、未だに孤立無業中である前者の女性が今後、年をとってもニートから抜け出せずにいたら、女性SNEPに進化するであろう。後者の女性がSNEP予備軍から抜け出せたのは結婚が大きな理由だ。人と交流できるような環境がつくられることが、SNEPから抜け出す解決法のひとつかもしれない。

もしも、親しい知人がSNEPになってしまったら、積極的にその人と会って話をするだけでもSNEP卒業のきっかけになりそうだ。

また、自分がSNEPに陥ってしまわないためにも、家族以外の知人や友人とのつながりを日頃から大事にしていてほしい。

(姫野ケイ)