大河ドラマ『べらぼう』の舞台・吉原の現在…“聖地巡礼”トラブル回避のために気をつけるべきこと
NHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』の放送が今月5日から始まった。横浜流星さん演じる主人公・蔦屋重三郎(1750~97)は江戸・新吉原に生まれ、版元として活躍した人物。
東洲斎写楽や喜多川歌麿を見いだすなど、“メディア王”として成功を収めた。
物語前半の主な舞台となる「新吉原」(以下、吉原)があった場所は、現在の東京都台東区千束3~4丁目にあたる。ソープランドや民家が立ち並ぶこのエリアには、外から吉原の様子が見えないようS字に曲がった「五十間道」など、幕府公認の遊郭をしのぶ遺構が今も残る。
台東区の大河ドラマ活用推進担当者によれば、第1話の放送後から“聖地巡礼”に訪れるファンも増えてきているそうだ。

街に残る「遊郭」の面影

かつて吉原は「日本堤」という土手に接しており、ここに植えられた柳の木を遊郭帰りの客が名残惜しく振り返ったことから「見返り柳」と呼ばれるようになった。震災や戦災などで数代にわたり植え替えられており、現在は吉原大門交差点そばでその姿を見ることができる。
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もとは山谷堀脇の土手にあったという「見返り柳」

見返り柳から吉原大門に続く「五十間道」は今もS字に曲がっており、江戸の歴史を現代に伝えている。
蔦屋重三郎が20代で開業した書店「耕書堂」もこの通りにあったというが、跡地を示す看板が見当たらないのは「文献上では大まかな場所がわかっているものの、発掘調査を行ったわけではないため正確な場所の特定には至っていないから」(台東区・大河ドラマ活用推進担当者)。また、周辺の民家や店舗に配慮する意図もあるそうだ。
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五十間道からは、その先にある吉原の様子をうかがうことはできない

五十間道を抜けると、吉原唯一の出入り口だった「吉原大門」の跡が現れる。門は何度か建て替えられ、関東大震災(1923)で焼失するまで存在していた。
大河ドラマ『べらぼう』の舞台・吉原の現在…“聖地巡礼”トラブル回避のために気をつけるべきこと

吉原大門があった場所には現在、大門の柱を模した街灯が立てられている

大門跡のすぐそばには「吉原大門と耕書堂」という史跡の説明板が立てられており、蔦屋重三郎の足跡をたどることができる。
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説明板は昨年11月頃に立てられたという

吉原大門からまっすぐにのびるのが、吉原のメインストリートだった「仲之町通り」(冒頭写真)。
風俗店も比較的少なく、風俗街になじみのない人も歩きやすいだろう。
また、この通りには18日から蔦屋重三郎の「耕書堂」を模した施設が期間限定でオープンし、観光案内や土産販売を行っている。
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仲之町通りに面した観光施設「耕書堂」

仲之町通りを奥まで進んだところにあるのが「吉原神社」。大河ドラマで綾瀬はるかさんが演じる「九郎助稲荷」を含め、かつて吉原にあった5つの稲荷社が合祀(ごうし)されている。
大河ドラマ『べらぼう』の舞台・吉原の現在…“聖地巡礼”トラブル回避のために気をつけるべきこと

大河ドラマの効果か、参拝客でにぎわっていた

風俗街の“聖地巡礼”気をつけるべきこと

ここまで紹介したスポットはいずれも風俗店の少ない五十間道~仲之町通りに位置し、台東区の大河ドラマ活用推進担当者も「めぐっていただく場合はそこをメインにと思っている」と話す。
とはいえ、仲之町通りにも午前中から客・キャストを送迎する黒塗りの車が行き交い、店の前には黒服の男性が立っている。吉原に限らず、観光地でない場所にはいずれも共通することだが、写真撮影の際には写り込みを避けるなど、十分に配慮すべきだろう。
エンタメ作品の聖地巡礼をめぐっては、これまでも各地で訪れたファンと近隣住民・店舗の間でトラブルが発生してきた。
マナー違反がエスカレートする法的リスクについて、齊田貴士弁護士は次のように指摘する。
「正当な理由なく無断で私有地に立ち入れば建造物侵入罪が成立する可能性がありますし、仮に知らずに入ってしまったとしても、退去を求められたにもかかわらず従わなかった場合、不退去罪が成立する可能性があります。
また、そこが立入禁止区域であれば軽犯罪法違反となるおそれもあります。さらに、侵入した際に何かを壊し、そのものに財産的価値が認められた場合、器物損壊罪の成立も考えられます」
吉原には風俗店だけでなく一般の住宅も多く立ち並んでいるため、うっかり立ち入ってしまわないよう注意してほしい。

また、その他の注意点として、台東区の大河ドラマ活用推進担当者は「周辺には駐車場がないため、公共交通機関を利用していただけたら」と呼びかけた。


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