「KDDI」AI開発人材不足に対応 ベトナムの開発会社を子会社化

auを運営するKDDI<9433>が、AI(人工知能)活用の構想策定から開発・運用までを一気通貫で支援する体制づくりを進めている。

同社は2026年4月に、KDDIグループのAIインテグレーター(AI導入からシステム開発・運用までを支援する事業者)であるKDDIアイレットを発足させ、2026年4月1日時点の1698人体制から2029年3月までに3000人規模のエンジニア体制へ拡大する計画を掲げている。

こうした中、KDDIアイレットの子会社であるKDDIアジャイル開発センターが、ベトナムのソフトウエア開発会社Vietlinkを子会社化した。

KDDIはAIインテグレーション(AIの導入からシステム開発・運用までを一体で支援するサービス)を法人向けの成長領域に位置付けており、KDDIアイレットを中心に開発・運用体制を拡大する方針を示している。

今回のVietlinkの子会社化はこうした体制強化に沿った動きで、今後も海外を含めた開発人材や技術機能の取り込みが続く可能性がある。

Vietlinkを通じ開発力を取り込む

Vietlinkはホーチミン市に本社を置き、ソフトウエア受託開発やモバイルアプリ開発、ラボ型開発を手がける。

KDDIアジャイル開発センターとは長年、KDDI関連の開発案件で協業してきた。

今回の子会社化により、KDDIアジャイル開発センターのアジャイル開発(短い期間で開発と改善を繰り返す手法)の知見と、Vietlinkの開発力を組み合わせ、概念実証から大規模なシステム実装、運用までを一体で支援する。

また、ベトナムの優秀なエンジニア層を直接確保することで、国内でAI開発などに携わるIT人材の不足を補い、大規模・高難度なプロジェクトへの柔軟な対応が可能になる。

KDDIアイレットは、クラウド導入や運用に強みを持つアイレットを母体に、KDDIの営業・システムエンジニアリング機能の一部を統合し、2026年4月に発足した。

2026年4月1日時点のエンジニア1698人体制から、2029年3月までに3000人規模に拡大する計画を掲げている。

人材不足が体制拡充の背景に

企業で生成AIの活用が広がる一方、導入や運用を担う人材・ノウハウの不足が課題になっている。

帝国データバンクが2026年5月に公表した「生成AIに関する企業の動向調査(2026年3月)」では、生成AI活用に関する懸念・課題として「専門人材・ノウハウ不足」が41.3%に上った。

「情報の正確性」の50.4%に次いで高く、生成AIを業務に取り込むうえで、人材面の制約が企業の実務課題になっていることが分かった。

企業内で人材やノウハウが不足する中、AI導入からシステム開発・運用までを支援するAIインテグレーターの役割は大きくなるとみられる。

経済産業省も2025年5月に、今後のデジタル人材育成の在り方を議論する検討会の報告書をまとめた。

同報告書では、生成AIによる技術革新の加速や構造的な人手不足を背景に、いかにデジタル人材育成を加速させるかを問題提起している。

企業のAI活用支援に対する需要が高まる中、KDDIグループは海外の開発人材を取り込み、AI導入支援の供給力を高める。

成長領域へのM&A投資を積極検討

KDDIは、2026年5月に公表した2027年3月期から2029年3月期までの中期経営戦略で、AIを前提とした社会の到来を見据え、点検・監視や商品仕分け、顧客問い合わせなどの「AI労働力」や、生活相談、エンタメ、健康支援などの「AI生活力」を支える新事業の創造を打ち出している。

この成長戦略を支えるのが、携帯電話などの通信・インフラ事業だ。

同社は事業セグメントを3領域に再定義し、携帯電話などの通信・インフラを担う中核事業である「テレコムコア」が生み出す安定的な利益・投資原資を、成長が見込める金融や小売りなど個人向け周辺サービスの「パーソナルグロース」や、法人向けAIインテグレーションやサイバーセキュリティーなどの「ビジネスグロース」に再投資する方針を示している。

KDDIの2026年3月期のセグメント別の売上高は「au」「UQ mobile」などの個人向け通信サービスを中心とするパーソナル部門が4兆7555億7100万円で、全体の78.3%を占めた。

デバイス、ネットワーク、クラウドなどを提供する法人向けのビジネス部門は1兆2922億9800万円で、構成比は21.3%だった。

同期のセグメント利益は、パーソナル部門が8283億3700万円、ビジネス部門が2638億8400万円で、パーソナル部門はセグメント利益合計の75.2%を占め、携帯電話などの個人向け通信サービスが利益面の柱となっている。

今回のVietlinkの子会社化は、KDDIが重点領域に据えるAIインテグレーションの開発体制を補強する案件といえる。

AI関連の開発需要が拡大する中、KDDIにとって開発人材や技術機能を補うM&Aは、成長領域を広げるための有力な手段となりそうだ。

「KDDI」AI開発人材不足に対応 ベトナムの開発会社を子会社化
KDDIの売上高構成比

文:M&A Online記者 松本亮一

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