ゼロワンブースターキャピタル(東京都千代田区)は、温故創新の森NOVARE (東京都江東区)で国内スピンオフ・スピンアウト促進イベント「SPINX NOVARE 2024」を開いた。パネルディスカッションで東レ<3402>の首藤和彦副社長と同社発ベンチャー・MOONRAKERS TECHNOLOGIES(東京都中央区)の西田誠代表取締役CEOが登壇し、スピンオフの内幕を語った。
東レのスピンオフの基準
MOONRAKERSの西田代表は飛び込み営業を仕かけたユニクロとのフリースでの協業で成功を収めたのを手始めに、東レの自由闊達な文化の中で新規事業を立ち上げてきた。 しかし「事業者向けの素材供給が主力だった東レのBtoC(一般消費者向け)ビジネスの経験不足を痛感していた」(西田代表)という。
そこで自らが手を挙げ、消費者直販ビジネスのMOONRAKERSをスピンオフで立ち上げることになった。 西田代表は「失敗を恐れずにチャレンジし続けることが重要だ」と強調した。
一方、東レの首藤副社長は「わが社も三井物産が立ち上げた東洋レーヨンが始まりで、スピンオフ企業の走り。合成繊維、炭素繊維、水処理膜、電子材料、樹脂など、イノベーションを重ねながら新規事業を次々と生み出してきた」と説明した。
その上で「新規事業を社内で立ち上げるか、スピンオフして独立させるかを判断する際には、事業の性質や社内のノウハウ等を総合的に検討している。社内の人材やノウハウが不足する場合は、スピンオフして外部の人材やリソースを活用することで新規事業の成功確率を高めている」と語った。
失敗を恐れない企業文化
首藤副社長も「失敗を恐れずにチャレンジできる環境づくりが重要だ」と指摘。「東レでは50年かけて炭素繊維の開発をするなど、長期的な視点で事業を継続する文化がある。失敗しても諦めず、どうやったらできるのかを考え続ける会社だ」と明かす。
これを受けて西田代表は「成功への最速の方法が失敗を繰り返すこと。MOONRAKERSも立ち上げから2年間は苦しかったが、失敗から学び3年目に成功した。短期的な成功を求めない東レのスピンオフだからこそ出来たと思う」と振り返った。
東レはスピンオフを通じて社内の起業家精神の育成も狙う。MOONRAKERSの事例を社内に浸透させることで社内の自由闊達な社風をさらに強めて、新しいことにチャレンジしやすい環境づくりを進める方針だ。
東レからのスピンオフをロールモデルに
モデレーターの鈴木規文ゼロワンブースターホールディングス代表取締役は「スピンオフによる機会損失への懸念など、社内の反発はなかったのか」と質問。首藤副社長は「ないと言えば噓になるが、東レにはBtoCビジネスがほとんどない。わが社のリソースからどういうBtoCビジネスができるのかをチャレンジするためにもスピンオフは必要だった」と答えた。
西田代表は「むしろ私の事業をよく理解してくれた人ほど『社内でやってくれ』とスピンオフに反対していた。日本の大企業ではイノベーションが起こりにくいとの指摘もあるが、MOONRAKERSを国内大企業にとっての(スピンオフによる新規事業立ち上げの)ロールモデルにしたい」と意欲をみせた。
パネルディスカッション終了後は、参加者間の意見交換や、スピンオフ・スピンアウトに取り組む企業を10倍に増やすためのインキュベーションプログラム「SPINX10」参加企業から選ばれた10社によるショートピッチなどが行われた。
文・写真:糸永正行編集委員
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