金子三勇士がトップダンサー柄本弾といざなうバレエ音楽の世界
金子三勇士 ©Seiichi Saito

ピアニスト金子三勇士が夏休みの平日午後の音楽会に登場する。トーク付きの親しみやすいコンサートは「弾む♪ワルツ」と題して、バレエ音楽をたっぷりと。

ゲストとして日本を代表するバレエダンサー柄本弾を迎えるのも注目だ。



「柄本弾さんが何も踊らずにステージにいらっしゃるという、まさかのトークゲストでお招きします(笑)。もったいないと思われる方も多いと思いますが、私たちからするとむしろ、バレエと音楽、躍りとピアノを合わせる機会のほうが多いんですよ。私自身も何度となく経験があるのですけれども、ダンサーの方とは演目の中でご一緒する以外に、あまりお話しする機会がないんです。それをいっそのこと、お客様の前でおしゃべりしてしまいしょうというのが、今回の企画です。柄本さんとはこれが初共演なのですが、同じ1989年生まれ。

とてもお話が面白くて、お目にかかってこの企画に向けてお話しする時間も楽しんでおります!」



金子三勇士がトップダンサー柄本弾といざなうバレエ音楽の世界

金子三勇士、柄本弾、たぬ~ん ©JUNICHIRO MATSUO

自分でも、バレエを見るのが大好きだという。



「音楽に、言葉がなくて踊りだけが加わるという世界観がすごく好きです。もちろんオペラや歌舞伎の世界にも魅力がたくさんありますが、動きだけが加わっていくということに、想像を掻き立てられる楽しみがあります。本当にいいバレエの公演を見ると、言葉が聞こえてくるかのよう。その表現って、すごいですよね」



踊りと音楽。音楽家にとってもダンサーにとっても、切り離せない2つの芸術分野だという。



「私たち音楽家にとって、舞曲や踊りのリズムを意識しないことには、ほとんどの音楽作品の演奏が難しいと言ってもいいぐらいです。ピアノで初期に習う曲のひとつがバッハのメヌエット。メヌエットというのはもともと舞曲です。それがベートーヴェンのピアノ・ソナタになっても、ある部分には舞曲が入ってきたり、ロマン派のピアノ協奏曲でもワルツのリズムの楽章があったり。



柄本さんにお聞きしたら、ダンサーの皆さんは、ウォーミングアップでさえ、音楽を流しながらやるのだそうです。毎日の生活の中に、私たち音楽家が想像している以上に音楽があるんだなということを意識させられました。



面白いのは、たとえば私がピアノでバレエと共演する時に、“第3の解釈”が生まれることがあるんです。演奏者の音楽の解釈だとステップが間に合わないとか、途中で息切れしてしまうとか。そうするとそこで話し合って、ダンサーの解釈とも演奏の解釈とも別の、3つ目の解釈というのが生まれる。これがなかなか面白いものでして、その第3の解釈を経て音楽作品に戻った時、それまでの見方が全然違うものになっていたりということがあるのです。他の分野と交流したうえでしか得られないものがあるような気がします」



ゲストからさまざまな話題を引き出す巧みな話術と進行は、レギュラー出演するNHK-FM『リサイタル・パッシオ』の司会でもおなじみだ。



「私自身のスタイルでもあるのですが、年齢層だったり、全体の雰囲気だったり、なるべくその日のお客様の様子を見ながら、どんな話をしようか決めていきたいと思っています。

お客様とのちょっとしたやりとりの時間なども取れるといいですね。



これだけテクノロジーが発達した時代、燕尾服を着て出てきて、演奏して帰っていくだけでは、昔なら伝わっていたこともなかなか伝わりにくいのではないかと痛感しています。



でもそこで諦めてしまうのでなく、いろいろな工夫をして、元の芸術作品の形を崩さずにアプローチを変えることによって、音楽の魅力が多くの方に届けばいいなというのが私のデビュー当初からのポリシーなんです。それが、こういう豊かな芸術作品に触れるきっかけになればうれしいですね」



曲目にはチャイコフスキーの《花のワルツ》(くるみ割り人形)やプロコフィエフの《ロミオとジュリエット》などのバレエ音楽のほか、ショパンやサン=サーンス、ドビュッシーが並ぶ。ヴァイオリンの米元響子とチェロの上村文乃が共演。



「すべて実際にバレエ作品で使われている音楽です。

バレエ『レ・シルフィード』にはショパン《華麗なる大円舞曲》が、バレエ『椿姫』にはショパン《バラード第1番》が使われていますし、『瀕死の白鳥』というバレエはサン=サーンスの《白鳥》にまるまる1曲振付した小品です。昨年柄本さんが出演して世界初演された東京バレエ団の『かぐや姫』(金森穣振付)は全編がドビュッシーの音楽で、《月の光》も使用されていました。



米元響子さんと上村文乃さんとは初共演なのですが、表現の幅も格段に広がりますし、加わっていただけるのは心強いです」



音楽ファンがバレエの舞台を見に行きたくなる。バレエ・ファンはコンサートを聴きたくなる。互いの興味の幅の広がる、そんな交流の機会になりそうだ。



取材・文:宮本明



金子三勇士の「弾む♪ワルツ」
~名曲バレエ音楽の世界~

金子三勇士がトップダンサー柄本弾といざなうバレエ音楽の世界

■チケット情報
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2450811(https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2450811&afid=P66)



8月8日(木) 13:30開演
東京オペラシティ コンサートホール