『POPCORN DX 2025』レポート OwL、The BONEZ、ロットン、OATが観客と共に『POPCORN』15周年を大熱演で祝う
『POPCORN DX 2025 -POPCORN 15th Anniversary-』@CLUB CITTA’川崎 Photo:かわどう

Text:ヤコウリュウジ



横浜のライブハウスで2009年より開催されている個人イベント『POPCORN』が15周年を迎えたことを記念し、1月19日にCLUB CITTA’川崎にて『POPCORN DX 2025 -POPCORN 15th Anniversary-』を開催した。通常のライブハウスを飛び出す形としては、2020年に10周年イベントをKT Zepp YokohamaとF.A.D YOKOHAMAで開催を計画していたが、コロナ禍により断念。

そのリベンジとして2021年にガイドラインを踏まえた上で行って大成功を収めたが、制限がない中での大規模なイベントは今回が初となる。豪華なラインナップが顔を揃えたこともあり、チケットは早々にソールドアウトしたが、その期待感を超える大熱演が繰り広げられた。



開場して早々に駆けつけた観客をまず温めたのがお笑い芸人のゆってぃとWリーグや3x3といったバスケットボールの現場でMCとして活躍するライオンヘッドのモジャによるバリ3TVのDJ。スタンダードなナンバーを中心にプレイするだけでなく、軽快なトークに小ネタも交え、体も心も同時に緩めていく。開演まで常にいいムードを作り上げていた。



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OwL Photo:しゅんた

そんな高まった空気の中、まずオープニングアクトとして登場したのがリコ(b/vo)、たいよー(g/cho)、KABUKUN(da/cho)からなる新進気鋭のメロディックパンクバンド、OwL。満員の観客を前にしても臆することなく、開幕を告げる「Dazzling」から快活なサウンドを鳴らしていく。あくまでここは通過点、メロディックの未来は任せてくれ、という宣言通りのパフォーマンスだ。



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リコ(b/vo) Photo:しゅんた
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たいよー(g/cho) Photo:しゅんた

リコは華奢で小柄に見えるがパワフルでハリのある歌声を響かせ、たいよーはリフやソロを全身全霊で弾き倒し、KABUKUNもアガるビートを叩き出す。哀愁を漂わせながら疾走したかと思えば、スカへも移行する「Navel」ではダイバーも出現し、リコの呼びかけに「Road」ではシンガロングも発生。しっかりと自分たちの力を刻み込んでいった。



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KABUKUN(ds) Photo:しゅんた

本イベントは出演順が未発表だった為、ワクワクしながらステージ上のセッティングに注目していた観客の前に登場したのがThe BONEZ。

JESSE(vo/g)の厳かな歌から始まるアレンジが施された「Hey, You」から会場全体の熱気がとんでもない状態になっていく。「かかってこい、CITTA’」というJESSEの言葉、来いよ、というZAX(ds)の手招きもあったが、それだけじゃ説明できないほどの狂乱。The BONEZと観客にある連帯感はやはり凄まじい。



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ZAX(ds) Photo:かわどう

イントロからフロアでは大ジャンプが起こった「GIMCRACK」、盛大なコールに対して「全然聴こえねえぞ」とJESSEが煽り、強烈な音塊をぶつけていった「Love song」、すべてを引っ張り上げるエネルギーを感じさせる「Rusted Car」と激しいナンバーを続けていくが、何かを押しつけるようなモノはなく、そこにあるのは前を向くポジティブさと圧倒的な生命力。「命を捨てたくなったらライブハウスに来い」、「オレが寿命を分けてやる」というJESSEの言葉通りの光景ばかりが広がっていく。



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KOKI(g)  Photo:かわどう

まだまだ地震の爪痕が残る能登半島へ思いを馳せながら、聴く者の心に火を灯すどころか燃え上がらせる「New Original」を放ち、限界など知らぬとばかりに踏み込んだのが「Adam & Eve 」だった。全身をしならせながら弾きまくるKOKI(g)とT$UYO$HI(b)、ドラムセットがぶっ壊れるんじゃないかという勢いでショットを繰り出すZAX、フロア中央で観客の肩の上に立ち歌い叫ぶJESSE。



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JESSE(vo/g)  Photo:かわどう

完全なるクライマックス状態と言いたいところだが、ここで終わらないのがThe BONEZたる所以。しなやかさと重みを兼ね備えたポップチューン「Place of Fire」から互いに助け合う、共生を願う「Thread & Needle」へとつなぎ、締めくくりには代名詞的存在な「SUNTOWN」を投下。熱く激しく温かい、The BONEZだからこそのステージだった。



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T$UYO$HI(b) Photo:かわどう

そして、初っ端に「否が応でも暴れるしかねえぞ!」とN∀OKI(vo)が絶叫し、「秋桜」から助走なんていらないだろ、と猛烈なフルスロットルで襲いかかったのがROTTENGRAFFTY。ここに来たヤツらがついてこれないわけがない、とわかっているのだろう。

当然、前へ前へと詰めかけ、盛大なコールをステージへ向けていく。始まったばかりだが、渦巻く熱気はもはや終盤。そこへ「誰も知らないステップ踏む。お前だけのダンス見せろ!」とN∀OKIが、NOBUYA(vo)が「踊り狂え!」と大声を上げて投げかけたのが「D.A.N.C.E」。極彩色なダンスチューンで好き勝手に揺れるフロア。いつでもどこでも一瞬で自分たちの色で塗り潰せるロットンの力をまざまざと見せつけられてしまった。



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N∀OKI(vo)  Photo:かわどう

「POPCORN15周年。その想い、続けることの尊さ。今日は共に祝い散らかせ!」とアガるN∀OKIの前口上から放ったのが「ハレルヤ」。どこまでもヘヴィでド派手な曲であり、会場の床が抜けるんじゃないか、と感じるほどの揺れと熱を生み出すが、まだまだ止まらないのが常にライブバンドとして戦い続けているロットンの矜持であろう。



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MASAHIKO(g)  Photo:かわどう

おどろおどろしいギターリフから一気に開け、NOBUYAとN∀OKIがキレのいい歌声を放つ「世界の終わり」で観客をさらに焚きつけ、ダメ押しのように「STAY REAL」、「THIS WORLD」といったキラーチューンを惜しげもなくドロップ。NOBUYAから新年の挨拶として「全員、死ぬ気でかかってこい!」という言葉もあったが、その強烈すぎる愛のムチに観客もダイブと歓声で応え、会場全体が共鳴していく様が本当に素晴らしかった。



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NOBUYA(vo) Photo:かわどう

「さらけ出してきた。25年突っ走ってきても、全部が全部ムダじゃなかった。それを証明」とN∀OKIが語ってからプレイしたのが「アイオイ」。ドン底から這い上がったロットンの歩みと揺るがない志が投影されたような歌詞がグッとくるバラードを沁み渡らせ、攻めかかりながらバチッとダンスパートへと変貌を遂げる「銀色スターリー」から沸点のその先へと連れ去ってくれる超絶キラーチューン「金色グラフティー」と畳み掛けていくのだからもうたまらない。フロアは完全に大爆発し、人が人によって撹拌されているような状況になるのだが。そこでもまた挑発的な眼差しで歌い続けるNOBUYAとN∀OKI。“手付かずの未来”を手にするにはまだまだ満足してはいけないのだのだろう。そこからさらに「暁アイデンティティ」をバッチバチに食らわせ、すぐさま暗転というあえて余韻を断ち切るアプローチもまた良かった。



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HIROSHI(ds) Photo:かわどう
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侑威地(b) Photo:かわどう

大トリとして登場したのはOVER AMR THROW。横浜で続けてきたイベントの節目であり、そこは横浜のバンドが最後を務めるのがやはり美しい。このメンツで自分たちがトリなのはどうだろう、と口にする場面もあったが、主催者の想いをしっかり受け取り、まずは「S.O.G」からライブをスタートしていく。奥深い美メロを抜群の瞬発力で放てば、フロアは一瞬で大盛況。

OATの専売特許とも言えるサウンドを観客は全身で浴びながら、ここぞというタイミングで高く拳を突き上げ、シンガロングも巻き起こす。



鈴野洋平(b/cho)の歌声も絶妙なアクセントになっている「ZINNIA」ではフロアからの歓声はさらに大きくなり、コントラストを効かせた照明も曲のムードを後押しした「Spiral」と続いていくのだから、広がるのはいつものライブハウスの光景。この広いCLUB CITTA’川崎でも同様なのが何とも痛快だ。



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鈴野洋平(b/cho) Photo:半田安政

「15周年、おめでとうございます!」と鈴野がPOPCORNとの関わりを振り返りながら汗だくの観客を見て、「何、この荒れ果てたCLUB CITTA’!? もう何も残ってないでしょ?」と笑いを誘いつつ、「この荒れ果てた土地をもう1回耕して、肥料を加えて、そこに種を植えて、お花を頑張って育てようと思います」とユーモアを交えながら宣言するのもOATらしいところ。この変わらなさがうれしくもあり、頼もしくもある。



そして、曲に入ればバッチリと決めるのもOAT。鈴野のタイトルコールで会場中から歓喜の声も上がった「Shooting Star」では疾走するビートでドラマティックなメロディーを響かせる。イントロのカウントに観客が大きな声を合わせ、スタートからバースト気味なテンションで駆け出した「Dessert Window」、寺本英司(ds/cho)の掛け声から突入したクライマックスの畳み掛け方が際立っていた「Mr.know-it-all」と惜しげもなくキラーチューンを連投。体力ゲージも残り少ないはずの観客も我を忘れて没頭していく。



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寺本英司(ds/cho) Photo:半田安政

また、印象的だったのがここでの鈴野のMCだ。普段と同じく、軽妙な語り口ではあったのだが、自らの嗜好を話しながら「自由っていうのはここにいる全員がそう思わないと成立しない」と語っていく。互いを受け入れて尊重し合うことで生まれるのが自由。

ライブハウスは自由な場所だ、とはよく言われるが、その奥にある芯の部分を改めて確認できた瞬間でもあった。



中盤から終盤にかけては圧巻の6タテ。心浮き立つリズムに合わせて観客は肩を組み、大きな輪を作った「Rotation」、絶妙な間を開けながら鈴野、菊池、寺本とフレーズを重ねていき、心の底から暖かくなる高揚感を生み出す「TONIGHT」と続け、グッとライブを引き締めたのがギターのフィードバックノイズからゆったりと響かせたミドルバラード「BLUE」だった。平和への願いを込めたこの曲、歪んだギターや、適度な強度のドラムが深く響くニュアンスを作り出していく。



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菊池信也(vo/g) Photo:半田安政

そこから菊池が呼吸を少し整え、盛大に歌い上げて始まったのが代表曲のひとつでもある「Dear my songs」だった。切なくも温かい菊池の歌声に身を委ねながら、感情を開放するように拳を突き上げる観客。その気持ちを受け止めるように一瞬立ち上がった寺本の姿はとても熱いモノを感じるポイントにもなった。そこから改めて鈴野が「15周年、おめでとう!」と絶叫し、共に行こうと「Across the fanfare」を大きなスケール感で鳴らし、間髪入れずにプレイしたラストナンバーは「All right all wrong」。自由を歌うこの曲で見事なフィナーレを飾ってくれた。



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OVER ARM THROW Photo:半田安政

それぞれのバンドが全力でぶつかりあったイベントらしく、アンコールはなし。再びゆってぃとモジャが姿を見せ、すべての出演者とスタッフに大きな感謝を、と呼びかけ、割れんばかりの拍手が巻き起こる。その拍手の大きさがこのイベントの成功を物語っていたに違いない。



<公演情報>
『POPCORN DX 2025 -POPCORN 15th Anniversary-』



2025年1月19日 CLUB CITTA’川崎
出演:The BONEZ / OVER ARM THROW / ROTTENGRAFFTY / 【OA】OwL / 【DJ】バリ3TV



【セットリスト】
●OwL
1. Dazzling
2. Morning
3. Uzu
4. Navel
5. Run
6. NAVY
7. Endless Freedom
8. Shooting



●The BONEZ
1. Hey,You
2. GIMCRACK
3. Love song
4. Rusted Car
5. New Original
6. Adam & Eve
7. Place of Fire
8. Thresd & Needle
9. SUNTOWN



●ROTTENGRAFFTY
1. 秋桜
2. D.A.N.C.E.
3. ハレルヤ
4. 世界の終わり
5. STAY REAL
6. THIS WORLD
7. アイオイ
8. 銀色スターリー
9. 金色グラフティー
10. 暁アイデンティテイ



●OVER ARM THROW
1. S.O.G
2. ZINNIA
3. Spiral
4. Shooting star
5. Dessert Window
6. Mr.know-it-all
7. Rotation
8. TONIGHT
9. BLUE
10. Dear my songs
11. Across the fanfare
12. All right all wrong



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