「銀座に来てから、お客様以外の男性とは肉体関係を持っていません(笑)」銀座高級クラブのママが毎年、過激写真集を発売している理由
「銀座に来てから、お客様以外の男性とは肉体関係を持っていません(笑)」銀座高級クラブのママが毎年、過激写真集を発売している理由

華やかさと高級感にあふれ、格式の高い街として知られる東京・銀座。今年8月に戦後初のフレンチレストランとして名高い「銀座エスコフィエ」が経営難で廃業した一方、数寄屋橋交差点に面したソニービルが「Ginza Sony Park」として新しく開業する予定があるなど、昨今の銀座には大きな変化が訪れている。

そんな中、「これまで見かけなかった地方のキャバクラチェーン店が、次々とオープンしています」と語るのは、この街の移り変わりを40年にわたり見つめてきた銀座の高級ナイトクラブ『ル・ジャルダン』のオーナー・望月明美さん(59歳)だ。

変わる銀座の街と客層

大学入試で上京し、19歳で洋服ほしさに始めたスナックでのバイト経験を経て、20歳で銀座で働き始めた望月明美さん(以下、望月ママ)。大型店を3店舗ほど経験したあとに、31歳で高級ナイトクラブ『ル・ジャルダン』を開業。

その後、銀座で次々と店舗を拡大し、今年10月には7店舗目をオープンする予定だという。

「今の夜の銀座では、お店の入れ替わりがとても早くなっています。昔は銀座8丁目の名の通った超一等ビルに店を構えるには、厳しい審査を通過する必要がありました。店の格式やママの経歴なども審査されるので、たとえ潤沢な資金があっても、簡単に借りられるものではなかった。

でも最近は、ビルのオーナーが替わったことも影響しているのか、有名ビルとされる大型テナントに地方のキャバクラ店が入ってきています。これは、ひと昔前では考えられなかったことです」(望月ママ、以下同)

また店舗だけでなく、銀座に来る客も変わってきているという。

「もちろん、今でも東証プライム市場やスタンダード市場に上場している企業のお客様はいらっしゃいますよ。その手のお客様に機転の利く女の子をつけて、商談を転がす……なんて銀座ならではのシーンも見られなくはないです。

でもコロナ禍以降は、新興富裕層というか、ジーパンやサンダルのようなラフな格好をした『いったい何をしてこんなに稼いでいるの?』というお客様もいらっしゃいます。以前までのスーツ姿のお客様で溢れていた銀座と比べると、クールビズや服の流行もあるのでしょうけれど、ちょっと信じられない状況です」

ル・ジャルダンだけに限らず、銀座では客からもらった名刺からご挨拶のお手紙を送る習慣があったが、最近ではそのような挨拶を辞退する客も増えているという。

「20~30年くらい前までは超有名な会社へも着物姿でプレゼントをお届けすることは一般的な営業活動でしたが、最近ではそれを辞退されることはもちろん、宅配便で贈り物を送ることさえも嫌がられるお客様が増えました。銀座は夜の秘書室だと誇り高く感じていたのですけれども、寂しい限りです」

一方で「お名刺をインターネットで検索すると、たしかに会社やその方のお名前は出てくるのに、《あて所に尋ねあたりません》のスタンプが押されて郵便局から手紙が戻ってくる不思議なこともあります」と望月ママは笑う。

詐欺などで手にした金銭をもとに、クラブやキャバクラで豪遊するが犯罪者がいるのは世の常だが、ル・ジャルダンにもかつてそのような客が出入りしたことがあったそうだ。

お店のアピールのため写真集&映画を制作

その昔の銀座は、大企業の名刺を携えてやってくる客ひとりにホステスが3人もつけば簡単に商売ができたものだったという。だが、今はどの企業も接待費に厳しくなっているのが現状だ。だからこそ、これまでよりもホステス集めや店のイメージ戦略にも苦労しているという。

「銀座の街全体が“銀座株式会社”だとしたら、その中に“ル・ジャルダン支店”や“クラブ〇〇支店”といった支店があるイメージで、今も昔も変わらず支店同士で女の子を引き合っています。だからこそネットが発達した現代では、SNSにも力を入れていますよ。

あとは毎年、店の人気キャストと、恥ずかしながら私も加わって下着写真集『ル・ジャルダン写真集』を発売しています。来店されるお客様やそうでない方も、ホステスたちの写真というのは印象に残るのではないかと思いまして。

今回の写真集テーマは“だんだん脱いでいく”なのですが、写っているドレスや下着は、ホステスたちの私物です。これもお客様にル・ジャルダンというクラブの名前を覚えていただきたい一心です」

ホステス志願の女性たちの中には、自身のSNSで自ら水着やセクシーな姿を披露している女性も多い。写真集は2016年から毎年のように発売しているが、女性たちの脱ぎっぷりは年を追うごとに露出が激しくなっているという。

さらには写真集にとどまらず、今年10月公開予定の映画『ル・ジャルダンへようこそ』も制作したそうだ。

「私はもともと漫画家志望でネタを得るために銀座入りしたのに、その志は店を持つことにシフトチェンジしました。でも描きたい思いはずっとあり、15年前から銀座で起きた実話をもとにした小説を書き、それが3冊の本になりました。

今度は映像化したいと考えつくったのが今回の映画です。当店には舞台で活動する俳優志願者のホステスもおり、そんな子たちへのプレゼント的な意味もありました。映画には、お店のホステスたちはもちろん、川﨑麻世さんをはじめ、秋吉久美子さんや中山秀征さん、鈴木砂羽さんにも友情出演していただきました。

過去に映画をつくった銀座のクラブのママはいません。ホステスたちが『おもしろい試みをするママのもとで働きたい』と思ってくれることを期待してつくった、という側面もあります」

映画はル・ジャルダンで起きた実話を元につくられており、主人公・舞子は俳優で元グラビアアイドルの清瀬汐希が演じている。劇中では肌を限界まで曝け出しての体当たりの濡れ場も描かれているが、実際にホステスと客が一夜を共にすることはあるのか。

「何を隠そう私自身、20歳で銀座に来てから、お客様以外の男性とは肉体関係を持っていません(笑)。ホステスとしてお仕事していると、銀座でお酒を飲む大人の男性の格好よさの虜になったとも言えます。

今の若いホステスにも実際にそういったこともあるでしょう。

ただお店のホステスたちには、それを勧めませんし、常日頃から『嫌なことはしなくていい』と口を酸っぱくして言っています。

新人のホステスさんの中には、肉体関係を持てばお店に引っ張れると勘違いしてしまう子もいたりしますけれど、決してそんなことはありません。銀座のお客様は、お金目当てのエッチがほしいわけではなく、銀座だけで見られる夢を欲してらっしゃるのだと思います」

過去、望月ママを襲ったさまざまな金銭トラブル

映画には、ママ役を演じる俳優・元グラドルの小松みゆきが、コロナ禍で店が経営難に陥ったことで客に資金を無心するシーンもある。リーマンショックやコロナ禍など数多くの不景気を銀座で乗り越えてきた望月ママ自身にも、同じような経験はあるのだろうか。

「正直、コロナ禍は銀座歴40年で初めて銀行の融資を受けられたこともあり、“最悪の事態”ではなかったですね。絶体絶命のピンチをいくつか挙げるとしたら、一度目は31歳で店を開業して、初めての出産を経験し、そのあと娘が生後11ヶ月で亡くなったとき。

悲しみに暮れて3週間ほど店を休んでいたら、ホステス30人が一気に引き抜かれてしまったんです。二度目は、税務署の調査が入り、追徴課税6000万円を取られたとき。三度目は黒服とホステスが結託し、数千万円を持ち逃げしたときです。

それ以外にも、人気ホステスを引き抜いたものの、結局その子が抱えていた借金を肩代わりしただけだったこともありますし、バンス(前渡し金)を渡したあと逃亡されたこともあります。それでも、一度もお客様に資金を無心したことはありません。無心しないでも、今まで何とかぎりぎりにも生き残れたことに感謝しています」

望月ママは結婚・出産に関して「一回目の結婚はスナックのマスターで、20歳で結婚してすぐ離婚しました。

31歳で娘を出産し死別し、その後、2人の娘を未婚で産んでいます。どちらも結婚するつもりでお付き合いしていたのですけれど……。お客様を見る目には多少の自信はあっても、男を見る目はないのかも」と笑いながら話してくれた。

今年10月に7店舗目をオープンする望月ママに、今後の野望についても聞いた。

「実は、今回の映画は実話誌みたいな男性向けの作品になってしまっていて、私が想像していたものと少し違う仕上がりになっているんです(笑)。なので、もう少し女の子向けの、女の子が銀座に夢を抱けるような映画を作りたいと思いました。

あと、個人的には還暦になったらヌード写真集に挑戦したいんですが、それは店のスタッフたちに止められています(笑)」

 夜の銀座を支えてきた女性や店舗、接待文化などは、これからも時代とともに変わっていくだろう。それでも、この街が持つ格式高い大人の魅力が失われることはないはずだ。

取材・文/河合桃子
集英社オンライン編集部ニュース班

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