
「隗(かい)より始めよ」。人に言いつける前に自分が積極的に着手せよ、という意味だが、この言葉を皮切りに所信表明演説を行った東京都の小池百合子知事が打ち出したのが、来年度からの“週休3日制”の導入だった。
東京都が“週休3日制”導入へ
「『隗(かい)より始めよ』
フレックスタイム制を活用した週休3日、子育てと仕事の両立のために新たな部分休暇など、より柔軟な働き方を可能とする制度を来年度から導入することとしました」
今月4日、東京都の小池百合子知事が都議会の所信表明演説で、女性が出産や育児などでキャリアを諦めないようにするため、新たな働き方改革の一つとして挙げたのが、来年度からの“週休3日制”の導入だ。
都によると、4週間で155時間の労働時間を確保すれば、土日に加えて週にもう1日休みを取得できるようにフレックスタイム制の運用を変更するという。例えば、週5日勤務の場合は1日7時間45分働くことが必須だが、月~木曜日まで1日10時間弱働けば、金曜に休みを取得でき、週休3日にすることも可能になるという制度だ。
茨城県は今年4月、千葉県も今年6月に都と同様にフレックスタイム制を活用し、週休3日が可能な働き方を取り入れた。千葉県では制度を利用したことのある職員は11月1日までに150人にまでのぼったという。千葉県庁の担当者は制度改正についての取材でこう語る。
「職員のライフスタイルや仕事への価値観が多様化する中で、より柔軟な働き方を推進していこうと導入しました。現在、週休3日制について職員にアンケートを実施していますが、『自分のライフスタイルに合わせて割り振ることができたので働きやすくなった』など好意的な意見がほとんどです」
都は民間企業に先んじて導入することによって、都内の企業を中心に全国に広げたい考えだが、SNS上ではさまざまな意見があがっている。
元青汁王子〈こんな景気悪いのに〉
まずは“週休3日制”に賛成の意見。
〈健康的で文化的な生活を送るには週休3日の休みが必要〉
〈ホワイト企業やお役所だけの改革で終わらずに、フルタイム労働に耐えられない、体や心や立場の弱い人にも行き渡ったらいいのにな…〉
〈選択肢が増えるのは素晴らしい。大切なのは、それぞれの生き方や働き方を選べる社会。一律のルールで縛るのではなく、個人の価値観を尊重できる仕組みが生まれれば最高!〉
〈週休3日制だと常に「休み明け」か「休日前」が実現するので、モチベ下がらずに仕事ができるという話、いつまでも広めていきたい〉
喜びの声があがる一方、反対や疑問の声も散見された。
元「青汁王子」こと実業家・三崎優太氏は、自身のXを更新し、
〈素朴な疑問なんだけど、こんな景気なのに週休3日とか休んでる場合じゃなくない?〉
と疑問の声を呈した。
〈ただでさえ役所が17時で閉まっちゃって、普通のフルタイム勤務者は手続きで苦労してるのに、週休3日とか実施できるくらい余裕あるなら、人員減らして税金返してほしい〉
〈最低賃金1500円、週休3日、残業なし。これに耐えられる企業なんてないだろ。みんな潰れて、みんな無職になるわ〉
〈聞こえはいいが…週40時間の労働時間は変わらない。これでは真の週休3日制とは言えない。これだけ勤勉に働く日本でも、どんどん世界から経済的においていかれる〉
〈残業扱い時間が減るので結果的に手取りが減る人が増える可能性も…〉
と、「隗より始めるのは週休3日制度導入じゃない」という意見や、景気の低迷や人手不足など昨今の現状を鑑みて、「現実的に導入するのは難しい」という意見もあった。
さらには、
〈どうせ浸透するのは公務員だけ。一般企業なんていまだに男性の育児休暇取らせてくれないようなところだらけだよ〉
〈教員はならないのかなあ…1日10時間働いてる人いっぱいいるんだけど〉
〈看護師にはきっと関係ない話だよね…〉
と、同じ公務員でも教員、そして看護師、また民間企業での導入はさらにハードルが高いという意見もあった。
週休4日制導入の猛者社員も「恨みをかいかねない」「結局休日出勤」
働いている社員はどう思っているのか。
今回は、“週休3日”をさらに上回る“週休4日”を導入し、都内企業で正社員として勤務する徳永さん(仮名・女性)に話を聞いてみた。
「会社自体は週休3日制度を導入しているわけではないんですが、面接の段階で、『週3日で働きたいです』と伝えて採用されました。以前週5日で働いて体調を崩したり、月に何度か休んだりしてしまったことがあったので、自分が一番生産性が高く働けるのは週3日勤務だなと思ったので」(徳永さん、以下同)
最初は契約社員の事務として週3日勤務で採用された後、正社員へと切り替わった。
現在は総務や労務などの管理部門を担当している。
週5日勤務の社員と比較し、給料は5分の3、ボーナスもしっかり出るが5分の3だという。
とはいえ、徳永さんだけ週3日勤務だと、ほかの週5日勤務の社員からのやっかみなどはないのだろうか。
「正直、私の週3日勤務が成り立っているのは、週5勤務の社員さんにフォローしてもらってるからこそなので、社内の人への配慮はものすごく意識しています。総務として備品を発注したけど、社内に届く日に私が休みで他の社員に取りに行ってもらったりとかも何度もあるので。
だから、『〇〇してくれて本当にありがとう』って十分すぎるほど感謝を伝えたり、みんなが引き受けたがらない忘年会の幹事を積極的に引き受けたりしてます。配慮をかけると、恨みや妬みをかいかねませんので…」
週3日勤務による弊害は社内だけにとどまらず、社外にも及ぶ。
「社外の人とやり取りする時に、先方は当たり前に私が週5日勤務だと思っているので、私が休みの平日に、先方から連絡がきたりすることもあります。先方には事前に『週3日勤務です』とお伝えするようにしてますが、それでも固定電話にかかってきた場合は、週5日勤務の社員にフォローしてもらっている感じです。
あとは、週3日で業務を円滑に運ばなくてはいけないので、期限にはとてもシビアになります。期限を逆算して、事前準備を入念にして、先方にも次回以降にやることをリスト化して送ったりしています。もちろん自分自身にもしっかり『やることリスト』を作ったりして効率よく作業するように努めてますね」
そうはいっても周りが週5日で行う仕事を週3日で行うのは、大変ではないのだろうか。
「正直、週3日では終わらない時なんかもありますよ。
週休3日を実現させるには、それなりの配慮や効率的な働き方が重要視されるのかもしれない。
取材・文/集英社オンライン編集部