
今年デビュー45周年を迎えた松田聖子。記念ベストアルバムのリリースをひっさげ、進行中の夏のツアーで絶賛見せつけているのは揺るぎない「永遠のアイドル」ぶり。
女性アーティストとしてはダントツ、132回目の武道館
今年デビュー45周年を迎えた松田聖子がいつにもまして精力的に活動している。
6月4日に記念ベストアルバム『永遠のアイドル、永遠の青春、松田聖子。~45th Anniversary 究極オールタイムベスト』をリリース。
そしてその熱も冷めやらぬ6月7日には、さいたまスーパーアリーナからデビュー45周年記念ツアー「45th Anniversary SEIKO MATSUDA CONCERT TOUR 2025 Sing! Sing! Sing!」がスタートした。
その全14本に及ぶ記念ツアーの中盤戦、7月11日の日本武道館公演を観る機会に恵まれた。
黄昏どきの九段下駅から日本武道館への坂を登って行った筆者だが、実は昨年のプレ45周年ツアー「lolli♡pop」の武道館公演にも来ている。
そのときも九段下の駅からすでに始まる「松田聖子コンサートの興奮」というか、ファンの盛り上がりに接して圧倒されたが、今年は45周年というスペシャル感があるからか、昨年よりもさらに盛り上がっているように感じた。
駅から武道館までの短い道のりで何度もベテラン女性たちの
「あーら久しぶり!元気だった?」
「あなたも今日のチケット取れたのね」
「あっちに〇〇さんもいたわよ」
というようなやり取りを耳にした。
まるで女子校の同窓会の冒頭に居合わせたような不思議な感覚といえばいいのだろうか。とにかく武道館近辺には女性たちのはなやいだ空気が溢れていた。
いよいよ武道館の正面入り口辺りまで来ると、集まった人たちのボルテージはさらにアップ。
ただ、みんなが楽しそうに盛り上がってはいるんだけど、どこか整然としていて完全には羽目をはずさないと思わせる安心感がある。やはりほとんどのファンが、ファン歴“うん十年”のベテランだからなのだろう。
この日のコンサートは松田聖子にとって132回目の武道館公演。
これは女性アーチストとしては、他の追随を許さないダントツのトップ。最多の矢沢永吉(157回/~2024年)に続いて第2位の記録だという。
そんな「武道館の女王」は、果たして今回はどんなステージを見せてくれるのだろうか。
“永遠のアイドル”降臨!
……と期待を煽るような書き方をしてしまったが、9月6日の武道館公演までツアーは継続中なので、細かい演出やセットリストを明らかにすることはできない。ごめんなさい。
それでも雰囲気ぐらいは…
おなじみの聖子コールが盛り上がる中、オープニングからいきなりのヒットパレードでぶちかまし、記念ベストアルバムでも披露している「新技」を惜しみなく繰り出し、歌だけでなく軽妙なトークでも会場に集まったファン全員のハートを鷲掴みにする、相変わらずの「握力」を見せつけた。
中でもオープニングで、神殿のような映像をバックに純白のロングドレス姿の松田聖子が登場した暁には、武道館は一種異様な興奮に包まれていた。
アルバムのタイトルじゃないが、「永遠のアイドル教」の教祖、君臨! 「永遠の青春教」の女神、降臨! いまここに!!!
…と叫びたくなるほどの神々しさと陶酔に会場が席巻された瞬間だった。
もちろん会場のファンたちは大合唱しながら、当時の振り付けを踊りまくる。
観客は聖子と自分の青春時代~今を重ね合わせていたと思われる中高年女性が圧倒的多数なのだが、「L・ O ・V ・E ラブリーセイコ!」の野太い男声のコールもあちこちから聞こえてくる。
まさに“聖子信者”とも言うべき、ベテランファン男女が「永遠のアイドル」「永遠の青春」を今この武道館で享受している。みんな実に楽しそうだ。
コンサート半ばでは、かなりなつかしいナンバー「Eighteen」(18歳)を披露。
ファンとの掛け合いの中で「Eighty(80歳)まで頑張って!」とふられると、意気揚々に「80歳まで頑張ります!」と宣言した松田聖子、御年63歳。
ちなみにこの「Eighteen」は、1980年10月にリリースされた3枚目のシングル「風は秋色」のカップリング曲。
作曲を手掛けているのは平尾昌晃で、聖子は出身地・福岡にあった平尾のボーカルスクールに通っており、デビュー前から縁があったとされている。
また、当時「サンデーズ」のメンバーとして聖子が出演していた歌番組『レッツゴーヤング』(NHK)で司会を務めていたのも平尾であった。そして同番組で「ヤングヒットソング」として披露されていたのが「Eighteen」。当初はこちらがA面予定だったが、結果的に「風は秋色」と両A面となった。平尾からの提供曲はこの「Eighteen」1曲のみ。
さらにちなみに、「風は秋色」は資生堂の「エクボ ミルキィフレッシュ」 のCMソングとして使用されており、スマッシュヒットとなった同年4月のデビューシングル「裸足の季節」に続いての「エクボ」ブランドでの起用で、このシングルはミリオンになった。
そして本作は、1988年リリースの「旅立ちはフリージア」までの8年間で打ち立てた、オリコンチャートでシングル24作連続1位の皮切りとなった記念すべきシングルなのである。
「永遠」が不可能ではないような気がしてきた
聖子は今63歳。80歳まで17年。
「永遠」と呼ぶにはちょっと短すぎるけど、フツーに考えるとそこまでアイドルでいるのは厳しいかなと「常識」がよぎる。
でもステージで歌い踊り演奏してトークして、全身でパフォーマンスしている松田聖子と、その彼女に客席から全力でエールを送り続けるファンを見ていると、不可能ではないような気がしてくる。
19歳でデビューするまでには紆余曲折があった聖子だが、その後の快進撃はまさに無双。アイドルとしての頂点を極めるまではあっという間だった。
そしてそこから45年ものあいだ第一線で活躍し続け、3度の結婚と2度の離婚、出産も経験しながら、なんのてらいもなく記念アルバムタイトルに「永遠のアイドル、永遠の青春」と掲げる、それこそが、松田聖子。
なぜなら松田聖子はこれまで誰もなりえなかった「永遠のアイドル教」教祖であり、「永遠の青春教」女神なのだから。
取材・文/集英社オンライン編集部