〈N党・立花党首逮捕〉「有罪なら実刑」“2馬力選挙”で斎藤知事を応援しながら故竹内県議を黒幕扱いし誹謗中傷…捜査の“本丸”は知事選での怪文書内容流布か
〈N党・立花党首逮捕〉「有罪なら実刑」“2馬力選挙”で斎藤知事を応援しながら故竹内県議を黒幕扱いし誹謗中傷…捜査の“本丸”は知事選での怪文書内容流布か

兵庫県議だった竹内英明さんが昨年11月の出直し兵庫県知事選の中で猛烈な誹謗中傷を受けて県議を辞職し、その後自死した問題に絡み、兵庫県警は9日、竹内さんの虚偽情報を拡散し名誉を棄損した疑いで政治団体NHK党代表の立花孝志容疑者(58)を逮捕した。立花容疑者は執行猶予期間中の身で、今回の事件で有罪となれば実刑となる公算が高い。

逮捕容疑に絡んで立花容疑者は現職の兵庫県議3人から提供された怪文書などをもとに竹内さんを中傷しており、攻撃した理由の解明が捜査の焦点になる。

死者への名誉棄損容疑の立件は異例「それだけ悪質だ」

県警によると立花容疑者は昨年12月、立候補していた大阪府泉大津市長選の街頭演説で、名誉を傷つける目的で竹内さんが「警察の取り調べを受けている」と発言した疑いがある。

さらに、竹内さんの自死が報じられた直後の今年1月19、20日にも竹内さんが「逮捕される予定だった」とSNSに投稿するなどしたことも逮捕容疑になった。

いずれの容疑もことし6月に竹内さんの妻が刑事告訴していた。

地元記者は「遺族側弁護士は県警と協議をした上で告訴しており、立件される公算は高いとみられていました。それでも名誉棄損での逮捕も死者への名誉棄損容疑の立件も異例で、それだけ悪質だとみているようです」と話す。

最近も市長が失職した静岡県伊東市長選に出馬すると宣言し意気軒高だった立花容疑者は一転して絶体絶命の状況になった。社会部記者が解説する。

「立花容疑者は2019年に、NHK受信料徴収員が持つ業務端末に記録された受信契約に絡む情報を不法に撮影しNHKに『個人情報を拡散する』などと伝えたとして、威力業務妨害罪などで起訴されています。

ほかにも党を離れた地方議員を『徹底的に人生潰しに行く』と脅迫したとの脅迫罪でも起訴されました。結果、2023年3月、上告審で懲役2年6か月、執行猶予4年の有罪判決が確定しました。

この判決からまだ4年経っておらず、今回の事件で立花氏が有罪になれば、前回の懲役期間に今回科せられる懲役期間が加えられた実刑となりそうです。

自民党は今回の政局で、参議院の数合わせのためNHK党の議員と会派を組み、地元兵庫の自民党組織からも批判の声が出ていましたが、党首逮捕に自民党本部がどう対応するかも注目されます」(社会部記者)

今回兵庫県警は立花容疑者の認否を明らかにしていない。

供述が影響を与える共犯者がいない事件で目を引く対応だが、知事選絡みで立花容疑者の捜査対象が拡大した際に“登場”してくる人物らに捜査状況を悟らせないための措置とみられる。

立花氏に情報提供した元維新の県議

「立花容疑者が竹内さんを攻撃した動機を解明するには、知事選での立花容疑者の行動の解明は欠かせず、捜査は拡がるでしょう」と県関係者は話す。

兵庫県では、斎藤元彦知事のパワハラや公金不正支出疑惑を告発した県の元西播磨県民局長Aさん(享年60)が、県の処分を受けた後の7月に自死した。

この疑惑やAさんの処分の妥当性を調べた県議会調査特別委員会(百条委)のメンバーだった竹内さんは、独自の調査結果も駆使して解明作業にあたっており、委員会の中心的な人物だった。

この告発を背景に斎藤知事は県議会から不信任議決を受け失職。これを受け昨年10月31日に告示され11月17日に投開票された出直し知事選に立花容疑者も立候補した。

「自身は当選を目指さず斎藤知事を応援するという“2馬力選挙”の遊説で、立花容疑者が話した内容の中心が、亡くなったAさんと、知事の疑惑解明の先頭に立った竹内さんら数人の県議らへの非難でした。

『斎藤知事は何もしていないのにハメられた。竹内議員らが黒幕だ』という立花容疑者のSNSでの発信が追い風となって、当初劣勢だった斎藤知事は逆転勝ちしたと受け止められています」(県関係者)

立花容疑者はなぜ知事選で竹内さんらを攻撃する必要があったのか。それを知る上で欠かせない立花容疑者の言動を県関係者が振り返る。

「選挙戦初日の昨年10月31日夜、立花容疑者は当時百条委メンバーだった維新の増山誠県議と会いました。その場で増山県議は秘密会として行われた昨年10月25日の百条委の証人尋問を隠れて録音した音声データや、Aさんの個人情報とされる内容などが書かれた備忘録を立花氏に提供しました。

翌日の昨年11月1日夜には立花容疑者は神戸市内のホテルで、当時百条委副委員長を務めていた同じく維新の岸口実県議とも会いました。

そこで岸口県議は、竹内さんらが斎藤氏をハメた『黒幕だ』などと書いた怪文書を渡しています。この時期には維新の白井孝明県議も立花容疑者に電話を入れ情報提供を申し入れていました」(県関係者)

立花容疑者は演説で、増山・岸口両県議から受け取った怪文書などの内容に沿ってAさんや竹内さんを責め立て、怪文書の現物もSNSで公開した。

そして増山氏ら3県議から提供を受けたことを今年になって暴露。維新は増山県議を除名するなど3県議を処分し、3人は維新を離れたが県議は続けている。

 竹内さんの友人は「あまりにも遅かった」

この3人の“タレコミ”の中でも11月1日の岸口県議との接触は、立花容疑者が竹内さんを標的にする起点となった可能性がある。

この接触について岸口県議はことし2月に開いた釈明の会見で「民間人から声をかけられ会いに行った」と話した。出向いた理由を問われると「そこは説明がつかない」と説明を拒んだ。

「岸口県議がホテルで立花容疑者と会った席には、声をかけた民間人だとするX氏が同席しています。岸口県議はX氏の身元や怪文書の出所を隠す姿勢を続けていますが、このホテルでの会合は竹内さん攻撃の“原点”になった可能性があり、会話の内容や怪文書伝達の状況の解明が最重点課題になるはずです」(地元記者)

立花容疑者の逮捕容疑のひとつは昨年12月の発言だ。その時竹内さんはSNSとリアルの両方の誹謗中傷を受けて県議を辞職し、自宅から出られないほどの恐怖の中で苦しんでいた。

逮捕が必要なほど悪質な名誉棄損だとみなせるのなら、その時から捜査が動いていれば竹内さんの自死は避けられたのではないのか。この時、竹内さんは存命だったのだ。

9日、立花容疑者の逮捕の報に接した竹内さんの友人は「あまりにも遅かった」と口にした。

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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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