ネタツイは死んだのか…人気ネタツイッタラーが語る、Xのアルゴリズム化で起きた“息苦しさ”とイーロン・マスクがもたらした“恩恵”
ネタツイは死んだのか…人気ネタツイッタラーが語る、Xのアルゴリズム化で起きた“息苦しさ”とイーロン・マスクがもたらした“恩恵”

Xの仕様変更で、アルゴリズムに個人の発信が左右されるようになった昨今。初の著書『サブカルをお守りにして生きてきた』を刊行したナツイ氏は、いわゆる「ネタツイ」文化のなかで継続的にバズを生み出しながら、いまはnoteや書籍といったタイムラインの外にも居場所を広げつつある。

 

Xの記事コンテストにもランクインするなど、大きな影響力を誇りながらも、軽薄なバズに回収されない矜持を保ち続けるナツイの視点から見た、日本語圏のインターネットの空気の変化について訊いた。

Xのアルゴリズムがネタツイに与えた影響

──今のTwitter(現X)はどんな場所になっていると感じますか?

ナツイ(以下同) アルゴリズムが発達したことにより、全く関係のない人から石を投げられるようになったと思います。なので軽率にはフザけられなくなっているのが現状ですね。あと、継続的にウケることを言わないとタイムラインにも表示されなくなりますし、バズること以外が発信しづらくなってしまった息苦しさもあります。

例えば、昔のTwitterには病みツイとかいいねがつきづらい内容を投稿しても誰かが反応してくれて、それによって助けられていた面があると思うんです。今も熱心に自分の本や記事を読んでくれるのは、その頃から知り合っているフォロワーだったりするんですよね。

──単にバズった投稿を見ているだけのユーザーは、継続的には活動を追ってくれないというか。

そうなんです。『香水』を聴いた人がそのまま瑛人を追うわけではない、という構図と一緒で。バズったとしても、コンテンツのひとつとして認識されるだけなんですよ。

──アルゴリズムの変更によって、どのような投稿が増えたのでしょうか?

投稿が伸びるかどうかは初速が関係しているので、みんなで同じ画像を使ってネタにすることが最近は多いですね。前提となるノリが共有されているので、すぐに拡散されるんです。

しかも、ある画像のツイートが一度バズると、次に同じ画像を使った投稿をした時に、その画像を前にいいねした人へ優先的に表示されやすくなる、みたいな細かいアルゴリズムがある気がするんですよね。

だからFRUITS ZIPPERに関するツイートで一度バズるとボーナスタイムに入るんですよ、その後もアイドルオタクの方々が見てくれるので。

──アイドル本人がバズった投稿へリアクションする流れもごく普通になりましたね。

特にKAWAII LAB.は偶然生まれるバズに対して寛容ですね。その分、投稿する側としてもネガティブな文脈ではアイドルの画像を使わないようにしようとは思っていて。露悪的なものは避けられる傾向がありますし、世の中全体としても「『楽しい』を求めてSNSを見ているはずなのに、なんで楽しくないことを言うんだろう」という方向に空気が寄っている気がします。

2010年代のTwitterが生んだネタツイ文化

──ナツイさんはいわゆる「ネタツイ」を長らく投稿されていますよね。アカウントを開設してから今に至るまで、投稿する内容は一貫しているのでしょうか?

いえ、初めてTwitterのアカウントを作った2010年ごろは基本的にROM専(SNSや掲示板などで投稿をせずに閲覧を専門にしているユーザーの総称。ROMは「Read Only Member」の略)でした。今のアカウントを作ってからは最初、職場の悪口を書いていましたね(笑)。

──ある意味で正しいTwitterの使い方というか(笑)。ただ、Xになる前のTwitterのタイムラインは、そういった日常に関する投稿がネタツイや政治のニュースと混ざり合っていた場所でしたよね。

そうなんですよ、おすすめ欄もまだなかったですし。当時、私は職場の悪口にも笑える要素をちょっと入れるようにしていて、それで反応が集まるようになってから徐々にネタツイを投稿するようになったんです。

──当時ネタツイをしていたアカウントで印象に残ったものはありますか?

ひつじのあゆみさんやテクダさんは最初の頃から見ていましたね。それとダ・ヴィンチ・恐山さんも昔は近い界隈にいたような気がします。

クラスタが消え、界隈が残った

──今やSNSの外側で活躍している方々も、昔はネタツイ界隈にいた印象です。

そうですね。ただ、「界隈」と言えるほど強い繋がりがあったわけではないんです。私もネタツイじゃなくてハリウッドザコシショウを見てめちゃくちゃなことを言いはじめた節がありますし、各々が探してきた未知の面白いものがただ集まっているだけだと思うんです。それに、ほとんどの人はネタツイと意識せずにリツイートしていたような気がします。

──思えば、「界隈」よりも「クラスタ」という言葉の方が当時のTwitterでは使われていましたよね。Twitterでは「クラスタ」だったものがXでは「界隈」として扱われているような。

確かに、クラスタは消えましたね。初期は単に狭いコミュニティだったものが、広くてゆるい範囲を示すクラスタに拡散されていって、またコミュニティ的な界隈という概念に戻ってきているように感じます。

それに、クラスタはどこかヌルオタ(「ヌルいオタク」の略)の繋がりがある一方で、界隈にはガチ勢しかいない。昔はなんとなくみんなでアニメを観てワイワイしていたところから、アルゴリズムの発達によって自分の興味に合ったものが流れ続けるようになり、それぞれガチのものしか見えなくなったんだと思います。

──よく言われる言説として、「今のXは有名人や企業の宣伝にしか使われていない」というものがあります。これもガチ勢しかいない問題と関係しているのではないかと。

「もともとは素人のものだったのに」という言説ですね。その点はあまり気にしていなくて、病みツイをはじめとした粗くて本心っぽい内容の投稿が流れてこないアルゴリズムがむしろ問題だと思います。

場を作るための鍵を世の中が求めている

──Twitterでの発信を続ける中で、ナツイさんなりのバズる方法論は確立されているのでしょうか?

みんなが同じツッコミを言えるような投稿が伸びる印象です。例えば、イラストレーターとして活躍されている「わかる」という方がいらっしゃるんですけど、大体のツイートに関する感想がユーザー名で先取りされるようになっているんですよ。発明だと思いました(笑)。見た人の頭に思い浮かぶワードを想定することが大事なんです。

──ナツイさんの著書(『サブカルをお守りにして生きてきた』)やXでの記事も同じ発想で書いているのでしょうか?

『サブカルをお守りにして生きてきた』に関しては、読者が「面白い」と思う箇所まで我慢してくれるという信頼のもと書きました。でも、Xの記事は5秒で面白い箇所にたどり着かないとスルーされてしまう。そのバランスが難しいんです。

──現在、ナツイさんは著書の刊行に加え、noteの有料メンバーシップも積極的に活用されていますよね。一昔前は嫌儲思想もあり、個人が有料のコミュニティを作ることはインターネットにおいて避けられていましたが、今では当たり前になっています。

オンラインサロンやDiscordと一緒で、人を集めて好きにしゃべれる場を作るための鍵を世の中が求めているんだと思います。昔はインターネットが好きなことを言う場所だったのに、今は何も言えない場所になっていて、また居酒屋にプライベートな場所が戻っている……みたいな言説と近いんじゃないかと。

──なるほど。noteのコミュニティにいるためのチャージ料を設けているというか。

ちょっと尖っていたり、主流ではない意見を言ったら怒られるような雰囲気がXにはあるんですよね。noteや本では思ったことをピュアに言えるんです。

Twitterはサブカル?

──わかります。その点においても、Xのタイムラインは気が抜けない場所になっていますね。

ただ、イーロン・マスクによって文字の表現がこんなに盛り上がるなんて誰も思っていなかったと思うんです。Xは収益化するようになりましたし、人によってはアルゴリズムによって本当に好きな内容のものしかタイムラインに流れないようになっている。

──Xには良い面もあると。ナツイさんはカルチャーの変化に対して肯定的というか、例えば『サブカルをお守りにして生きてきた』で扱われている「サブカル」も、これまでの意味にとらわれない広い意味で使われていますよね。

そうですね。

「サブカル」って、時代によって意味が変わり続けている言葉だと思うんです。最初はアングラなものを指してたのに、途中から浅野いにおさんっぽい空気感とか音楽フェスに行く女の子を指すようになった。

それに対する「最近のサブカルの使われ方ってどうなん?」みたいな批判も結構見てきたので、私は逆に「今のサブカルってこれじゃない?」という感覚でタイトルを付けました。

──最後に、Twitterはサブカルだと思いますか?

Twitterは……サブカルですね(笑)。

取材・文・撮影/風間一慶

サブカルをお守りにして生きてきた(KADOKAWA)

ナツイ
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2026/3/21760円(税込)192ページISBN: 978-4046078391サブカルは面白くて、最高で、愉快で、そして時々あなたを守る武器になる。 ゲーム、音楽、アニメ、漫画、映画……。雨の日も風の日も自転車でレンタルショップに通い詰めた。 そんな数多くのサブカルに触れてきた著者による、サブカルから学んだことを詰め込んだ全21編! 本書はとにかくふざけたエッセイ集であり、世界一ライトな批評であり、ただの思い出話であり、あなたがこれから出会うかもしれないエンタメのカタログである。
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