今年4月、料理人でセクシー女優の川越にこさんの調理動画を載せたXのポストが約1454万インプレッションを得て大きな反響を呼んだ。賛否の声が集まるなか、彼女はいま何を思うのか。
「まず反応してくれてありがとう」批判を飲み込む覚悟
東京都・八丈島出身の川越にこさんは、調理の専門学校を卒業後、一流ホテルの厨房で腕を磨いた料理人だ。
2024年にセクシー女優としてデビューした後も、現在も料理の現場に立ち続けている。
そんな川越さんの料理動画がXで拡散され、「レベチすぎる」「食べてみたい」と大きな話題に。
一方で、「そんな手で料理作るなよ」「偏見だけど食べるのは抵抗ある」といった否定的な声も上がり、職業イメージをめぐる議論へと発展した。
――SNSで拡散された動画には批判的な声もありましたが、率直にどう受け止めていますか。
川越にこ(以下同) 正直に言うと、この騒動は私を知ってもらうきっかけになったなと思いました。まずは「こっちを見てくれてありがとう!」という気持ちです。
もちろん、外見に対する誹謗中傷などは傷つきますが、料理人とセクシー女優を兼任している以上、今回のような批判が出るのは避けられないとも思っています。
――料理人として真剣にキャリアを積んできた中で、否定的な見られ方をすることに葛藤はありますか?
料理人として本気で向き合ってきた分、“セクシー女優”という肩書きだけで否定的に見られてしまうことに、もどかしさを感じることはあります。
ただ、私をまったく知らない人の立場になれば、そういう印象を持つのも自然なことだと思うんです。
だからこそ、私はまず“知ってもらうこと”が大事だと思っています。一番怖いのは、発信しても誰にも届かないことなので。
批判も含めて、反応してもらえること自体はありがたいですし、マイナスな反応が来ても、“最終的には私のことを好きになってもらいたい!”と思っちゃうタイプなんですよね(笑)。
――批判をそこまで割り切って考えられるのはすごいですね。デビュー当時からそのスタンスだったのでしょうか。
デビューして間もない頃はアンチコメントに傷ついたりイラッとしたりすることもありましたが、あるとき、アンチコメントに「コメントありがとうございます!」と返したことがあったんです。
すると、そのアカウントから「すみません、実はファンなんです」と返事が来て、私の出演作品のスクショまで送ってくれました(笑)。
その出来事があってから、「どんな形でも反応してくれてありがとう」という気持ちを持つようになりました。不思議と、しつこく攻撃してくる人はいませんね。
女優業7割、料理人3割の内訳
――専門学校時代から有名ホテルへの就職を目指し、厳しい競争の中で技術を磨いてきた川越さんですが、その過程ではいまの価値観につながる出来事もあったそうですね。
専門学校時代、1000人近い同級生が、有名ホテルの採用枠“5人”を巡り争っていました。私も必死で、その椅子をつかみにいったんです。
実際に5人の中には入れたんですけど、最終的に私だけ落ちました。理由は“女性だから”というもの。合格した他の4人は全員男性でした。
実力でつかんだはずの未来が、自分ではどうしようもない理由で閉ざされる。そのやるせなさを経験したからこそ、「誰かの価値基準だけで、自分の人生を決められたくない」、「もっと自分自身を大事にしなきゃいけない」と痛感したんです。
あの出来事は、間違いなく今の私の生き方に大きく影響しています。
――その後、実際に現場に入ってからも悩むことはありましたか。
某ホテルで下積みを続けて、社内でMVPをいただけるようになった頃、交通事故に遭ってしまったんです。
料理人にとって命でもある右手が、一時ほとんど動かなくなってしまって……。半年近く、現場で思うように働けない時期が続きました。ずっと料理一本で生きていくつもりだったので、その時はかなり苦しかったです。
ただ、今振り返ると、あの時間が自分の働き方を見直すきっかけにもなりました。
ちょうどその頃にセクシー女優のスカウトのお話もいただいて、「一つの仕事や場所に縛られずに働く生き方もあるのかもしれない」と考えるようになったんです。
その結果、料理人か、女優かのどちらかを選ぶのではなく、両方を本気で続ける今のスタイルになりました。
――両立は大変だと思いますが、現在はどのような生活スケジュールで働かれているのでしょうか。
いまは女優7割、シェフ3割くらいのバランスで活動しています。
料理の仕事がある日は、朝6~7時くらいに出勤して、夕方16時頃まで厨房に立っています。
その後に引き継ぎをして、撮影やインタビューなど別の仕事に向かうことが多いですね。
――料理人と女優業、仕事ごとに線引きを意識する場面はありますか。
現場ごとに求められるものは全然違うので、意識的に切り替えるようにしています。
自分の中に“アバター”がいる感覚というか……「いまは“料理人のにこ”にログインする」みたいな感じです(笑)。
その明確な切り替えがあるからこそ、どちらの仕事にも本気で向き合えているのかなと思います。
島の少女が身につけた「誰にも埋もれない生き方」
――川越さんの“強さ”はどこからきているのでしょうか。
私は祖父母に育てられたのですが、実は小中学校の頃はいじめに遭っていたんです。
でも、島で商店を営む祖父母には心配をかけたくなくて。“私は大丈夫だよ”と安心させたかったので、中学生の時には、陸上大会に本気で打ち込んで、記録を全部塗り替えたことがありました。
以来、高校に入ってから少しずつ自分を出せるようになっていって、島のイベント企画など、学校外の活動にも積極的に関わるようになりました。
高校生なのにすべて自分で企画し50万円ほどの島の予算を預かって、人を集めてイベントを黒字で終わらせたことも……。
いま思うと、あの頃の経験が、現在のイベント活動や“自分をどう見せるか”を考える感覚につながっている気がします。
――調理師免許に加え、「野菜ソムリエ」「船舶免許」など多彩な資格を持ち、SNSでも独自の存在感を放っていますね。当時から戦略的だったのでしょうか。
そうかもしれません。いま料理イベントに力を入れているのも、ファンの方に『料理人の川越にこ』をちゃんと見てもらえる場所を作りたいという狙いがあります。
資格をとって、さまざまなことに挑戦している、みんなが簡単にはできないことを武器にしたいからなんです。
実際、ファンの方は経営者や料理好きの方、そして女性も多くいらっしゃいます。
単にセクシー女優としての私のファンなだけでなく、私が何かに挑戦し、努力する過程そのものを応援してくださる方が多いのは、本当にありがたいことだと感じています。
――身バレを防ぐためあえて出身地を公表しない方も多いですが、八丈島出身であることを公表した際、周囲の反応はどうでしたか。
島はコミュニティが狭いので覚悟はしていましたが、戸惑いや心配の声も多かったですし、距離ができてしまった関係もありました。
それでも、私の中では“隠して続ける”という選択肢はなかったんです。
どこで生まれ育ったかも含めて自分。隠すくらいなら最初からやらないほうがいい。背負ってやっていく姿を見せれば、いつか応援に変わると信じていました。
すると最近では島の人たちも誕生日を祝ってくれたり、八丈島関係の釣りのお仕事をいただけるようになったりして、地元の方に応援されている実感があります。勇気を持って公表して良かったです。
――最後に、今後の目標を教えてください。
ずっと変わらない目標は、“オーベルジュ(宿泊施設付きレストラン)”を作ることです。
単に料理を出すだけでなく、食材の調達、空間づくり、そこに箏や書道のパフォーマンスも絡めて、場所自体を一つの『体験』にしたい。
今やっている活動や資格も、私の中ではすべてオーベルジュという夢に向かって一本の線で繋がっています。
最終的には『川越にこが作るものだから行きたい』と思ってもらえる存在になりたい。場所や肩書きに縛られず、自分の軸だけで仕事ができる人になれたらいいなと思っています。
取材・文/逢ヶ瀬十吾(A4studio) 撮影/井上たろう

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