なぜ大手企業は「副業」を解禁するのか?

なぜ大手企業は「副業」を解禁するのか?
なぜ大手企業は「副業」を解禁するのか?(写真=The 21 online) (ZUU online)

■プロが独立開業より「サイドビジネス」を勧める理由

近年、「副業解禁」のニュースが世の中をにぎわせている。ベンチャーはもちろん、大手企業も続々と副業を解禁。これを受け「今こそ、独立起業よりも副業を考えるべき」と説くのは、起業コンサルタントの金子欽致氏。なぜ今、企業はこぞって副業を解禁するのか、そして個人が副業を考えるべき理由とは何か。ご寄稿いただいた。

■10人に4人が副業を考え、1人は実際にやっている!?

今年、大手企業はベアを実施し、所得も上向いていると言われます。しかし、景気回復を実際に肌で感じている人は、いったいどれくらいいるのでしょうか?

国税庁によれば2014年の平均年収は414万円。派遣社員、契約社員など非正規雇用となれば、これよりさらに少ない金額となります。一方で平均寿命は延び、男性も80歳まで生きる時代となりました。

65歳で定年退職するとして、その後15年間生活するための老後の蓄えが必要となります。1カ月の生活費を20万円とすると1年で240万円、15年では3600万円にも上ります。昨年ベストセラーとなった『下流老人』の著者・藤田孝典氏は、「高齢者の9割は貧困化する」と、これからの老後不安に警鐘を鳴らし話題となりました。

最近、副業を始める人が増えているのも、まさにこうした背景があってこそでしょう。シンクタンクのMDD研究所が2015年にビジネスパーソン7724人に調査をしたところ、「14%が副業をしている」という結果になったそうです。

また『月刊SPA!』の調査によると、「副業はしたことはないが興味がある」と答えた人は43%に上るといいます。世の中が下流化するなかで、副業人口は今後ますます増えていくことが予想されます。

■大手企業が副業を認める本当の理由とは?

とはいえ現在のところ、副業を禁止している会社のほうが圧倒的に多いのが現実です。ただ、ここ数年で副業NGが当たり前の風潮に変化が起こり始めています。最近も、ロート製薬が4月から副業を容認すると公表し話題となりました。あまり知られていませんが、日産富士通、花王など、大手企業にも以前から副業を認めている会社は少なくありません。

では、なぜこれらの大手企業は副業をOKとしているのか。その理由はシンプル。「優秀な人材を確保する」というのが最も大きいのです。

優秀な人材であればあるほど、各種プロジェクトからの誘いや会社を通さない形で直接仕事を依頼されるケースもまた多くなりますが、副業規定の制限があると当然、彼らも動きにくくなります。その結果、「副業がNGなら会社を辞めようかな」と、より魅力的で自由度の高い会社に引き抜かれてしまうということが起こります。

これは企業にとって大きな痛手であり、リスクです。ならば、「優秀な人材を組織に留めておくために、副業を容認しよう」ということになるのです。

■「専業禁止」の会社すら現われた!

副業を奨励することで、優秀な人材を育成している会社の代表格がリクルートです。会社の仕事をしながら、自分で会社を興し、事業をこなしている社員も少なくありません。IT系の会社ではサイボウズも副業OKの会社として有名です。

ベンチャー企業のなかには、逆に専業を禁止している会社まで存在しています。オンラインショピング事業を展開する株式会社エンファクトリーは「専業禁止」、つまり、「会社の仕事だけをしていてはいけない」というユニークな制度を導入し、ネット上で話題となりました。自身の事業を持つことで、起業家精神やスキルが身につくので、人材が早く育ち、本業のほうも加速しているといいます。

これらの事例はあまりに突飛で極端な印象を受けるかもしれませんが、将来的には複数の事業を持つ「複業」や「パラレルワーク」を奨励する会社に優秀な人材が集まる時代になっていくことは間違いないでしょう。

■月30万を稼ぐ「パラレルワーカー」も

また、経済の先行きが見えない不確実な時代において、キャッシュポイントが会社の給料だけというのはリスクが高い、と感じる人は増えているはずです。

大手企業でもリストラが当たり前になっていますし、リーマンショックのような経済危機や震災などの大きな自然災害が起これば、瞬時に経済が停滞し、個人の所得はますます打撃を受けます。大企業でも突然倒産するリスクもあります。収入源が1つということではいささか心もとない。

こうした時代の流れを考えたとき、個人として家庭を守るため、本業とは異なる別の収入源を得るための「パラレルワーク」をする人が増えていくことは、もはや間違いないと思われます。

私は起業コンサルタントとして1000名以上の起業指導をしてきましたが、会社に勤めながら自分のビジネスを立ち上げる方は、ここ数年で劇的に増えてきています。そのなかには、本業とは別に副収入だけで月30万円を超えるパラレルワーカーも数多く誕生しています。

会社を辞めての「独立起業」となると、リスクがつきまといます。収入ゼロの状態が続くことで精神的にも苦しくなり、再び会社員に戻っていく方を、私も多く見てきました。だからこそ、むしろ会社員の立場のままサイドビジネスを立ち上げるパラレルワークをお勧めしたいのです。

■自社が「副業禁止」だったら、どうする?

ここまで読んできて、「副業には興味があるけど、うちの会社にもきっと副業規定があるし……」と思っている方も多いと思います。そういう方はまず、今の会社が本当に副業を禁止しているのかどうか、または自分が考えている副業があるなら、その内容が就業規則に抵触するのかどうか、人事部に問い合わせてみることをお勧めします。

もし副業そのものを禁止しているなら、その理由を尋ねてみてください。一般的には「本業がおろそかになるから」「情報が漏洩するから」「会社の信頼を落とすようなリスクがあるから」などが代表的な理由として返ってくるはず。その場合、さらに食い下がり、「これらに抵触しない副業ならいい」ということなのかを探ってみてはどうでしょう。

それでも「ダメだ」と言われたら、どうするか。そのときはそのとき。時代の流れに逆行する古い体質の会社に自分の未来を託すべきかを冷静に考え、副業OKの会社に転職するという選択肢を一考してみるいい機会かもしれません。

■マイナンバーによる「副業バレ」をどう考えるか?

また、「マイナンバー制度が普及することで、副業が会社にばれるのでは……」と考え、副業に足踏みしている方もいると思います。

この点については、私は逆にマイナンバー制度の普及によって優秀な社員が会社から流出することを恐れる企業が、副業を認めるケースも増えていくのではないかと見ています。それでも副業がNGのままであれば、先ほど申したように転職する道も視野に入れればいいのではないかと考えます。

確かに、「今」だけを考えるなら、サラリーマンとして安定した給料をもらうことが、安心をもたらしてくれるかもしれません。しかし、あと10年後、20年後の社会を想定したとき、収入源が1つしかないという未来に安心と希望を感じることができるでしょうか。

そもそも、副業を禁止する会社は、私たちの未来を保証してくれるというのでしょうか。もし将来、信頼しきって尽くしてきた会社が倒産してしまったとして、「人生が台無しになってしまったのは会社のせいだ」と訴えても、失った未来を取り戻すことはできません。結局、どのような未来を選択するかは、会社がうんぬんではなく、すべて自己責任であるということです。

以上はあくまでも私の考えです。人によっては違和感を抱くかもしれませんし、そのまま鵜呑みにする必要も一切ありません。今回の文章が、あなたやあなたの大切な家族にとっての今、そして未来を考えるうえで、なにかしらの題材としていただければ嬉しいです。

金子欽致(かねこ・よしとも)株式会社ATLUCK代表取締役。
集客プロデューサー、起業コンサルタント。(株)ATLUCK代表取締役。
埼玉県生まれ。慶應義塾大学卒業後、人材開発コンサル会社に入社。上場企業の組織開発と研修講師に従事。会社員時代にうつを発症し苦悩の時期を過ごすが、一念発起しマーケティングとコピーライティングを独自に研究し、独立。売り込みが苦手な人でもできる「マグネット集客法」をSNSで公開し、ネット上で反響を呼ぶ。独立起業を指導した人数は1000名以上。人に役立ち感謝されながら月収100万円を越える「個人ブランド型起業家」が次々誕生。無料で公開する人気の教材「マグネット集客メール講座」のダウンロード件数は2万を突破している。週1回は映画館に通うほどの映画ファン。

(『The 21 online』2016年04月01日 公開)

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