日経FinTech主催のカンファレンスが6月24日、東京・秋葉原で開かれ、午前中は金融庁総務企画局の油布志行参事官の基調講演などが行われた。
「FinTech推進のための未来の一手」と題した講演で油布参事官は、銀行関係者が考えるべきFinTech(フィンテック)の動きは大きく2種類あるとしたうえで、一つはブロックチェーン関連、もう一つはハードウェアやソフトの環境が進んだことによるアンバンドリング化--と述べた。
さらに「2年くらい前なら米国の大手銀行もフィンテックを敵対視している部分もあったが、足元は協働の流れになっている。日本もそうなっていると思うが、顧客のためになるなら必要以上に敵対視せず、取り入れられるところは取り入れて欲しい」などと話した。
会場には、同誌購読者を中心にフィンテックに関心のある企業関係者が多数来場した。
■3メガバンクのイノベーション担当者も登壇
午前中は、油布参事官の講演のほか米R3 CEVのマーケットリサーチ局長、ティム・スワンソン氏の特別招待講演「R3が見据えるブロックチェーンの未来」や、メガバンク3行のフィンテック担当者によるパネルディスカッション「FinTechは銀行の姿をどう変える? 3メガバンクが徹底議論」も行われた。
パネルディスカッションに登壇したのは三菱UFJフィナンシャル・グループの柏木英一デジタルイノベーション推進部長、三井住友フィナンシャルグループの中山知章ITイノベーション推進部長、みずほフィナンシャルグループの阿部展久インキュベーションPT PT長。
各グループのフィンテックの取り組みの現状について問われ、MUFGの柏木氏は アイデアコンテストやハッカソンなどの主催、イノベーション・ラボ新設、ZUU onlineなどメディアとの連携といったことのほか、ファンドへの出資など投資にも積極的に取り組んでいることを紹介した。
三井住友FGの中山氏は2015年10月にイノベーション創出を目的とした部署を発足させたことを紹介したうえで、取り組んでいる分野として、次世代購買体験(モバイルウォレット、決済デバイス)、AI・人工知能、エンタープライズサービス(API提供、IoT活用)、次世代金融インフラ(ブロックチェーン、ビッグデータ)の4つ挙げた。そのうえで、エンタープライズサービスに最も注力していると述べた。
阿部氏はみずほFGがフィンテックについて部ではなくPTとして取り組んでいることを紹介、チーフデジタルイノベーションオフィサーが担当役員として統括して、銀行・信託・証券などグル-プ全体で幅広い領域をカバーしながら、新規ビジネス創出に取り組んでいることを報告した。
また足元の環境について問われた柏木氏は、イノベーションには長く関わっているがこのところスピード感が急速に高まっていることを指摘。中山氏は「新技術・新デバイスが出過ぎていて、『これを使って何かできないか』となりがちだが、ユーザーオリエンテッドに戻さないといけないと感じている。お客様の将来像、ニーズを想定し、それを踏まえてどんな技術が必要かと考えるべき」と話した。
ブロックチェーンについて阿部氏は非常に大きな可能性があり、POC(概念実証)を複数進めているものの、「これは行けるなと確信が持てているものがない」と認めたうえで、「だからといってやらないわけではないし、予想以上に早くその時期(ブロックチェーンを使ったサービスや技術が実証され活用される時期)はくると考えていると話した。
フィンテックスタートアップとの関係については、登壇者のいずれもスピード感や意思決定のプロセスがまったく(金融機関と)違うことを指摘。柏木氏は「スタートアップの方はそれこそメールなんて使わない。Slackやチャット。CEOやCOOと話をするとその場で意思決定がなされる」などと話した。
中山氏はスタートアップとはいってもビジネスに近い会社もあれば、技術寄りの会社もあると分類。後者のジャンルのスタートアップには、「是非グループの人材の育成にもお力添えをいただきたい」といった期待を述べた。
■午後には地銀の担当者らも討論する予定
午後には日本銀行の山岡浩巳決済機構局長による講演「FinTechは世界を変えるか -中央銀行の視点-」、ふくおかフィナンシャルグループ、山口フィナンシャルグループ、広島銀行の担当者が登壇して行うパネルディスカッション「地銀×FinTech、動き出した風土改革」、野口悠紀雄・早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問を審査委員長に迎え、フィンテックスタートアップによるピッチコンテストなどが行われる予定。(FinTech online編集部)
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