なぜ教育現場に「フィリピン人講師の授業」が広がっているのか

■日本の英語教育が変わりつつある

日本の英語教育が変わりつつある。単に読み書きができるだけではなく「聞く・話す」を含めた「4技能」が求められるようになっているのだ。だが、従来の学校教育では、「聞く・話す」能力を磨くには限界がある。

そこで注目されているのが「フィリピン人講師」なのだという。その理由はなぜか。フィリピンの可能性にいち早く目をつけ、7年前から事業を展開している藤岡頼光氏にお話をうかがった。

■従来の教育では「マンツーマン」は不可能

2014年の有識者会議で「グローバル化に対応した英語教育改革5つの提言」がまとめられ、その中には「グローバル化の進展の中で、国際共通語である英語力の向上は日本の将来にとって極めて重要である。アジアの中でトップクラスの英語力を目指す」と明確に書かれています。

そうした流れを受け、教育現場でも大きな変化が起こっています。2年前に教育要項が変わり、大学受験に英語の「4技能」が重要視されるようになったのです。いわゆる「読む」「書く」「聞く」「話す」です。

読む、書く、聞くは今までの英語教育でも問題ありませんが、「話す」能力を鍛えるためには話す相手が必要です。クラス40人の生徒が一斉に話しても聞くことができないですし、一人ずつ話した場合いくら時間があっても足りません。

その結果、現場で注目されてきたのが、フィリピン人によるマンツーマンレッスンです。

■40歳でフィリピンに留学。そこで感じた可能性

私は11年前の2005年に40歳という年齢ながら、ゼロから英語を学ぶためにフィリピンに生徒として語学留学をしました。

その当時は「オンライン英会話」という概念もなく、韓国人のために作った韓国系の語学学校しかありませんでした。しかし、さまざまな不自由さがありながらも、留学とスカイプの英会話を組み合わせて学ぶことで約10か月で英語が話せるようになり、フィリピン英語の無限大のポテンシャルを感じました。

そして2009年、既存の英会話学校とはまったく違う学校を作るべく、日本人として初めてフィリピンのセブ島で英会話学校「QQEnglish」を設立したのです。

それから7年という歳月を経て、現在では留学者数は年間約5000人、オンライン英会話は約1万人の人たちが学ぶフィリピン最大の英会話学校にまで成長しています。

以前はビジネスパーソンや年配の生徒が多かったのですが、最近は学校でも英語を話すための授業として、フィリピン英語の導入が次々と進んでいます。まさに日本で英語教育の革命が起こっていると言っても過言ではありません。

■「ネイティブではない」ことに価値がある

今、日本中の学校でフィリピンの英語力が注目されている理由は、フィリピンが世界第3位の英語公用語国(フィリピン大使館HPより)というだけでなく、ビジネス英語指数(Business English Index)が3年連続ナンバーワンだからです。

フィリピン人はネイティブではありません。英語を学習して話せるようになっています。つまり、フィリピン人は世界で一番成功した英語の学習者なのです。初めから話せるネイティブと違って、実体験として英語の学習経験があります。文法も発音も全く違う日本人にとって、いきなりネイティブの先生から習うより、一から学習する生徒の気持ちがわかっているフィリピン人のほうが良いのです。

■「全生徒が話せる」という画期的なシステム

フィリピンの英語力を活用するのに一番注目されているのは、インターネットを使ったマンツーマン英会話授業です。日本の中学・高校では積極的に情報通信技術(ICT)を活用した授業を行おうとしています。

マンツーマン授業の最大の魅力は、どの生徒も公平に話す機会があることです。グループクラスだと英語の得意な生徒とできない生徒が混在しているので、全く話す機会がない生徒が出てしまいます。それに対してマンツーマン授業だと、それぞれのレベルに合わせて教えることができるのです。

たとえば、大妻中野中学校・高等学校では今春より、タブレット端末を使い、一クラス全員が同時に学ぶマンツーマンのオンライン英会話の授業が始まりました。中学1年生から高校2年生までの全生徒、約1,300人が受講し、一クラス40人の生徒に対してフィリピンの教師40人が個別に指導しています。

話すことを重視すると、どうしてもたくさんの教師が必要になります。外国語指導助手(ALT)を日本で雇うと1時間あたり1万円以上のコストがかかりますが、フィリピンの教師であれば25分1000円なので格安です。

■TOEICスコアが平均110点アップ、最高250点アップも

ただ、本当に効果があるのか、半信半疑の方もいるかと思います。QQEnglishでは明治大学「文明とマネージメント研究所」と共同で、オンラインを使ったフィリピン人教師とのマンツーマンレッスンで学習効果があるかについて、明治大学の学生21人に対して実証実験を行ないました。

80時間のオンライン英会話の授業をマンツーマンで行なった結果、TOEICのスコアは平均で110点、最高で250点も伸びた生徒がいました。注目すべき点は、高いTOEICスコアの生徒の伸びだけでなく、あらゆるレベルの生徒の英語が伸びたこと、そして一人も脱落者が出なかったことです。

大学関係者を驚かせたのは実証実験の結果だけではありません。実はその後に行った生徒のアンケート結果も素晴らしい結果が出たのです。
いくら英語のスコアが上がっても、生徒の満足度が低ければ意味がありません。フィリピン人教師によるオンライン授業は生徒の満足度も高かったのです。

授業はコンピュータを使ったオンライン授業で行なったので、当初はもっと厳しい評価を想定していましたが、統計学的にまず出ないと言われる100%の満足度(大変満足と満足を合わせて)という驚くべき結果となりました。

実証実験を担当していただいた明治大学の阪井和男教授は「これは全ての生徒の結果が良かったからです。どれだけ辛いことでも自分が成長していると思えば、人間は満足できて続けることができます。今回の実証実験で1人も脱落者が出なかったこともこれを証明しています」と総括しています。

フィリピン人教師によるオンラインでのマンツーマン授業では、あらゆるレベルの生徒の結果にコミットでき、とても満足度の高い英語学習法であることが証明されたのです。

■2020年、アジアの中でトップクラスの英語力に向けて

日本は2020年に向けて本格的に動き始めました。これから50年、半世紀が過ぎた頃には有識者会議が掲げた「アジアの中で日本がトップクラスの英語力」は必ず実現すると確信しています。

人口が減少する日本にとって、世界の中で存在感を残して生き残っていくためには、英語教育は必要不可欠です。英語を話すことは単にアメリカ人やイギリス人などのネイティブと話すだけではありません。英語は世界共通語になっているのです。

一番重要なのは英語を楽しい授業にすることです。今までの英語教育は文法や単語の暗記から始めて英語嫌いの生徒を大量生産していました。しかし、これからは英語を話す楽しさを教え、子供の頃から外国人と接する機会を与えなくてはなりません。真のグローバル・リーダーを育成していくのです。

藤岡頼光(ふじおか・らいこう)QQイングリッシュ代表取締役
フィリピン・セブ島に拠点を置く、英会話学校QQイングリッシュを経営。約700人の教師が、年間5000人の語学留学生と1万人を超える世界中の 生徒にオンライン(スカイプ)で授業を提供。1992年バイク便のキュウ急便設立後、2000年バイクショップのコネクティング・ロッド設立。2005年 フィリピン・セブ島に留学後、2009年オンライン英会話事業のQQイングリッシュ開始。2010年に留学事業も開始。QQイングリッシュは現在、東京、 セブ、上海、ソウル、サンパウロ、テヘランで展開。(『The 21 online』2016年06月13日 公開)

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