住宅購入の主役が「中古マンション」に変わるワケ

住宅購入の主役が「中古マンション」に変わるワケ
住宅購入の主役が「中古マンション」に変わるワケ(写真=Thinkstock/GettyImages) (ZUU online)

日本人は住宅を購入する場合、まず新築を考える傾向にある。アメリカ人やヨーロッパ人は、まず中古を考える。これは統計数字の上でもハッキリしている。欧米では住宅取引の主役は中古だ。ところが、日本は圧倒的に新築。理由はいろいろありそうだが、ここではその先の話をしたい。

■増えても減らない中古マンション

鉄筋コンクリート造のマンションは、木造の戸建て住宅よりもはるかに耐用年数が長いと考えられている。きちんと施工されているマンションなら、メンテナンス次第で100年は住めると私は考えている。つまり、築10年や20年のマンションなら、我々が天寿を全うするまで住める、ということだ。

そして、世の中の中古マンションというのは増える一方だ。理由はカンタン。どんどん新築マンションが建設されているからだ。それまで新築扱いされていたマンションは次から次へと中古になってしまうのだ。

確かに、老朽化したマンションで建て替えられるケースもある。ただし、それでも戸数は増える。なぜなら50戸のマンションを建て替えて40戸になる、というケースはほぼない。50戸のマンションなら100戸程度に建て替えないと事業としての採算が取れないからだ。

現在、全国の中古マンションのストックは、国土交通省発表の資料から約630万戸あると推定される日本でもマンションという住形態においては、いよいよ中古が主役になり代わる、という歴史的な転換点に差し掛かっている。

まず、首都圏において2015年に供給された新築の分譲マンションは40,449 戸(不動産経済研究所)である。

一方、同じ首都圏において2015年に取引された中古マンションは35,100件(東日本不動産流通機構)。

両者の差は5千戸強。昨年はまだ新築の方が多かった。

今年(2016年)、新築マンション市場は低迷している。不動産経済研究所の予測では、首都圏における今年の発売戸数は昨年比で1割ほど減る37,000戸だ。私はもう少し減るのではないかと予想する。

来年(2017年)はさらに減るだろう。3万戸台を維持できるかどうかさえ怪しい。

これに比べて、東日本不動産流通機構の公開資料によると2016年1~3月期の中古マンション成約数は前年比3.4%増。その後の数字は出ていないが、おそらく前年を上回っている気配だ。このままでは、今年の成約数は37,000戸を超えるだろう。

さらに言えば、不動産業界の関係者なら常識なのだが、中古マンションの実際の取引成約数は東日本不動産流通機構に登録されたものよりも多いはずだ。2倍とまではいかなくても1.5倍であっても不思議ではないと思われる。

つまり、現時点ですでにマンション取引の主役は新築から中古に変わっているのだ。

この傾向は、今後拡大することがあっても縮小することはないだろう。理由は、新築マンションの開発事業が人件費の高騰と地価の高止まりで年々困難になっているためだ。だから、発売戸数は減少していく。これに対して、前述の通り中古マンションのストックは年々増えていく。分母が大きくなり、買う側にとって選択肢が増えるのだ。

住まいは中古が主流になる。良し悪しを見分ける秘策は

私はかねがね、新築マンションの開発は衰退産業だが、不動産仲介は今後成長が見込める分野だと主張してきた。その理由は、先ほど述べたように今後の住宅取引は中古が中心になるからだ。

これから住宅を買おう、と考えるエンドユーザーさんたちも大きく意識を変える時期に来ているのではなかろうか。

そして、中古マンションは一戸建てに比べてエンドユーザーにとってかなり「分かりやすい」不動産である。というのは、土地付きの一戸建て住宅にはエンドさんにとってリスキーな部分が多いからだ。例えば、私有地が絡んでいたり、隣地との境界があいまいであったり、共用のインフラがあったり……。建物自体がシロアリに侵されている場合もある。

最近、宅地建物取引業法が改正されて、建物の状態を第三者がチェックするシステムがあることを買い手に伝えることが義務化された。何とも中途半端な改正である。第三者がチェックすることを「インスペクション」というらしい。

ただ、そういった法改正が有効に働くとは思えない。

半年ほど前、とある建築の専門家と共に講演する機会を得た。終わってからの雑談の中で、日本で最大と目されるインスペクション業者が「いい家ですよ」とお墨付きを出した住宅を彼が再び検査すると重大な欠陥が見つかり、結局は建て替えになった例が4件あるとご教示いただいた。

一戸建てというのは、それだけ難しい。新築であったとしても、不動産業者や生半可な専門家では見つけられない欠陥が潜んでいる場合があるのだ。

これに対して、中古マンションの場合はかなり分かりやすい。

なぜか。鉄筋コンクリート造であるマンションの場合、躯体構造は区分所有者全体の「共有部分」とされている。例えば、雨漏りなどがあると管理組合の費用で補修することになる。

管理組合は毎年総会を開いて、組合の予算と決算、それと問題解決のための議案を提出する。区分所有者がそれらを議論した上で採決する。その結果は議事録に残される。これを「総会議事録」という。

区分所有法では、この議事録について「利害関係者の請求があれば」開示しなければならないと定められている。利害関係者というのは、当然ながら購入検討者も含まれる。

中古マンションの購入を検討する場合、物件が決まったらこの「総会議事録」を仲介業者を介して過去3年分くらい取り寄せて熟読すればいい。

そこで「雨漏り補修のため△△建設に○万円支払い」などという議案が出ていたら、そういうマンションは絶対に避けるべきである。なぜなら、一度でも雨漏りがあるようなマンションは、躯体コンクリートの工事が不良だったからに他ならない。だから今後も毎年のように建物のどこかからかの雨漏りに悩まされる。

その他、総会議事録にはそのマンションが抱える重要な問題はほぼ記録されている。つまり、不動産には知識がないエンドユーザーさんでも、その中古マンションの良し悪しをある程度は見分けられるのだ。

昨年は建物の杭が支持基盤まで到達していないために傾いたマンションの問題が大きく報道された。このように、新築マンションを購入するのは、ある意味ギャンブルみたいなところがある。しかし、中古マンションはしっかり調べれば“ババ”を掴むことはない。

しかも、これまで述べてきたように、これからの住宅購入の主役は中古マンションになることは間違いないのだ。日本人はそろそろ「新築信仰」を捨てる時期に来ている。

榊 淳司(住宅ジャーナリスト)
1962年、京都府出身。同志社大法学部および慶応大文学部卒。不動産の広告・販売戦略立案の現場に20年以上携わる。一般の人々に分かりにくい業界内の情報や、マンション分譲事業の仕組み、現場担当者の心理構造などをブログ上で解説。近著に『マンション格差』(講談社現代新書)など。

(提供=不動産流通システム)

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