映画『君の名は。』と東宝の株価の関係から読み取れること

映画『君の名は。』と東宝の株価の関係から読み取れること
映画『君の名は。』と東宝の株価の関係から読み取れること(写真=Thinkstock/Getty Images) (ZUU online)

映画『君の名は。』の興行成績が好調だ。11月6日までの興行収入は179億円を突破し、日本映画史上7位に浮上した。11月5、6日の週末も興行成績首位となり、2日間で3億円弱の売上を記録している。

ところが配給元の東宝 <9602> の株価は9月26日の年初来高値3430円をピークに値下がりトレンドだ。映画のヒットと業績の変化、そして株価の動きを検証してみよう。

■『君の名は。』は幅広い層に支持される
『君の名は。』は、2016年8月26日に公開された新海誠氏原作・監督のアニメ映画だ。新海監督はアニメ映画で『星を追う子ども』(2011年)、『言の葉の庭』(2013年)などでヒットを生んでおり、「ポスト宮崎駿」の有力候補とされている。もちろん海外からの注目も大きい。

ネタバレにならない程度で内容を紹介しよう。「山深い田舎町に暮らす女子高校生・三葉は、見慣れない部屋、見知らぬ友人、見知らぬ東京の街並みで自分が男の子になる夢を見る。一方、東京で暮らす男子高校生・瀧も、山奥の町で自分が女子高校生になる夢を見る。やがて二人は夢の中で入れ替わっていることに気づく。出会うことのない二人の出逢いから、運命の歯車が動き出す」といったストーリーだ。

Twitter などSNSの口コミで評判を呼び、若い世代やアニメファンはもちろん、社会人など幅広い層の支持を得られたこともあって大ヒットとなった。筆者も劇場で、普通におじさんが大泣きしているのを目撃したが、それほど心に響く作品なのである。

■東宝の株価は映画のヒットで年初来高値へ
『君の名は。』は公開直後の8月27~28日の週末の興行収入ランキングで初登場1位をつけるとその後9週連続トップとなった。10月最終週末に一旦新規公開の『デスノート』にトップを奪われたが、翌11月第1週には首位を奪回、通算10週目のトップを記録した。各地で映画館を満杯にしており、もしアカデミー賞長編アニメ部門にノミネートされたら、さらに興行収入を伸ばす可能性があるだろう。

配給元の東宝の株価を見てみよう。『君の名は。』が公開された直後の8月30日、同社の株価は2824円と6月24日以来の安値をつけていた。しかし、興行収入ランキングで初登場1位を記録したことが伝わると、翌31日には投資家の買いを集め6%高に上昇する。

9月23日には興行収入が100億円を超えたことが明らかになる。邦画で100億円を超えるのは、2013年に公開した宮崎駿監督の作品「風立ちぬ」以来のことだ。東宝の株価は同日、1月4日の高値3365円を更新、9月26日には年初来の高値3430円をつける。ここまでで8月30日の安値から21%の上昇だった。

9月27日に東宝は、2017年2月期の中間決算(3~8月)の営業利益を期初予想の168億円から244億円に46%上方修正すると発表。夏興行において『君の名は。』とともに、7月29日公開の『シン・ゴジラ』がヒットしたことによるものである。『君の名は。』については8月26日公開なので業績への本格寄与は9~11月期になる。

10月17日には、2017年2月期の中間決算を発表。中間期実績は事前の上方修正通り244億円。通期についても予想営業利益330億円から470億円に42%上方修正した。

■「噂で買い、事実で売る」典型的なケース
だが、株価は面白い。9月27日の中間上方修正の翌日は1.9%安の3325円、10月17日の通期上方修正の翌日は2.8%安の3085円と株価は逆に下落している。すでに、『君の名は。』の大ヒットによる業績の上方修正は株価に十分に織り込まれていて、実際の上方修正で材料出尽くしとなった可能性が高いとみられる。

株式市場では「噂で買い、事実で売る」「理想買い、現実売り」ということが良くおこる。ポケモンGO で話題になった任天堂 <7974> の株価も、海外でダウンロードが開始されたあと「大人気」の報道で買われ始め、いよいよ日本でもダウンロードが開始される日に一旦ピークアウトした。東宝もその典型例と言えるだろう。株価は「実際の業績発表よりも評判が先行して動く」。これも株式投資の面白さであり、これから投資を始めようとする初心者に学んで頂きたいことの一つである。

平田和生(ひらた かずお)
慶應義塾大学卒業後、証券会社の国際部で日本株の小型株アナリスト、デリバティブトレーダーとして活躍。ロンドン駐在後、外資系証券に転籍。国内外機関投資家、ヘッジファンドなどへ、日本株トップセールストレーダーとして、市場分析、銘柄推奨などの運用アドバイスをおこなう。現在は、主に個人向けに資産運用をアドバイスしている。

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