ポイントプログラムとは何か~一層の消費者保護と健全な発展に向けて

■要旨

新規顧客を誘引したり、既存顧客を囲い込む手段として、購入履歴などにもとづき、割引サービスなど、対価性を持ち合わせたポイントプログラムを実施する事業者が増えてきている。

小売、クレジット、航空、通信など、さまざまな業種がポイントサービスを提供しており、最近は、銀行や保険など金融業界の一部にもポイントが導入されている。

さらに業態を超えた各ポイント間の互換性など、ポイントプログラムの進化が進み、企業に加え地方自治体などでも活用されるなど、社会的なインフラとして定着している。

こうしたポイントプログラムの現状やこれまでの検討経緯、課題と対応方向などを示したい。

■はじめに

新規顧客を誘引したり、既存顧客を囲い込む手段として、購入履歴などにもとづき、割引サービスなど、対価性を持ち合わせたポイントプログラムを実施する事業者が増えてきている。

小売、クレジット、航空、通信など、さまざまな業種がポイントサービスを提供しており、中には「ポイントサービスが有利であるからこの事業者を選択した」とする消費者も少なくない。

実は、筆者もその1人であり、「当カードに加入すると商品・サービスと交換できる○○○ポイント進呈、その上年間手数料も無料」といった誘引により、別のカードを解約して、あるカードに加入した経験がある。

こうしたポイントプログラムは、本体である商品・サービスに付随する、対価性を有しない、単純な「おまけ」として一切保護されないのであろうか。

「おまけ」と考えれば、たとえば突然ポイントプログラムが廃止された場合や、ポイントカードを紛失した場合などでも、消費者に対する保護は弱くなりがちとなる。

しかしながら、ポイントプログロムは、本体である商品・サービス加入の際、重要な加入動機となっているケースも多く、消費者の期待も大きいことから、消費者保護のための方策が必要である。

商品・サービスと交換できる点でポイントプログラムと類似している商品券、ギフト券、プリペイドカードなどは、資金決済法上の「前払式支払手段」とされ、消費者保護のため、事業者に対し、発行額の2分の1以上の保証金供託義務などが課されているが、ポイントプログラムについては対価性がなく、無償で発行されているとして、こうした義務は課されていない。

主要企業のポイント発行額は2014年で8495億円で、2022年には約1兆1千億円に達するとの予測もある中、社会的に定着したポイントプログラムの現状やこれまでの検討経緯、課題と対応方向などを分析したい。

■ポイントプログラムの現状

◆ポイントの発行残高

ポイントプラグラムの2014年度の年間最少発行額(判明した売上高など×ポイント適用率×ポイント還元率により計算)は8495億円、2022年度には1兆1000億円に達すると推定されている。

2014年度の8495億円の内訳は、クレジットカード(業界全体のショッピング取扱高がベース)が最も多く2313億円、次いで家電量販店(主要8社の売上高がベース)が2173億円、携帯電話(主要3社の売上高がベース)が1079億円などとなっている(*1)。

2005年度は4520億円、内訳は、クレジットカードが1458億円、携帯電話が874億円、航空会社(主要2社)が750億円(*2)などであったことから、9年間で2倍近くに拡大している。

◆ポイントプログラムに関する規定

各企業は、ポイントプログラムに関する規定を設け、ホームページに掲載して消費者に示している例が多い。

規定内容は企業によって区々で、消費者にとって重要な事項のひとつである有効期限についても、

・ポイントが付与される取引が行われた日から1年間(アマゾン、楽天など)、最終のポイント変動日(付与、使用)から1年間(Tポイントなど)

・有効期限2年(MUFJカード、JCBカードなど)

・有効期限3年(JALマイレージ、ANAマイレージなど)

・有効期限なし(セゾンカードなど)

などとなっている

また、大半の規定では、企業側がいつでもポイントプログラムを廃止したり、内容を変更できるとしているが、その際、消費者へ何らかの方法で周知するかどうかは各社の規定が分かれている(*3)。

◆ポイントの個人税制上の取扱い

ポイントの税制については、個人が商品購入履歴などにもとづき付与されるポイントは、法人からの贈与により取得する金品として、ポイントを使用した時点で、一時所得の対象となり、アンケートの回答などにもとづき付与されるポイントは、役務提供の対価として、同様にポイントを使用した時点で、雑所得となるという見解が示されている。

なお、一時所得には、50万円の特別控除額があるため、ほとんどの納税者は申告する必要はない。雑所得についても、年末調整によって所得税額が確定する、大部分の給与所得者については、給与所得、退職所得を除く各種の所得金額の合計額が20万円以下の場合、申告不要となる。

これは、ポイントの法的性質について、「ポイントプログラム契約により消費者が得る債権とは、・・・停止条件付き贈与契約(筆者注:消費者側がポイントを商品やサービスとの交換などの方法で請求するまでは、効力を生じない、対価を支払うことなく給付を受けることができる契約)による債権である」と位置づけた上で、所得税法第36条に規定する「金銭以外の物又は権利その他経済的な利益」に該当し、課税されるべきであるとの整理(*4)であり、妥当な見解であるものと考えられる。

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(*1)ニュースリリース「ポイント・マイレージの年間発行額は2022年度に約1兆1,000億円に到達~国内11業界の年間最少発行額について、2014年度の推計と2022年度までの予測を実施~」(2016年10月5日)、野村総合研究所ホームページ。
(*2)ニュースリリース「日本国内の『企業通貨』発行総額は4,500億円超~主要9業界の2005年度の発行金額を推計~」(2006年8月16日)、野村総合研究所ホームページ。
(*3)各会社ホームページ。
(*4)「企業が提供するポイントプログラムの加入者(個人)に係る所得税の課税関係について」『税大論叢』第78号、2014年6月、国税庁ホームページ。
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◆ポイントの企業会計処理

ポイントについての企業会計処理は、大きく2方式に分けられる。

ひとつは、将来のポイントの使用に備えて引当金を積み、実際にポイントが使用された時点で費用として計上する方式である。

このほか、国際会計基準にもとづき、ポイント付与を伴う商品の販売は、商品の販売とポイント交換による将来の商品の提供に対して顧客から対価を得たものとして捉え、商品の販売と同時に、商品価格の一部について、繰延収益としての処理が行われるケースもある。

具体的には、前者の方式では、商品販売時には商品価格を全額売り上げとして計上、消費者がポイントを使用した時点でその金額を販促費などの費用として計上し、年度末には「1ポイント当たりの単価×失効率を加味したポイント残高」を引当金として計上する。

後者の方式では、商品販売時には商品価格のうち、ポイント相当額を控除した金額を売り上げとして計上し、ポイント相当額は繰延収益とした上で、ポイントの使用時点で使用金額を売り上げとして計上する方式である。

わが国においてはポイントの企業会計処理について明確なルールがなく、会計処理は各社の判断に委ねられており、また、ポイントに対する引当金の開示も一部行われていない状況にある(*5)。

◆地方公共団体などでのポイントプログラムの導入

ポイントプログラム導入の動きは、顧客への商品・サービス販売誘引、顧客系列化をおもな目的とした企業を中心とした動きに加え、地方自治体などでも健康増進に向けたポイント活用が進んでいる。

少子高齢化や人口減少が進む中、高齢でも地域で元気に暮らせる社会の実現に向け、健康増進のため、ウォーキングや健康診断に対するインセンティブとして市民にポイントを付与するものである。

2014年10月には、スマートウエルネスシティ地域活性化総合特区協議会に参加する6市(千葉県浦安市、栃木県大田原市、岡山県岡山市、大阪府高石市、福島県伊達市、新潟県見附市)とつくば大学、みずほ銀行などによる産学官プロジェクトとして、「健幸=健康で幸せの状態(身体面の健康だけでなく、人々が生きがいを感じ、安心安全で豊かな生活を送れること)」ポイント制度が実施された。 

歩いた歩数などに応じて最大2万4000ポイントが付与され、商品券やポンタポイントへの交換などができる仕組みである(*6)。

2014年11月には、横浜市と凸版印刷、オムロンヘルスケアの共同事業として、「よこはまウォーキングポイント」制度が発足した

参加者には歩数計を付与し、1日当たり2000歩で1ポイントが貯まり、3か月で2000ポイント以上達成を1口として抽選、当選者には3000円相当の商品券が提供される仕組みである(*7)。

このほか、介護支援ボランティアに対するポイント付与や、国によるエコポイント事業に類似した環境保全・省エネルギーに対するポイント付与などがある。

財源については、介護保険法により国などの財源支援がある介護支援ポイントを除き、基本的に地方公共団体が負担している(*8)。

◆ポイントの性質とその取扱い(まとめと私見)

このような現状から、ポイントの性質とその取扱については、大きく2つの考え方があるものと考えられる。

1000円の商品・サービスを購入した場合、将来他の商品・サービスと交換できる100ポイント(1ポイント=1円でいつでも交換可能)を付与されたとしよう。

ひとつは、商品・サービスの購入時点では、将来、一定の条件において行使可能なポイントという財産的権利をサービスとして付与されているだけで、ポイントは実際に使用してはじめて権利が確定するという考え方である。

このように考えれば、1000円の売り上げに対し、将来交換されるべき100ポイントが付与されたこととなるから、企業にとっては1000円全額が売り上げとなり、将来消費者がポイントを使用した時点でその金額を販促費などの費用として計上し、年度末には一定の金額を引当金として計上することとなる。

一方、消費者にとっては、ポイントを使用した時点でその金額が一時所得などとして課税されるが、将来の権利行使まではポイント残高は保障されず、ポイント制度が変更・廃止されればポイントは使用できない結果となる。

もうひとつは、国際会計基準と同様の、商品・サービスの購入時点で、1000円の商品・サービスは実質的には900円に値引きされ、将来行使可能な100ポイントという財産的権利を同時に購入したという考え方である。

このように考えれば、企業にとっては1000円ではなく、900円が売上高となり、ポイント相当額は繰延収益とした上で、ポイントの使用時点で使用金額を売り上げに計上することとなる。

消費者にとっては、将来行使可能な100ポイントという財産的権利を自ら購入したこととなるから、とくに課税関係は生じないし、この財産的権利は将来の権利行使まで、通常保障されることとなろう。

後述するこれまでの検討経緯では、前者の考え方が主流となっているようである。

現在、入会と同時に、商品・サービスの購入を伴わずに一定のポイントが付与されるという仕組みもあり、商品・サービスの購入を前提とした値引きという概念からは説明しずらい。

あえて言えば、「事前値引き」とも考えられるが、もしそのポイントの範囲内で商品・サービスを購入した場合には、消費者は無償で商品・サービスを入手する結果となる。

一方、商品・サービスの購入に伴うポイント付与の直後に別の商品・サービスをそのポイントで購入した場合は、実質的には値引きと同様とも評価されよう(ただし、商品・サービスの購入によるポイントを、当該商品・サービスの価格に充当することは通常できず、あくまでも別の商品・サービスの購入に充当することが前提となる)。

筆者としては、後者の考え方は、消費者の立場からすると有利な考え方のようであるが、「1000円の商品・サービスが実質的には900円に値引きされ、将来行使可能な100ポイントという財産的権利を同時に購入した」というのは、少なくとも実際の取引実態とは乖離していると思われる点でやや技巧的であり、前者の考え方の中で消費者の保護を図るべきではないかと考えている。

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(*5)金融庁「ポイント及びプリペイドカードに関する会計処理について」(2008年6月18日)、金融審議会金融分科会第二部会決済に関するワーキング・グループ第3回資料、金融庁ホームページ、石井理恵子、田中弘「ポイントプログラムの会計処理」、『商経論叢』第48巻第3号、2013年3月、神奈川大学ホームページ。
(*6)スマートウエルネスシティ地域活性化総合特別区域協議会、筑波大学、みずほ銀行、みずほ情報総研、つくばウエルネスリサーチ「『複数自治体連携型大規模健幸ポイントプロジェクト実証』の実施について」(2014年10月2日)、スマートウエルネスシティホームページ。
(*7)「よこはまウォーキングポイント」、横浜市ホームページ。
(*8)熊坂敏彦「地方自治体による『地域ポイント制度』の新展開」、「調査情報」、2013年7月号、No.39、筑波総研ホームページ。
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■ポイントプログラムについての主務官庁などによるこれまでの検討経緯

◆企業ポイント研究会による検討(2007年2月~6月)

ポイントプログラムを提供する業界のうち、小売、クレジットなどを主管する経済産業省においては、事業者の消費者向けビジネスでポイントプログラムが拡大するとともに、発行企業との間のみで使用できる従来の方式から、発行企業とは異なる企業との間でも使用できる方式に移行しつつある状況から、企業ポイント研究会(2007年2月23日~6月21日、全9回)を開催し、検討を行った。

同研究会は、商務流通審議官の私的研究会として、ポイントを提供する企業をメンバーの主体として構成され、検討方針について、委員から「本研究会の前提として、企業ポイントの利用規制ではなく、より経済活性化を促すために、企業ポイントの利用促進のため、どのような基盤整備をすべきかという発展の方向で議論をしていきたいと考えている」(*9)との発言がされている。

こうした背景から、同研究会では、おもにポイントプログラムの企業から見た今後の利用促進や体制整備に向け、「企業ポイントのさらなる発展と活用に向けて」(2007年7月)を取りまとめた。

同報告書では、消費者保護の観点から配慮すべき事項として、ポイントプログラムでの個人情報保護に加え、消費者が正確かつ十分な理解を得られるよう、情報開示や告知を行うべきであるとした。

具体的には、ポイント交換の際には、交換の諸条件および交換レート(交換による価値の変動の有無)を明示することや、 交換ができなくなる場合など、消費者の不利益となる場合についても適切な事前開示を行うことを求めた。

また、ポイントの内容や利用条件などの重要事項を変更する際には、事前告知を行うことや、盗難、紛失、不正利用に際しては、被害の拡大防止に努めるとともに、消費者の期待が大きい場合であって届け出た消費者の本人性および蓄積ポイント数などの情報につき確認が取れた場合などは、消費者の救済を図ることなどが求められた。

ただ、こうした方策については、「各社の事業やポイント制度の内容に応じて、可能な範囲で配慮することが望ましい」と、努力義務とされている。

合わせて、ポイントの会計処理については、

「多くの企業ポイント発行企業においては、ある時点の発行残高に、想定される使用率を乗じた金額を流動負債(想定される企業ポイントの利用時期が1年以上先である場合には、固定負債)として引当てている」

として、

「今後ポイント制度を導入する企業においても、同様に会計処理が行われ、発行した企業ポイントが企業経営において適切に認識されることが重要と考えられる」

とポイント残高に応じた合理的な負債引き当てを提言している(*10)。

◆企業ポイントの法的性質と消費者保護のあり方に関する研究会による検討(2008年9月~12月)

ポイントプログラムの内容についての条件変更や、企業の倒産・合併に伴うポイントの消失などに対する、消費者からの苦情多発を背景に、同じく経済産業省において企業ポイントの法的性質と消費者保護のあり方に関する研究会(2008年9月19日~12月19日、全5回)が開催された。

同研究会も、先行の企業ポイント研究会と同様、商務流通審議官の私的研究会と位置づけられたが、消費者保護に向け、企業側ではなく、学識経験者6名と消費者代表2名の計8名を委員として構成された(オブザーバーとしてイオン、JAL、ヤフー、ヨドバシカメラの4社が参加)(*11)。

第1回研究会においては、ポイントに対する消費者側の認識と企業側の認識の双方が示されている。

消費者側の認識として示されたのは、消費者1,000名へのインターネットアンケートの結果であり、ポイントを貯めている対象としては、家電量販店(68.3%)、アマゾン、ヤフー、楽天などECサイト事業者(64.8%)、クレジットカード会社(60.0%)、携帯電話会社(59.6%)などが挙げられている。

ポイントの位置づけとしては、商品・サービスに必ず利用できる権利のあるもので、その価値は保護されるべきであるとする消費者が半数を超えている(*12)。

ただ、ポイント制度への加入時に規約・約款を読んでいない者が69.0%に達している。

また、ポイントの利用条件の変更は、ポイントの種類によっては半数を超える消費者が認めており(*13)、ポイントの性質に関わらず、70%程度の消費者は、条件によるが、変更は仕方がないと考えている一方で、有効期限の短縮やポイントの付与レート改悪に対しては半数を超える消費者が変更は許されないと考えており、消費者の抵抗は強い。  

不利益な変更が行われる場合、いつまでに通知されるべきかについては、半数の消費者が1か月以上半年未満前が望ましいと答える一方で、半年以上前が相応しいとする消費者も30%程度存在する。

ポイントについて被った被害についての自由回答(全189件)では、倒産・閉店・統合によるポイントの失効が57件、有効期限の短さ・期限通知の不備によるポイントの失効が56件、ポイント付与・利用条件の改悪22件などが示されている(*14)。

一方、企業側の認識としては、大半の企業が、ポイントの法的関係について利用者との合意があるものと考えているが、ポイントの権利性を認めている企業は限られている(特典・おまけの提供と認識する企業が多い)。

さらに、ポイントに関する契約内容の変更は、全ての企業がポイントが実際に利用される前ならば企業側の都合で可能とする一方、重大な変更についてはほとんどの事業者が事前告知を行っている。また、約款においても、ポイントの権利性を明記している事業者はなく(逆に、確定した権利ではない旨明記している事業者も一部あり)、ポイントの保護・補償に関する規定をおいているのはごく一部の事業者に限られる(*15)。

こうした消費者側の認識と事業者側の認識のギャップについては、委員から、

『ポイント付与を見せ玉に勧誘しているため、消費者は「オマケ」というより購入の前提のような意識になる。故に期待とのギャップは発生し易い』(*16)

との意見が示されており、筆者も同感である。

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(*9)「企業ポイント研究会(第4回)議事要旨」(2007年4月12日)、経済産業省ホームページ。
(*10)企業ポイント研究会「企業ポイントのさらなる発展と活用に向けて」(2007年7月2日)、国立国会図書館デジタルコレクション、国立国会図書館ホームページ。
(*11)「企業ポイントの法的性質と消費者保護のあり方に関する研究会委員名簿」『企業ポイントの法的性質と消費者保護のあり方に関する研究会(第1回)』(2008年9月19日)、経済産業省ホームページ。
(*12)航空会社のマイレージについては56.8%、家電量販店のポイントなど1ポイント1円単位で1ポイントから利用可能なものについては59.0%、クレジット会社のポイントなど、一定数以上のポイントを貯めて商品やサービスに交換するものについては57.9%(利用したことがないので分らないとした消費者を除いた数値)。
(*13)ポイントに関する考え方として、「A.ポイント発行企業は、そのポイントが確実に理由できるようにする義務を負っている」と、「B.発行企業がおかれた状況次第では、ポイントの利用条件の変更や制度そのものの廃止もやむをえない」という2つの考え方を示し、「A.のようなポイントもあれば、B.のようなポイントもある」とした者が54.5%、「すべてのポイントは、例外なくA.のようなポイントである」とした者が36.6%「すべてのポイントは、例外なくB.のようなポイントである」とした者が8.9%。
(*14)「参考資料2 ポイントに関するアンケート(分析結果)」『企業ポイントの法的性質と消費者保護のあり方に関する研究会(第1回)』(2008年9月19日)(経済産業省ホームページ)。
(*15)「参考資料3 主要事業者の現状認識(各社へのヒアリングより)」『企業ポイントの法的性質と消費者保護のあり方に関する研究会(第1回)』(2008年9月19日)、経済産業省ホームページ。
(*16)「企業ポイントの法的性質と消費者保護のあり方に関する研究会(第1回)議事要旨」(2008年9月19日)、経済産業省ホームページ。
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◆企業ポイントに関する消費者保護のあり方(ガイドライン)の策定(2009年1月)

企業ポイントの法的性質と消費者保護のあり方に関する研究会は、5回にわたる検討を経て、2009年1月、報告書を公表した。

同報告書では、ポイントのトラブルの大半は、消費者の期待と発行企業の認識とのずれによるもので、消費者が内容を正しく理解できるような対応が発行企業に望まれるとしている。

具体的には、ポイントプログラムの内容全般を記載した書面などを交付し、消費者が必要に応じて確認できるようにし、付与条件や利用条件などに関する重要事項については、加入に際してわかりやすく表示・説明することを求めている。

また、利用条件の変更や、ポイントプログラムの終了などによって、消費者の利益を損なう場合には、相当な期間を設けて事前に告知するよう提言している。

ポイントの法的性質については、ポイントプログラムは事業者と消費者との間の民法上の契約と評価されることから、ポイントの権利性や法的性質は当事者間の合意により決定されるとして、関連する諸法律等に抵触しない限り、自由に定めることが可能とする一方、合意内容の確定に当たっては、約款やポイントサービスの内容について説明した書面に記載された内容が基本的に参酌されるが、具体的な勧誘時の経緯等も考慮されるべきとしている(*17)。

この報告書での議論を踏まえ、経済産業省は、2008年12月、企業ポイントに関する消費者保護のあり方(ガイドライン)を策定した。

ガイドラインの位置づけは、表示・説明やトラブルへの積極的な対応など、ポイント発行企業による自主的な取組みを通じて、消費者保護に取り組む上で留意することが望まれる事項を整理したものとされ、企業に対する強制力はない。

ポイントプログラムについて企業側の認識と消費者の期待が異なる場合、不満が生じることから、企業は、加入に際し利用条件を消費者に分かりやすく情報提供することが望ましいとしている。

具体的には、加入時に消費者に対し、利用条件の概要や「よくある質問」等の情報を簡潔に分かりやすく記した書面を交付したり、書面を用いた説明などが考えられると指摘している。

ポイントの有効期限について、著しく短い有効期限を定めるなど、消費者が期待する合理的な保護水準と異なるルールを設定する場合は、消費者に対して、特にわかりやすい情報提供を行うことが求められるが、こうしたルールの設定自体が消費者の利益を一方的に害するものであれば、消費者契約法 10 条(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)に抵触し、無効となることもありうるとした。

さらに、「消費者が認識していない間にポイントの有効期限が経過することを回避するため、例えば、ダイレクトメールや電子メールによる消費者への定期的な連絡の中でポイント残高や有効期限を表示するなどの情報提供が行われる場合があるが、発行企業の対応コストを勘案しつつ、可能な範囲でこうした取組みが行われることが望まれる」として、企業側にポイントの保護に一定留意した取組みを要請している。

ポイントの利用条件の変更については、

『消費者がポイントプログラムに加入した後に、ポイントの利用条件を変更することは、消費者にとっては「貯めたポイントの使い勝手が悪くなったり、価値が減少する」ことにつながる可能性があるため、発行企業は、消費者のポイントプログラム加入に際し、こうした利用条件の事後的変更の可能性のある内容や、その際の告知の方法を約款や説明書面等に明記するとともに、加入後の条件変更に際しては、事前に消費者に告知を行うことが望ましい。この告知は、消費者が変更前の条件でポイントを行使することが実質的に困難でないよう、条件変更前の十分な期間をとることが望ましい。消費者に不利益となる変更の内容としては、(i)ポイント付与率の減少、(ii) 有効期限の短縮、(iii)ポイント交換レートの減少などが考えられるが、この中でも、既に貯めたポイントに影響する変更((ii)及び(iii))については、特に、消費者の利益を損なうものであり、告知を丁寧に行うことが重要である。特に、(ii)の有効期限については、プログラムの加入に際し、例えば「このポイントは永久に有効」と情報提供して勧誘した場合においては、発行企業はこの条件を変更することには慎重であるべきと考えられる』

として、消費者に対する丁寧な対応を求めている。

利用条件の変更の際の告知方法についても、

「告知のコストとのバランスを踏まえつつ、店舗でのポスター等による告知、ダイレクメールや電子メールによる告知、インターネットのウェブページでの告知などが考えられるが、その際、消費者の訪問間隔(店舗へ来店する周期、インターネットのポータルサイトにアクセスする周期)やポイント利用の頻度などを基準に、消費者が事前に条件変更を知り、貯めたポイントの利用などの対応ができるよう、相当な告知期間を設けることが望ましいと考えられる」

としている(*18)。

当ガイドラインへの企業側の対応について、経済産業省は2009年8~10月、45社の調査を行ったが、ガイドラインの認知度は87%と高く、また、ガイドラインに完全に適応している企業は56%、おおむね適応している企業は44%などと、消費者保護に向けた取組みは進んでいるものとされた(*19)。

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(*17)「企業ポイントの法的性質と消費者保護のあり方に関する研究会報告書」(2009年1月)、国立国会図書館デジタルコレクション、国立国会図書館ホームページ。
(*18)経済産業省「企業ポイントに関する消費者保護のあり方(ガイドライン)」(2008年12月)、国立国会図書館デジタルコレクション、国立国会図書館ホームページ。
(*19)「『企業ポイントに関する消費者保護のあり方(ガイドライン)』への主要事業者の対応に関する調査結果等について~企業ポイントの健全な発展に向けて~」(2009年11月24日)、経済産業省ホームページ。
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◆ポイントプログラムに関する金融審議会などでの検討(2008年5月~12月)

上述の経済産業省による検討のほか、商品券・ギフト券・プリペイドカードなど前払式支払手段に関する制度整備に向け、金融政策について議論する金融審議会金融分科会第二部会の決済に関するワーキンググループにおいて、ポイントプログラムに関する検討が行われた(2008年5月~12月)。

同部会報告書においては、ポイントについては、「財・サービスの販売金額の一定割合に応じて発行されるものや、来場や利用ごとに一定額が発行されるものなど多種多様」で、「ポイントを利用して、景品への交換、商品の割引購入、前払式支払手段や現金・預金債権の取得など、ポイントの利用によって受けられる財・サービスも多種多様」と位置づけられている。

また、ポイントに関する会計処理については、「顧客が購入した財・サービスに付随して将来的に費用が生じ得るものとして将来の使用に備えた引当金を積む処理のほか、国際会計基準では、顧客が購入した財・サービスとは別に、財・サービスの販売であるが将来に提供するものとして前受金の処理が行われることとされる」と指摘されている。

ポイントへの新たな規制導入については、「前払式手段とは異なり、消費者から対価を得ず、基本的に、景品・おまけとして無償で発行されているとともに、財・サービスの利用範囲が限定されており、法規制を設ける必要はなく、消費者保護に向けた事業者の自主的な取り組みで対応することで問題はない」との意見と、「得られるポイントを考慮して財・サービスの購入を判断していること、ポイントの発行が多額になっていること、ポイントでの支払やポイント交換の対象が拡がっていることなどから、何らかの消費者保護が必要であり、事業者の自主的な取組みでは不十分である」との意見が併記されたが、資金決済法などによる法規制は見送られた(*20)。

同部会報告書において、ポイントの発行に当たって消費者が対価を負担している場合には、前払式支払手段としての取扱いを受ける(資金決済法で、消費者への情報提供や供託金などを義務付け)とされ、この点、2016年7月、経済産業省が規制所管からの確認を経て、ポイントの発行時に消費者が対価を負担していない場合は、前払式支払手段としての取扱いを受けないとの見解を示している(*21)。

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(*20)金融審議会金融分科会第二部会「資金決済に関する法整備について~イノベーションの促進と利用者保護~」(2009年1月14日)、金融庁ホームページ。
(*21)ニュースリリース「ポイントサービスに関する資金決済法の取扱いが明確になりました~産業競争力強化法の「グレーゾーン解消制度」の活用~」(2016年7月5日)、経済産業省ホームページ。
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■ポイントプログラムの課題と対応方向

ポイントプログラムの発祥は1850年ごろの米国であり、スタンプカード方式によるものであった。
わが国では1928年に江崎グリコが引換証20枚と景品との交換を開始し、1989年にヨドバシカメラがポイントカードを発行したことにより広く普及したとされている(*22)。

最近は、銀行や保険など金融業界の一部にもポイントが導入され、さらに業態を超えた各ポイント間の互換性など、ポイントプログラムの進化が進み、企業に加え地方自治体などでも活用されるなど、社会的なインフラとして定着している。

こうしたポイントプラグラムについての課題は2点ある。

1点目は、消費者に対するよりわかりやすいポイントプログラムの開示ルールの設定である。

ポイントを企業側のサービスと捉えるか、消費者の権利と捉えるかという議論の帰着や、立法などを待たず、実態的な消費者保護を考える必要がある。

ポイントの有効期限は各社区々であり、ポイントの消滅は消費者の不利益に直結する。

現在、ポイント残高や消滅期限など、一定期間ごとに丁寧に開示している企業もあるが、開示の方法などは各社さまざまである。

ポイント付与や、その蓄積の方法など、ポイントプログラムの内容そのものは各社の創意工夫により、消費者にとってより魅力的なものとして切磋琢磨する一方、各業界で消費者保護に向けた、ポイントプログラムの消費者への開示、説明方法などのモデル化なども検討する必要があるのではないか。

また、ポイントプログラムの廃止や内容変更は、消費者の期待に沿わないケースが多々あり、事前の丁寧な説明が求められよう。

現状では、ポイントプログラムに関する規定そのものも、一般消費者に開示していないケースがあり、インターネットなどを通じた開示が望ましいのではないか。

また、ポイントプログラムの中には、ポイントが商品・サービスの購入直後に少量でも使用できるものもあるが、一定量のポイントを貯めない場合、使用できなかったり、別の商品・サービスとの交換率が低くなったりするケースもある。

ポイントプログラムの実態に応じた消費者への丁寧な説明や開示などが求められよう。

こうしたルールの設定は必ずしも法律による必要はないが、各業界のガイドラインなどとして一定のルールを設定することを検討してはどうか。

2点目は、ポイントプログラムについての企業の会計処理の明確化である。

ポイントプログラムについての会計処理は、前述のとおり、企業によって区々であり、こうした状況については、「ポイントプログラムの複雑化、多様化の速さに対して、会計上の対応が追いついていないのが実情である」(*23)と指摘されている。

消費者が商品やサービスと交換できるポイントの財源を企業会計上、担保していくためにも、引当金として積み立てている金額の開示なども含め、会計処理の明確化、透明化が急務であろう。

ポイントに対する消費者の期待に応えていくために、適正なルールに基づいたポイントプログラムのさらなる発展を願って止まない。

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(*22)小本恵照「進化するポイントカードとその将来性」『ニッセイ基礎研REPORT』、2007年2月、ニッセイ基礎研究所ホームページ。http://www.nli-research.co.jp/files/topics/36977_ext_18_0.pdf。
(*23)石井理恵子、田中弘「ポイントプログラムの会計処理」前掲。
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小林雅史(こばやし まさし)
ニッセイ基礎研究所 保険研究部 上席研究員

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