脳科学者が勧める「朝時間」の使い方

脳科学者が勧める「朝時間」の使い方
脳科学者が勧める「朝時間」の使い方(写真=The 21 online/茂木健一郎(脳科学者)) (ZUU online)

■「朝の3時間」は、最速で仕事がはかどるゴールデンタイム

出勤前に勉強をしたり、早朝出勤して仕事を片づけるという「朝型」の人が増えているという。だが、そもそも、「朝型」であることはなぜ良いと言われるのだろうか。自身も子供の頃からずっと朝型だという脳科学者の茂木健一郎氏は、脳科学的に見ても、「朝」はゴールデンタイムだと話す。朝時間と脳の関係性についてうかがった。

■なぜ、朝は「脳のゴールデンタイム」なのか

朝目覚めてからの約3時間は、脳が最も効率よく働く「ゴールデンタイム」だと茂木健一郎氏は語る。自身の朝の時間の使い方を振り返っても、小学生のときは朝から蝶を捕まえたり、ジョギングをして過ごし、高校生になると英語の原書に挑戦するなど「朝がつらい」と感じた時期はないという。脳科学的に見ても、朝の脳の状態は1日のうちで一番冴えているのだとか。

「私たちは日中の活動を通して、目や耳からさまざまな情報を得ています。その情報は大脳辺縁系の一部である海馬に集められ、短期記憶として一時的に保管されます。その後に、大脳皮質の側頭連合野に運ばれますが、この段階では記憶は蓄積されているだけです。

それが睡眠をとることで、記憶が整理され長期記憶へと変わります。すると朝の脳は前日の記憶がリセットされるため、新しい記憶を収納したり、創造性を発揮することに適した状態になります。この脳の仕組みが、朝の時間がゴールデンタイムだと言われる理由です」
そのため、朝はトップスピードで駆け抜け、夕方以降はリラックスタイムとして割り切ったほうがいいと話す。

「1日のワークスケジュールは、ハンググライダーをイメージしてもらえばいいと思います。朝起きた瞬間が飛び立ったときで、そのときが一番高いところを飛んでいます。つまり朝はトップスピードで仕事をこなしていくわけです。そして時間の経過とともに降下していくグライダーは、夕方に向かうにつれて仕事の効率が落ちていくのと同じ。このようなイメージでスケジュールをこなすのが脳科学的にも理にかなっています。

時間帯によって、それぞれに向いている行動を具体的にお教えしますと、まず出社する前の朝のゴールデンタイムは、誰にも邪魔されない時間と捉えてください。この時間は、ひとりでできる活動に向いています。

出社してからは、午後に向かうにつれて人と協力してやっている仕事にシフトさせていければ理想的です。夜は会食や異業種交流会など人との交流に時間を当てたらよいと思います」

■起きた瞬間まずチェックするものとは?

茂木氏はベッドサイドテーブルに、iPhoneとマックブックを置いている。起きたらすぐに活動を開始するためだ。具体的には、どのように過ごしているのだろうか。

「朝起きると、まず一番にやるのはツイッターのトレンドワードをチェックすること。ツイッター上で今、話題になっているニュースがすぐにわかるからです。トレンドを確認するのは、一般のニュースでは出てこない若い世代の情報を効率よく収集するためですね。これは1分くらいで終わります。

その後、近くのコンビニまで歩いて行って目を覚まします。往復で10分程度でしょうか。帰ってきて取りかかるのが、連続ツイートの執筆です。自分のツイッター上に、今気になっていることを連続でツイートしてあげていくというもの。10分から15分かけて書きます。

それが終わると、メールチェックに十分かけます。次に朝食を食べながら、新聞を読むのに20分。そしてジョギングをした後にシャワーを浴びる。これにかかる時間が20分から30分です」

ジョギングが終わると、いよいよ本格的な仕事に入っていく。

「日によってやることが違いますが、今日ですと学会が近いのでデータ解析。それからタクシーで仕事先に向かう間の30分間で雑誌の原稿を書きました。ここまでで朝、ひとりでできる仕事は完了します」

■毎日、朝イチでコンビニに行く理由とは?

このように朝からトップスピードの茂木氏。真似したいと思う人は多いかもしれないが、それにはまず、まず早起きをしなければならない。早起きのコツを尋ねたところ、「朝、すっきり目覚めるためには、外光を浴びることが重要」だという。

「なぜ私が起きたらすぐにコンビニまで行くのかいうと、戸外の太陽の光を浴びるためです。これには科学的根拠があります。

朝、太陽の光を浴びると網膜から光が入り視神経が刺激を受ける。その刺激が脳内の視床下部の視交叉上核に伝わります。それによって、脳の覚醒を促すホルモンであるセロトニンが放出され、朝になると目が覚めて、夜になると眠くなるといった生体リズムが整えられていきます。

こうした周期的に繰り返される生体リズムをサーカディアン・リズムと呼びます。この生体リズムの基本となる体内時計が視床下部の視交叉上核にあります。そのため、この部分が朝目覚めて夜眠るといった覚醒や睡眠のリズムをつくっているというわけです。

『朝起きられない』という人は、話を聞いてみるとほとんどの人が部屋を暗くしたまま起きている。これは良くないですね。まずは朝起きたら、部屋の明かりをつけるか外光を浴びる。できれば太陽の光がいいです。理由は太陽光の波長が脳の覚醒スイッチを入れるのに効果があるからです。

脳は環境の変化に非常に敏感。朝、目を覚ましても部屋の中にいると、『これはまだ休んでいてもいいのかな』という判断をしてしまいます。反対に、外に出ると『もう朝だ。目を覚まさなきゃ』と脳が判断するので自然に目覚められるのです」

■睡眠サイクルを利用すれば目覚まし時計は不要!

茂木氏は朝目覚めるとき、目覚まし時計が鳴る前に起きることができるという。
「毎朝、目覚ましが鳴る前に自然に起きる習慣が身についていますから、目覚まし時計は保険のためにセットするだけです。

それから、朝起きる時間をとくには決めていません。なぜかというと、1.5時間ごとにノンレム睡眠からレム睡眠に切り替わる睡眠サイクルを利用して起きているからです。1.5時間×4だと六時間。それくらいを目安にして、眠りが浅いレム睡眠のときに目が覚めるように調整して寝ています」

朝、すっきり目覚めるためには朝だけでなく、前の晩の過ごし方が大事になってくる。

「夜は朝ほど真剣に計画を立てない方がいいですね。できれば、あまり予定を入れずリラックスして過ごし、ベッドに入ってからはあっさり寝てしまうことをお勧めします。

私の場合はリラックスするために、お気に入りのアメリカやイギリスのコメディ番組を見ています。脳は新しいことをやろうとすると、目が冴えてしまうので、以前に観たことのある番組にしているのです。すると五分くらいで眠くなるので、眠くなったなと思ったら電源を切って眠りにつきます」

■「午後にやる気が出る」は思い込みに過ぎない!

朝型生活をしたいが、どうしても朝が苦手……という人は多い。しかし、「よく『午後2時くらいからやっと調子が出てくる』という人がいますが、それは思い込みに過ぎない」と茂木氏は指摘する。

「もともと生物は、夜型にはできていません。文明以前はみんな朝起きて夜寝ていたのですから当然でしょう。朝型が苦手だという人は今の生活を変えたくないのではないでしょうか。『自分のスタイルは夜型なんだ』と勝手に決めつけいるというか。

そういう人は、他のことも変えられない、変化を拒む傾向にあるのだと思います。そこのところは、自己点検したほうがいい。

朝型を習慣化するには、やる気が必要なのだと思っているかもしれませんが、習慣にやる気って必要ないんですよ。私は何十年も朝型を続けていますが、朝からやる気まんまんのときなんてほとんどありません。やる気がなくても、習慣になっているからできているだけです。

そもそも、『やる気』って贅沢品なんです。『やる気がわいてきたから、一気に仕事が片づく』なんて、人生の中でそう起こることではないですから。逆に言うと、いつもやる気がある状態だと疲れてしまいます。そうではなく、やる気がなくてもやれるように習慣化することが大事なのです。だから『やる気がでない、調子が乗らない』ということを早起きができない言い訳に使ってほしくないと思います」

■朝の習慣化のスタートは「たった1分」でOK!

朝型を習慣化させて新しいことを始めたいという人は、まずハードルを下げることから始めるべきだと茂木氏は語る。

「習慣化させるということを難しく考えすぎなのです。たとえば何か勉強するにしても、最低でも30分はやらなければと考える人は多い。でも、5分でも1分でもいいんです。

30分や1時間の単位でものを考えるというのは、学校の授業やビジネスの習慣の中で根づいた考えだと思います。実際には5分で済んでしまうような内容のミーティングに30分間もの時間をとってしまうのは、よくあることです。

その習慣が一人で使える時間のときもくせとして残ってしまっているから『朝の英語は30分はしなきゃ』と、なってしまう。でも英単語を一つ覚えるなら1分でできますよね。1分やれば脳の活動としては十分。1分単位でものを考えると、ハードルが下がりやれることがたくさんあることに気づくでしょう」

茂木健一郎(もぎけんいちろう)脳科学者
脳科学者。ソニーコンピューターサイエンス研究所シニアリサーチャー、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科特別研究教授。1962年、東京生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻博士課程修了。理学博士。理化学研究所、ケンブリッジ大学を経て現職。主な著者に『脳とクオリア』(日経サイエンス社)、『脳内現象』(NHKブックス)、『脳と仮想』(新潮社)、『「脳」整理法』(ちくま新書)、『脳を活かす勉強法』(PHP研究所)、『脳と創造性』『脳が変わる生き方』(以上、PHPエディターズ・グループ)などがある。(取材・構成:石井綾子 写真撮影:長谷川博一)(『The 21 online』2016年12月号より)

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