【韓国4-6月期GDP】MERS感染拡大で前期比+0.3%と鈍化

【韓国4-6月期GDP】MERS感染拡大で前期比+0.3%と鈍化
【韓国4-6月期GDP】MERS感染拡大で前期比+0.3%と鈍化(写真=PIXTA) (ZUU online)

■4-6月期は前期比+0.3%

 2015年4-6月期の実質GDP成長率(1)は前期比(季節調整済)+0.3%と、前期の同+0.8%から低下し、Bloomberg調査の市場予想(同+0.4%)を僅かに下回った。また前年同期比では+2.2%と前期の同+2.5%を下回った(2)。需要項目別に見ると、民間消費の減少と投資の伸び悩みが成長率の低下に繋がったことが分かる。

 消費については、民間消費が前期比▲0.3%(前期:同+0.6%)と半耐久財やサービス消費を中心にマイナスに転じ、政府支出は前期比+0.7%(前期:同+0.2%)と上昇した。投資は前期比+1.0%(前期:同▲4.0%)と建設投資の伸び悩みと設備投資の低迷を受けて鈍化した。

 純輸出については、輸出が前期比+0.1%(前期:同+0.1%)とサービス輸出の悪化によって停滞し、輸入が前期比+0.5%(前期:同+0.6%)と拡大傾向が続いた。結果として、純輸出の成長率への寄与度は▲0.2%(前期:同▲0.2%)と4期連続のマイナスとなった。

 供給項目別では、全体の約6割を占めるサービス業が前期比+0.1%(前期:同+0.9%)と中東呼吸器症候群(MERS:MiddleEastRespiratorySyndrome)感染拡大の影響で卸小売・宿泊飲食業、運輸業、健康・社会福祉、娯楽・その他サービス業を中心に鈍化した。

 また農林水産業は前期比▲11.1%(前期:同+3.4%)と干ばつ被害を受けて大きく悪化し、建設業は前期比+0.4%(前期:同+2.0%)と伸び悩んだ。一方、製造業は前期比+0.8%(前期:同+0.4%)と携帯電話や自動車を中心に改善し、電気・ガス・水道業は前期比+0.0%(前期:同▲3.5%)と回復した。

■輸出不振にMERSが追い打ちとなり減速

 4-6月期は輸出の停滞が続くなか、5-6月のMERSの感染拡大(3)が景気減速の主因となった。先行きはMERS終息による反動や拡張的な財政・金融政策によって7-9月期の成長率は上振れるだろうが、中国向けを中心に輸出の停滞が続くことで景気の回復感が乏しい状況が続きそうだ。

 MERSの感染拡大による経済への影響としては、まず外出を自粛する動きの広がりや消費者マインドの悪化によってデパート・大型スーパーなどの小売店、映画館・遊園地などのレジャー施設、飲食店の売上が悪化したことが挙げられる。

 4-6月期の民間消費は昨年の船舶事故以来の前期比マイナスに陥り、原油安や財政・金融政策を追い風とする緩やかな回復基調は失われた。また外国人観光客の訪韓キャンセルが急増し、サービス輸出が悪化したことも景気の下振れに繋がった。

 航空会社は運休を拡大したほか、中国人観光客のブランド品や日用品の「爆買い」も小規模となり、観光関連産業は打撃を受けた。MERSによる景気の下振れは一時的なものとなりそうだ。MERSの新規感染者は7月4日以降出ておらず、政府は近いうちに終息宣言すると見られる。

 外国人観光客が例年と同水準まで回復するには今暫く時間を要するだろうが、個人消費は消費者マインドの改善を通じて回復し、7-9月期のGDPは前期比で見ればMERSによる景気減速の反動で成長率は上振れる可能性がある。

 また景気下振れを懸念して政府と中央銀行が早期に対策を打ち出したことも先行きの景気の押上げ要因となる。中央銀行は6月11日の会合で政策金利を0.25%引き下げ、過去最低の1.50%とした。また政府は7月3日に11.8兆ウォンの補正予算(4)を含む総額21.7兆ウォンの景気刺激策を閣議決定しており、早ければ8月にも執行が始まる予定である。

 しかし、輸出の停滞が続くなかでは本格的な景気回復には至らない。最大の輸出先である中国の景気減速やウォン高(実質実効為替レート)による価格競争力の低下を受けて、輸出が伸び悩む状況は続くだろう。

 また政府は内需主導型経済への転換を目指すが、昨年は船舶事故対応の失敗、今年は大統領側近の不正資金疑惑とMERS初期対応の失敗などがあり、政権支持率は足元で34.6%(5)まで低下している。

 また与党内では来春の総選挙を前に政権批判が始まるなど政府の政策実行力は弱まっており、国内の構造改革が進まず、景気の停滞が中期的に続く可能性が高まっている。

(1)韓国銀行(中央銀行)は7月23日、2015年4-6月期の実質国内総生産(GDP)の速報値を公表した。
(2)韓国銀行は7月9日に成長率見通しを公表した。成長率見通しは2015年を前年比+2.8%、2016年を同+3.3%とし、今年4月時点(2015年が前年比+3.1%、2016年が同+3.4%)から下方修正した。また今年前半は前年比+2.4%、後半は同+3.1%と予想しており、今回発表された実績は年前半の成長率予想を下回った。
(3)今年5月20日に中東から帰国した韓国人男性のMERS感染を発覚し、その後は感染が拡大して警戒感が高まった。政府は7月22日時点で感染者は186名、死亡者は36名、治療中の患者は13名、隔離対象者は計16,693人(現在隔離中は3名)と公表している。
(4)補正予算11.8兆ウォンのうち税収下振れによる歳入不足の補填が5.6兆ウォン、歳出はMERS被害産業や地域経済活性化策などに6.2兆ウォンとした。財源を確保するため9.6兆ウォンの国債を発行する。
(5)REALMETER社調べ(7月13日発表)

斉藤誠
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 研究員

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2015年7月23日の経済記事

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