不動産業界での「囲い込み」の違法性を問う(2) 担当者も免責にはならないー三平聡史弁護士に聞く

 前回のstorieの特集で『不動産業界での「囲い込み」の違法性と経営責任を問う』というテーマで星野宏明弁護士から回答をいただいた。今回、同様に「囲い込み」の違法性と経営責任について、不動産を得意分野とし、幅広い案件を扱っているみずほ中央法律事務所の三平代表弁護士に回答をいただいた。(提供:storie 2015年9月4日掲載)

Q1.不動産仲介での不動産会社による物件の「囲い込み」の違法性について、教えてください。

三平弁護士:不動産仲介の『囲い込み』は依頼者である売主・貸主(オーナー)を裏切る行為です。自らの利益確保のために依頼者に損害を与える卑劣・非道な行為です。当然、法律上も違法性が高く、各種法的ペナルティの対象となります。代表的な法的措置は監督機関である国交省の監督です。

<国土交通省の監督|具体的内容と対象行為|抜粋>

 あ 行政指導
   強制的な効果がない改善の要請
 い 行政処分
  ア 指示処分
  イ 業務停止処分

※宅建業法65条1項、2項

 通常、取られる措置は、段階的にステップアップされます。逆に言えば『そう簡単に業務停止は食らわない』と高をくくる悪徳業者もあるようです。この点、国交省としては最近『囲い込み』の横行を問題視する態度を強くしています。業務停止の実例が出ることも十分にあり得るでしょう。

Q2.上場している不動産会社を含めて行った覆面調査で「囲い込み」の事実を明らかにした報道がありましたが、どのような違反・違法に該当するでしょうか? (参考:ダイヤモンド編集部  2015年4月13日 「大手不動産が不正行為か 流出する“爆弾データ”の衝撃」)

三平弁護士:『囲い込み』は違法性が高い不当な行為です。前述の宅建業法違反(行政指導・行政処分)以外にも法的ペナルティの対象となります。そして、コンプライアンス違反にもなります。コンプライアンス違反については、さらに一定の責任者個人の責任も生じます。まずは基本的な法的ペナルティ・違法となる事項について説明します。代表的なものは刑事責任と民事責任です。

<不動産仲介業者の不正×刑事責任>

  ア 詐欺罪
  イ 横領罪
  ウ 背任罪

 依頼者に対する関係で、このような犯罪が成立する可能性があります。

<不動産仲介業者の不正×民事責任>

 あ 損害を被る者
   仲介業務の依頼者 = 売主・貸主
 い 法的責任
   不法行為or債務不履行or不当利得返還請求権
   →損害賠償責任
 う 損害・不当利得の内容
  ア 受領済の費用
  イ 逸失利益

機会損失=売却機会のロス・時間的なロス

※民法415条、709条

 当然ですが、依頼者は経済的なダメージ=『損害』を受けます。既に支払った金額以外にも『機会損失』も法的な意味で『損害』と言えます。法律的な理論にはバリエーションがあります。いずれにしても不正を行った仲介業者が賠償責任(返還義務)を負います。

 次にコンプライアンス違反に関する責任について説明します。会社では構造的に従業員による不正行為が生じるリスクがあります。そこで組織として・構造的に『不正行為を抑制するシステムの構築』が必要です。会社法上『コンプライアンス体制構築・運用』として義務付けられています。取締役会がコンプライアンス体制構築の権限と責任を持っています。

 『囲い込み』などの違法行為が生じた場合は『コンプライアンス体制構築義務』違反と言えます。そこで取締役会の構成員である取締役個人が賠償責任を負うことになります。この『賠償責任』の内容は『会社に対して、会社が受けた損害を賠償する』というものです。『会社が受けた損害』とは『会社が依頼者に支払う賠償金』や『信用失墜による営業損失』などです。

Q3.「囲い込み」の実態を見過ごしていた上場企業の経営者は、どのような責任に問われることになりますか。

三平弁護士:囲い込みが世間に知れると会社は大きなダメージを受けます。依頼者への賠償責任は当然として、評判・信用が大きく落ちます。

そうすると、実質的な会社の所有者である株主にもダメージが生じます。要するに『株価下落』のことです。業務の責任者である取締役にこの損失を賠償してもらいたいという気持ちが生じます。この部分の法解釈はちょっと複雑です。判例の理論をまとめます。

<コンプライアンス違反・株価下落×株主の救済>

 あ 囲い込みの賠償責任|基本
   コンプライアンス体制構築義務違反の責任
   『取締役個人』が『会社に対して』賠償する
 い 具体的手続
   任意に取締役が会社への賠償を行わない
   +会社が取締役への賠償請求訴訟を提起しない
   →株主が『株主代表訴訟』を提起できる
 う 株主から取締役個人への直接

  原則的に認められていない

 取締役が責任を負うのは原則的に『会社に対して』です。株主代表訴訟は文字どおり、株主が『会社を代表して』提訴するものです。代表訴訟とは別に取締役個人への請求を認めると『責任が重複(倍増)』してしまうのです。そこで『直接の請求』は認められていないのです。

Q4.金融庁によるコーポレートガバナンス・コード原案で、上場企業はガバナンスの強化で独立社外取締役を2 名以上、選任することが求められています。そうした社外の取締役が「囲い込み」の実態を見過ごしていた場合、どうなるのでしょうか。

三平弁護士:会社法の改正により一定規模の会社には『社外取締役』が義務付けられています。慣れ合い・しがらみのない取締役による実効的・有効な監督が期待されています。敢えて外部からの『効果的な監督』が使命です。『外部だから不正行為に気付かなかった』という理由で責任を逃れることはできません。これについて、一定の例外もあります。株主総会の決議により社外取締役の責任を軽減することができます。

 また、就任時から『責任限定契約』を結ぶこともできます。責任の制限は『優秀な経営の監督者の確保』が趣旨です。なお、実態として官僚・公務員OBの天下り先=官製マーケットという状況も生じているようです。上場企業の場合、コンプライアンスはコーポレートガバナンス・コードに含まれています。コンプライアンス違反については上場廃止の要因となることがあります。またこれから上場する場面では上場審査基準に抵触することになります。

Q5.上場をしている不動産会社が「囲い込み」をしている実態が、内部告発によって明らかになった場合、その会社はどのような対応を迫られるのでしょうか。

三平弁護士:囲い込みの実態が明らかになった場合は、そのままでは以上のような法的責任・上場廃止につながることになります。そこで原因を解明して、再発防止の措置を徹底することが必要となります。なお『内部通報で発覚した』ということも改善の対象となります。もちろん『違法行為の通報を止める』という意味ではありません。『内部の者が運営責任者に伝える→業務を改善・不正を抑止する』というフローの確立が重要です。

 そもそも、この適正なフローが確立・稼働していなかったから、外部への通報がなされたのです。この点、公益通報者保護法でも『通報窓口』がある場合は、こちらが優先となっています。つまり通報窓口をスキップして外部へ通報することは違法となるのです。組織としてコンプライアンスが維持される構造を構築・維持することは非常に重要です。

Q6.囲い込みをしていた不動産会社の経営陣が、社員に囲い込み禁止の指示したとしても、囲い込みと両手取引をしないと達成できないような売上目標が課せられた場合、囲い込みが黙認されて続く可能性があると思います。その場合、経営陣と現場の社員の責任はどうなるのでしょうか?

三平弁護士:当然ですが取締役(会)の責任は『形式的な体制・システムを構築すること』に限定されません。適正に運用する=稼働させること、まで含まれます。結果的に不正が防げなかったら『運用に不備があった』となります。一般的な『故意は防げない』という言い訳は通じません。もちろん、具体的な事情のもとでは『どの役員の責任が重いか』という部分で個別的事情で大きく変わります。

 役員以外の一般の従業員の責任、については直接第三者(被害者)に対して責任を負うこともあり得ます。一般的に民間企業の従業員は『ミスがあったら顧客・ユーザーへの責任を負う』状態にあるのです。会社も責任を負いますが、個人の免責、というルールはないのです。この点は誤解している人が多いので、注意が必要でしょう。

三平聡史氏 弁護士法人みずほ中央法律事務所 代表
2007年弁護士法人みずほ中央法律事務所・司法書士法人みずほ中央事務所開設、現在は同事務所代表弁護士。主な著書に『Q&A 事業承継に成功する法務と税務46の知識』『会社法対応 株主代表訴訟の実務相談』などがある。

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