CPIがマイナスに、アベノミクスの二つの矢が再稼動か—SG証券チーフエコノミスト・会田氏

CPIがマイナスに、アベノミクスの二つの矢が再稼動か—SG証券チーフエコノミスト・会田氏
CPIがマイナスに、アベノミクスの二つの矢が再稼動か—SG証券チーフエコノミスト・会田氏(写真=Thinkstock/Getty Images) (ZUU online 編集部)

 8月の消費者物価指数(除く生鮮食品)は前年同月比-0.1%(コンセンサス-0.1%程度)と、7月の同0.0%から下落に転じた。これまでの円安によるコストプッシュの価格転嫁の進展、そして内需が回復基調にあることが、物価の押し上げに働いている。しかし、昨年後半から年初までの原油価格の急落の影響が前年同月比で強く残っており、2%の物価上昇の日銀のコミットメントに反し、コアCPI前年同月比はとうとう2013年4月以来のマイナスに転じてしまった。7月以降、原油価格は再び下落してしまい、その後のリバウンドも弱い。
 
■物価上昇の加速はしばらく感じられない

 4-6月期の実質GDPのマイナス成長の大きな原因となったのが消費の弱さであった。昨年4月の消費税率引き上げによる消費者心理の萎縮がまだ残ってい中で、食料品を中心とした値上げが続き、消費者が防衛的になってしまっているようだ。2017年4月に再度の消費税率の引き上げがあることも、消費者心理を抑制している可能性もある。

 今後の更なる値上げが需要を大きく減少させるリスクを企業は感じ始め、値上げに慎重になっていくだろう。そして、新興国経済の弱さや人民元切り下げなどにより、被服と食料を中心とした値上げが鈍くなる可能性もある。

 9月の東京都区部消費者物価指数(除く生鮮食品)は-0.2%(コンセンサス-0.1%程度)と、8月の-0.1%から下落幅が拡大した。前年同月比はゼロ%近辺での推移からしばらくは脱することができず、物価上昇の加速はしばらく感じられないだろう。

 労働需給逼迫による賃金上昇の影響が強くなり、原油価格の下落の影響が剥落していく10-12月期以降は、前年同月比は持ち直すとみられる。しかし、2015年度末までに+1%弱まで戻るのが精一杯であり、物価上昇のモメンタムは「2016年度前半頃」までの2%到達という日銀の想定よりかなり弱いとみられる。賃金上昇による内需の拡大、そして更なる円安が、2016年度末までに物価上昇率を+1.5%程度まで加速させると考えるが、それでも日銀の目標である安定的な2%の到達は困難であると考える。

■デフレ完全脱却への原動力が失われてしまうリスク

 日銀は、円安や内需回復の影響が強い食料品の値上げの動きを強調して、物価上昇率が高まってきていると判断している。下落しているエネルギーを含むコアや、食料品が入らないコアコアだけでは物価の基調がとらえられないという見方だろう。

 しかし、そのような判断が日銀の2%の物価上昇のコミットメントを揺るがすことにならないのは、2%の物価目標は政府・日銀の共同で設定されたものであり、昨年12月の衆議院選挙で自民党が政権公約として2%という具体的な数字を国民に示しているからだ。

 安倍首相は、自民党総裁再選の正式決定の記者会見で、現在500兆円程度である名目GDPを600兆円に増やす目標を設定した。アベノミクスの政策は、期待に働きかけて、企業活動を押し上げ、その力を使ってデフレ完全脱却に向かう枠組みである。景気の気(センチメント)の部分が、政策などに支えれて堅調なことが、デフレ完全脱却への動きの原動力となっている。

 堅調な景気の気の部分に対して輸出・生産・消費などの実体経済や物価の動きが弱いにもかかわらず、政府が補正予算による景気対策、日銀が追加金融緩和に動かず、2%の物価目標達成までの果断な政策コミットメントが疑われてしまうと、マーケットと企業の失望などにより期待が悪化し、デフレ完全脱却への原動力が失われてしまうリスクとなろう。

■追加金融緩和は10月に実施か

 9月の政府月例経済報告の基調判断は、「景気は、このところ改善テンポにばらつきもみられるが、緩やかな回復基調が続いている」から「景気は、このところ一部に鈍い動きもみられるが、緩やかな回復基調が続いている」へ、2ヶ月連続で下方修正され、景気回復の鈍さが認識された。これから発表になる9月の生産と消費が弱ければ、政府は10月にも更に下方修正する可能性がある。

 下方修正が一テンポ遅れている日銀の景況判断(輸出・生産面に新興国経済の減速の影響がみられるものの、緩やかな回復を続けている)は10月に更に下方修正され、昨年10月の追加金融緩和時と同じ「基調的には緩やかな回復を続けている」という表現になる可能性もある。600兆円の名目GDP達成時期は東京オリンピックが開かれる2020年度までが政府の念頭にあるとみられ、それまで一貫して増加する必要があり、停滞している時間的な猶予はない。安倍首相は、2017年4月の消費税率引き上げまでに日本経済を確実にリフレイトするという決意を表明しているため、更に時間的な猶予はない。

 アベノミクスの第一の矢(金融政策)と第二の矢(財政政策)が再稼動すると考える。秋の臨時国会では、デフレ完全脱却への動きを促進する景気対策が実施され、経済政策へのコミットメントを国民に示し、不安感を払拭するだろう。10月には、「2%の物価安定の目標」を「2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現する」には景気回復と物価上昇のペースが弱すぎることを確認し、物価上昇の停滞が期待インフレ率を押し下げるリスクにも配慮し、追加金融緩和が実施されると考える。
 
会田卓司(あいだ・たくじ)
ソシエテジェネラル証券 東京支店 調査部 チーフエコノミスト

あわせて読みたい

ZUU Onlineの記事をもっと見る

トピックス

今日の主要ニュース 国内の主要ニュース 海外の主要ニュース 芸能の主要ニュース スポーツの主要ニュース トレンドの主要ニュース おもしろの主要ニュース コラムの主要ニュース 特集・インタビューの主要ニュース

「アベノミクス + GDP」のおすすめ記事

「アベノミクス + GDP」のおすすめ記事をもっと見る

「アベノミクス + 雇用」のおすすめ記事

「アベノミクス + 雇用」のおすすめ記事をもっと見る

「アベノミクス + 賃金」のおすすめ記事

「アベノミクス + 賃金」のおすすめ記事をもっと見る

経済ニュースアクセスランキング

経済ランキングをもっと見る

コメントランキング

コメントランキングをもっと見る
2015年9月25日の経済記事

キーワード一覧

  1. アベノミクス GDP
  2. アベノミクス 消費税
  3. アベノミクス 賃金

このカテゴリーについて

経済、株式、仕事、自動車、金融、消費などビジネスでも役に立つ最新経済情報をお届け中。

通知(Web Push)について

Web Pushは、エキサイトニュースを開いていない状態でも、事件事故などの速報ニュースや読まれている芸能トピックなど、関心の高い話題をお届けする機能です。 登録方法や通知を解除する方法はこちら。